『1兆ドルコーチ』に見るパワフルなビジネス・コーチングの神髄とは?
2020.09.20
コンサルティング
一つ前のブログで、ほのめかしていました『1兆ドルコーチ』のまとめがようやくできましたので、お約束どおり、ご紹介したいと思います。かなりボリュームがありますので、何回かにわけて掲載したいと思います。
まず、この本についての私の印象を記しておきましょう。
要約のコメント
本書は、シリコンバレー伝説のコーチ、ビル・キャンベルの言行録・事績である。それはコーチのありようであるし、その内容を通じたリーダーのあるべき姿でもある。
その考えはフットボールの名選手・コーチその後のすぐれたマネジャーの経験から育まれ、
・ 組織と業績は人がすべてであること
・ マネジメントの重要性
・ 敬意と人をたいせつに扱うことがベースであること
・ 傾聴と洞察
・ 透明性の高いコミュニケーション
・ 質の高い意思決定
・ あれこれ指図せず自ら決定をさせる
・ メンバーへの期待、全面的信頼と関係構築
・ それゆえできる率直なフィードバック
・ 優先課題へ集中取組み、厳しい局面で前に進むこと
・ 努力不足へのきびしい追及
・ チームを優先させチームづくりに常に心を砕くこと
・ コミュニティと人のために時間と取ること
などを骨子としている。
とまあ、こんな感じです。
さて、今回は、この本から得られる2つの価値のうちの1つ目、コーチとしてのあり方について、お話ししたいと思います。
それは、わたしにとってもメジャーな関心事だからです。でも、マネジメントにとってコーチングの要素は不可欠の中心的なものですから、これはリーダー・マネジャーにとっても自分の課題だと言えます。
コーチのあり方とクライアントの選び方
□ コーチングを受け入れられる「コーチャブル」な人だけをコーチングする
コーチャブルな資質とは、正直さ、謙虚さ、あきらめず努力をいとわない姿勢、つねに学ぼうとする意欲である。赤裸々に自分の弱さをさらけだす必要があるからである。うそつきは嫌わなければならない、彼らは他人にだけでなく、自分にも不正直だからである
□ コーチを受ける人に自己認識を促し、見えていない欠点に気づかせるのが、コーチの仕事である
□ いつでもじっくりと耳を傾け(内職しない、ほかのことを考えない)、誠実に徹し、偉大なことをなし遂げられると信じ、誠意を尽くす
□ プロのコーチングでは、コーチのところまで足を運ぶ。それがふさわしい場所だからである
□ コーチが話し合うべきテーマを5つ作り、クライアントも5つ作り、それをホワイトボードで共有する
□ まずムダ(ではない)話を10分程度してから、仕事の進み具合に移る
□ 今向き合っている相手に細心の注意を払うことが大切である。そうしてから、初めて本題に入る
□ 自由回答式リスニング=アクティブ・リスニング
・ もっと耳を傾ければ誰もがいまよりずっと賢くなれる(ジョン・ウッデン)
・ 相手が言いそうなことを先回りして考えたりせずに、とにかく耳を傾ける
・ 山のような質問を伴った、ソクラテス式の対話をする
・ 発見や洞察を促すような質問をしょっちゅうする人は、最高の聞き手だと思われる
・ 人はアドバイスを求めるとき、じつはただ認めてほしいと思っているだけのことが多い
□ いつも100%正直で、率直であること。言うことと本当のことの間に隔たりはなく、つねに一致している。相手の尊厳を守り、誠意を大切にしながらも、パフォーマンスに対する厳しい評価を与えることはできる。率直さ+思いやりの方程式に効果がある
□ コーチは瞬間を捉えてコーチする。率直なフィードバックのカギは、待たないことである。さらに批判的なフィードバックは、人目のないところで与えることに気を配る。ネガティブなフィードバックを与えるとき、攻撃的で容赦がない(これはビル・キャンベルの人柄だからできることだろうか)
□ 相手と正面から向き合い、もっとできるだろうと挑む
□ 「ごまかすな。聞かれたことに答えられなくても、適当にはぐらかすな。わからないと言うんだ!」
□ 耳を傾け、正直なフィードバックを与え、相手にも率直であることを求める手法を「関係の透明性」といい、「偽りのないリーダーシップ」の柱をなす
□ つねに励まし続けること、力を与える人でいることが、有効なコーチングのもっとも重要な側面の一つである(勇気の伝道師)
※ コーチに最も求められる特質は、聞く力、理解する力、励まし、である
□ (ビル・キャンベル)はチームやメンバーをほめ、ハグし、肩を叩いて自信を持たせ、安心させた。だからどんなに厳しい質問をされても、コーチが自分たちの側に立ち、自分たちの成長と成功を願っているからこそ叱咤するのだと、わかっている
□ 教える相手に高い基準を課す。「君たちは偉大な存在になれる、自分で思っているよりはるかに偉大になれる」
□ ありのままの自分をさらけだし、全人格をかけて仕事をするとき、もっともよい仕事ができる
□ チーム・コーチングでは、チームのなかの緊張を見つける、あるいは政治的になっていることを見つけ、対処を迫る
□ すぐれたコーチは選手をどうやってよくするかを、夜も眠らずに考える。コーチというものは、絵に的確に筆を入れようとする画家に似ている。コーチが描くのは人間関係である。
・ 何に取り組んでいるのか?
・ うまくいっているのか?
・ 何か力になれることはあるか?
□ 対面での面談か、それが無理な場合には電話にこだわる
□ メールは簡潔、明快で、思いやりに満ちていること。また今起こっていること、やるべきことだけを書く
ビル・キャンベルのコーチングのエッセンス
「信頼を築くことから始め、時間をかけてますます深めていく。コーチする相手を選び抜き、コーチングを受け入れる姿勢のある、謙虚で向上心旺盛な、生涯を通じて学びつづける意欲のある人だけをコーチする。そして、相手の話に一心に耳を傾ける。たいていの場合、何をすべきかは指図せず、物語を語って聞かせ、そこから自分で結論を引き出させる。完璧に率直になり、相手にも同じことを求める。相手にとてつもない信頼を寄せ、高い目標を設け、勇気の伝道師になる―。」
わたしのような素人に毛のはえたようなコーチもどきには、頭をハンマーでかち割られたような衝撃がはしる内容である。しかし、少しでもマネをして依頼者の期待にお応えしたいと感じています。
さて、この本のマネジメントについての側面は、次回以降ご紹介していきたいと思います。ご期待ください。
本の内容は、次のページからご覧ください(上から9冊目です)。
https://www.management-facilitation.com/book/page:2
会計事務所と経営コンサルティングの融合
御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所
小笠原 でした。