御堂筋税理士法人創業者ブログ

 皆さん、こんにちは。9月に入りましてもまだ不安定で残暑が続いております。くれぐれもお身体ご自愛ください。さて、小生が帝国データバンクの会報誌に連載しておりますドラッカーの考え方の記事の第8回分をお届けいたします。実際の連載はすでに14回にわたっております。最新版をお読みになられたい方はそちらをご覧ください。

要約

1 イノベーションとは顧客のニーズによる新たな価値創造であるが、一方企業の全部門にわたるものである
2 イノベーションの目のつけどころは7つあり、トップをはじめ全員が外に出て情報収集することがだいじである
3 イノベーションの推進法はドラッカーにならい、経営計画に織り込み、イノベーション委員会で毎月推進していく

プロローグ

「企業の目的は顧客の創造である。したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。他のものはすべてコストである。」
 これは前回も挙げたドラッカーの『マネジメント』の中の有名な一節です。前回マーケティングの話をしましたので、今回はイノベーションの話をしたいと思います。

1.イノベーションとは何か

 皆さん日常生活で、どんどん新しい便利なものが登場しそれを使っているのではないでしょうか。その中で古いものは新しいものに駆逐されていきます。

 著名な経済学者シュンペーターはイノベーションが経済を発展させると言いました。優れた洞察だと思います。
ドラッカーは『マネジメント』の中で、「イノベーションとは製品の発明だけではない、それはお客様のニーズにこたえる新たな満足の創造である」と述べ、また「イノベーションは事業の全分野の活動において行われるべきものだ」とも述べています。

 私たちはともすれば、イノベーション=画期的な製品の発明と思いがちですが、決してそうではなく、製品の新たな用途、新たな売り方、社員の新たな働き方など、それこそイノベーションの分野は無限にあると言えましょう。

 イノベーションというと大企業の話だろうと考えるかもしれませんが、ドラッカーは「小企業にイノベーションが必要とされるのは、大企業と同じである」とし、小企業のメリットは、まさにイノベーションの計画が立てやすい点にあると述べています。

2.イノベーションの目のつけどころ

 『イノベーションと企業家精神』というドラッカーの著書があります。この本は、前半はイノベーションの性質などが解説され、後半はそれを推進する企業家の取るべき姿勢が語られます。私は数あるイノベーションの本の中でもこの本は包括的な見方を与えてくれるよい本だと思います。

その中で、彼はイノベーションの機会について7つの目のつけどころを挙げています。
(1) 予期せぬことの生起
(2) ギャップの存在
(3) ニーズの存在
(4) 産業構造の変化
(5) 人口構造の変化
(6) 認識の変化…ものの見方、感じ方、考え方の変化
(7) 新しい知識の出現

 それぞれについてたくさんの実例が挙げられていて興味深いのですが、詳しくは原書にあたってください。マーケティングは、独創的アイデア創出のシーズ型と顧客の観察から生まれるニーズ型がありますが、一般にはニーズ型をベースにしたものが大半なのではないでしょうか。

 ですから私たちは常日頃から顧客の行動を観察し、その声に耳を傾け続ける必要があるわけです。情報は世の中にあふれかえっているわけですから、「書を捨てて街に出なければならない」わけです。

 一般に企業で問題意識がもっとも高いのはトップです。だからトップは外に出て外部交流をし、情報収集をしなければなりません。さらにまた全員がそれぞれの分野で情報収集に当たらねばなりません。

3.イノベーションの実践法

 『イノベーションと企業家精神』の中でドラッカーはイノベーションの推進法についていくつかの非常に思慮に富んだ考え方を打ち出しています。それらを挙げておきましょう。

(1) イノベーションは多産多死、たくさんのアイデアがだいじ
(2) イノベーションの推進はトップまたは実力のある者が専任しなければならない
(3) イノベーションは既存事業とは別の組織として損益も含めマネジメントをするが、通常3年を期限として、
 それまでは本社費を負担させたり、赤字を難詰してはならない-「赤ちゃんに荷物を背負わせるな」
(4) だが最初の目標値は忘れず(金庫にしまっておき)、3年したら責任者が勝手に目標を下げないようにその証文を出してきてチェックしなければならない。
(5) 期限が来たら、断固その取り組みの継続の是非を判断し、決定しなければならない

 読んでいてなるほどと私は思いました。以上のような教えから、私が思う中小企業におけるイノベーションの進め方は次のようなものです。

(1) まず、経営計画で全部門のイノベーションの取組み計画を掲げること
(2) イノベーションの責任者、担当者に飛び切りの人間を配置する
(3) 損益予算でイノベーションの費用を取る
(4) 全部門が参加するイノベーション委員会を組織し、毎月会議によるイノベーションを推進する
(5) 立ち上げる部門は部門別損益管理し、本社費の負担はさせない

 以上、ドラッカーの著作から私がなるほどと思ったところを取り上げ、それを私がどのように実践に落とし込んでいるかをお話ししました。皆さんも参考にされてイノベーションに取り組んでいただけたらうれしく思います。

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