事業計画雑感
2022.05.13
経営者へのメッセージ
今、東京でりそな総研さんが主催されている「りそなマネジメントスクール」(りそなMS)で事業計画のセミナーの講師役を務めています。
このマネジメントスクールは全体像としては1年間のプログラムで、経営で必要なテーマについて学び、最後にそれらを自分の会社に当てはめた事業計画を作成して終了するという内容で構成されています。
わたしは、そのうち個別のテーマについての思考を事業計画にまとめあげるというセッションを担当しています。わたしの担当のところは、2日間の合宿形式で行われます。
1日目はりそなさん指定の事業計画書に参加者がご自分の計画をまとめていくという課題に取り組みます。わたしはそのガイド役というわけです。
わたしは経営計画こそ経営の中核であると考えており、このセッションでは参加者の方々にそれを腑に落としていただきたいと願っているわけです。
2日目は、事業計画の実行について話を進めていくというプログラムになっています。ドラッカーさんもいうように、計画とは立案と実行がセットになったものです。
今日2日目を迎えるにあたって、講義が始まる前にふと頭に想起したことがありました。それは事業計画の大切さをどのように訴えたら、皆さんが腑に落とせるかということについてでした。
ドラッカーさんは、企業の目的は「顧客の創造である」とおっしゃいました。そして、それは経済的成果をあげることが条件としてであるともおっしゃいました。簡単にいうと、世の中に役に立つものを創り出して提供すること、しかもそれをコストをうわまわる収入を伴って行なうということです。前者を効果性、後者を効率性というのではないでしょうか?
さて、その話、上流に向けて抽象化すると、そもそも企業に課せられた社会的役割は何かと考えると、それは、企業、役所、家庭でできている社会の中で、企業だけが利益を生み出し、家庭に対してお給料を払い、役所に対して税金を払う役割を担っているということです。つまり企業は社会のエンジンなのです。そのおかげでお金が世の中に流れ、富が創造され、人が生活をしていけるというわけです。これは崇高な役割といわねばなりません。余談ですが、そのために経営者には使命感が求められます。これがリーダーシップ論で展開されるテーマです。
話を戻して、今度はこの話を、下流に向けて具体化していきます。
そういう点から事業計画の意義を考えますと、それは上記の、顧客の創造と利益の創造についての仮説立てであるということになります。そしてそれはある種の意思決定なわけです。意思決定をマイホームづくりにたとえると、事業計画は、お家のデザインにあたるでしょう。
この仮説立てのことを、リスクを伴う意思決定とドラッカーさんは表現しておられます。意思決定という言葉の中には、当然のことながら実行というコンセプトが含まれていますので、必然的に実行していかなければならないことになります。そもそも実行しないものは意思決定とはいいません。それは妄想でしょう。
ですから、事業計画の下流には、実行計画があり、実行管理があります。実行計画は、マイホームづくりでは設計図と工程表にあたるでしょう。そして実行とは、実験による仮説の検証にあたります。そのためには数字で測らなければなりません。
仮説→実験→数値化→検証、これを科学的思考といいます。つまり、経営とは科学的に行なうことが必要なわけです。仮説の妥当性を毎月々々検証して、妥当となるまで仮説修正をしていく。これが事業計画の意義ではないでしょうか?実行管理とは、マイホームづくりでは工程進捗管理にあたります。
多くの思想家が、事業計画こそ経営の中核であるという意味もそこにあると思うのです。「計画は実行に移さなければ計画ではない。それは夢にすぎない。」(P・ドラッカー)
会計事務所と経営コンサルティングの融合
御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所
小笠原 でした。