中小企業で実践するドラッカー経営-経営計画の作り方
2023.07.07
コンサルティング
「ドラッカー経営を中小企業で実践する
第6回 経営計画の作り方」
要約
1 経営計画はマネジメントの背骨であり、最も効果的な経営の進め方である
2 作る、役割分担する、毎月チェックするの3つが揃ってはじめて経営計画という
3 経営計画は列車のダイヤではない、船の羅針盤である
4 経営計画の肝は、実行管理できる経営計画を作ることである
プロローグ
前回までで、①ニッチNo1戦略、②経営を数字で見える化する、③経営者・幹部がマネジメントのしごとをする、という3つのポイントを話しました。いよいよ今回からドラッカー流経営の具体論に入ります。まず今回は、経営計画の作り方について話しましょう。
1.経営計画は経営の背骨である
ドラッカーの『マネジメント』の前半は、企業の目的→目標→経営計画の流れの話が書かれています。彼は「(それらの)検討の結果もたらされるべきものは、具体的な目標、期限、担当を含む実行計画である。目標は実行に移さなければ目標ではない。夢にすぎない。」と述べています。まさにそうだと思います。私の大好きな名経営者マービン・バウワー(世界有数のコンサルティング会社であるマッキンゼー社の育ての親)は「経営とは組織の意思と目標を定め、人材を目標達成へと導いていくシステムである。そのためにもっとも効果的な方法が、経営計画を中心とした経営のスタイルである。」と述べています。つまり経営計画こそ、経営の背骨だというわけです。
2 経営計画は実行を伴わなければ計画とは言わない
日本人の場合、計画というと反射的に「立てる」という言葉が結びつくようです。しかしドラッカーは、計画とは「作って実行管理する」ことだと述べています。まさにその通りです。中小企業で経営計画を作っている会社は全体の2割、実行管理を伴っている会社は数パーセントに過ぎないというのが私の実感ですが、まさにそのことが計画=立てるという思考パターンの証だと感じています。
3 経営計画は列車のダイヤではない
経営計画無用論の経営者は今でもおられます。そうした方々は、経済の状況はすぐにどんどん変わって計画なんて作っても無意味だ、私は計画なしでもうまくやってきたとその根拠を言われます。しかし私から言わせれば、それは計画のもつ意味合いを勘違いしているからだと思います。
計画は計画通りに事を進めるためのものではありません。計画は経営の意思を仮説として持つことを意味します。仮説があって初めて人は何かに取り組むことができます。それはあたかも船の羅針盤に似ているとドラッカーは言います。
つまり仮説があればこそ航海に乗り出すことができますが、いったん大海原に出たならば臨機応変に天候状況に対応していくことができるのです。ですから経営計画は敷かれた線路を時刻通りに進むようなことを前提としていません。計画があればこそ、その実現に向けてチャレンジし、そして現実との差をみんなで受けとめ、必死に考えつつ試行錯誤をしていけるのわけです。
4 経営計画の肝は、実行管理できる経営計画を作ることである
私は経営計画をしたくて、税理士になった者です。そして爾来40年にわたって、自らとお客様の会社で経営計画の実践をしてきました。そんな中でやっぱり経営計画は実行管理が肝だと感じています。
では実行管理できる経営計画に必要なことは何でしょうか?それは次の5つだと思います。①ニッチNo1戦略をもつこと、②具体的な活動計画をもつこと(私はこれを目標管理シートというフォーマットでしています)、③経営を数字で見える化すること(私はこれを経営のコックピットというフォーマットでしています)、④積上げ型の予算を立てること(まさに羅針盤になります)、⑤会議を軸とした実行管理のコミュニケーションのしかたを決め年間の日程を決めることです。
具体的な進め方をお知りになりたい方は、私の「はじめての経営計画100問100答」をお読みいただくか、弊社が行っている経営計画策定セミナーや私の登壇しているセミナーにお越しください。
さて、経営計画の内容ですが、次のような内容を幹部や社員も巻き込んで作っていきます。
①理念、目標、方針や指針
②事業戦略(組織や各部門の機能・課題も含む)
③実行計画(年度方針、目標管理シート、日程など)
④予算
⑤経営のコックピットです。
経営計画は一過性の流行りものではありません。皆さんの経営の根本的なあり方です。これこそが、ドラッカーがいう「小企業は大企業以上に体系的かつ組織的なマネジメントをもたなければならない」ということを具現化したものです。そして何よりも、経営幹部が育つ、育てる唯一の手段なのです。