変化と永遠
2018.07.22
ブログ
フロイトと並ぶ大心理学者に
カール・ユングという人がいる
著書に『タイプ論』という本がある。
私の好きな本である。
世の中には
理想主義者と観察主義者という
2種類のタイプの人間がいて
世界の歴史は
両者の主導権争いから解釈される
というものだ。
理想主義者とは
理想とはなにか?を夢想し
それをめざすタイプの人だ。
代表選手はプラトンである。
観察主義者とは
事物はどうなっているかを観察し
その中から本質を探究するタイプの人だ。
代表選手はアリストテレスである。
さて、あなたはどちらのタイプ?
私はどちらかというと前者である。
ところで
私は民主主義や科学的態度を
信奉する者だが
それを確信させられたのは
何人かの思想家の著作によってである。
決定的だったのは
20世紀の大哲学者
カール・ポパーであった。
彼は『開かれた社会とその敵』
の第一部で「プラトンの呪縛」と題し
前者の世界にもたらした弊害に
痛烈に批判を浴びせた。
ときあたかもヒトラーの旋風が
全欧州を席捲していたときだった。
その思想の代表者として
プラトンとヘーゲルをあげていて、
とても説得力のある話であった。
プラトン好きの私にはショックだったが、
ヘーゲルの独善性が嫌なわたしは
少なからず快哉を叫んでしまった。
(ヘーゲルは大嫌いだという人は多いが
しかしこれもヘーゲルは偉大だからだ
彼の授業は魅力的だから)
ポパーには、その前に
『科学的発見の原理』という著書があり
これもやはりすごい本である
その淵源は、浅はかな私には判らないが
チャールズ・ダーウィンの『進化論』
トーマス・クーンの『科学革命の構造』
などと同じような
読後の納得感、高揚感があった。
つまり人間の知識・智慧の進化は
パラダイムや仮説の反証と構築にある
とする考え方である。
これが
私の高業績企業創りという理念での
お客様との関わり
つまり、コンサルティングの
基底にある考え方である。
キーワードは、変化と進化である。
西欧哲学史上
はじめてものごとの本質を
変化においたのは
ギリシア、イオニアの哲学者
ヘラクレイトスである。
「万物は変化する」
と言った彼の言葉は
2500年後の今に至るまで
どれほど多くの哲学者によって
引用されてきたことか。
そう、万物は変化するのである。
そして、経営もどんどんと
経験によって進化していくべきだ。
これが私の組織開発論、
経営チームづくりの基本となっている。
『学習組織』づくりである。
ピーター・センゲが
『最強組織の法則』
で提唱した。
“Learning Organization”
あまりいい訳語ではないと思うが。
『学びつづける組織』
というのがいいと思う。
(学習組織の条件…ピーター・センゲによる)
そのためには、
ワイワイガヤガヤの組織づくり
が必要だ。
私が創業した27年前
経営理念の中の基本指針で
組織風土の構築目標の一つとして
打ち出した
『ワイワイガヤガヤの組織づくり』
である。
その原因として
常に意識しておかなければならないのが
経営者・リーダーの
『聴く姿勢』である。
ドラッカーさんのいう
「聞け、話すな」
(経営者の条件18ページ)
である。
そういう意味では、さすがである。
こうして発言が許されるんだという
メンバーの心理的自由が
高業績企業創りの
大前提である。
もちろん理想は必要である。
だがそれはドグマ(独善的思いこみ)
や教条であってはならない。
プラトンはイデア(Idea)という概念で
哲学に最大の疑問を投げかけた。
洞窟の理論といわれる
卓越したたとえ話で
彼は、人間には決して見えない
ものごとの本質を論じた。
以後の西欧哲学は
これをめぐる
賛否両論の応酬だったともいえる。
キリスト教の教父たちが
キリストの復活という
ありえない話を正当化する
理論構築の必要性から
これに飛びついた。
なぜなら彼らには永遠の天国が
必要だったからである。
しかし人間の良識は
これに勇気ある反旗を翻させた。
実在論と名目論
IdealismとNominalism
の争いであった。
私は、出身は理想主義、実在論だが
現住所は、観察主義、名目論である。
さて、かつても今も
独善的で、かんかちこの石頭の
経営者はけっこういらっしゃる。
私がセミナーで
会議のしかたやいろいろな話をしても
うちのトップが独裁者なので…
と悩みを吐露される方がいらっしゃる。
そんなときは
トップに来てもらってください
とお願いしている。
私の低い説得力では
なかなか彼らの考え方を
コンヴァージョン(回心)
させられないかもしれない。
キリストのような圧倒的な
思想性、実践による説得力が
足りないからだが。
それでも、そのことが
最大の障害である
ことは明らかである。
長々とお話してきたが
言いたいことは次のようなことだ。
とはいえ、経営では
理想、理念、目標は絶対に必要だ。
目標の力は偉大である。
だがそれは方法論や思考論に至るまで
独善や教条であってはならない。
リーダーとメンバーによって
仮説が共有され、
試行錯誤のなかで検証され
自由な発想によって
推進、展開、発展されるべきだ。
経営には、
ヘーゲルのいうような完成はない
あるものは変化に対するフィットである。
その中で、経営は発展、成長、充実
していかなければならない。
>それが
人間のもっている性情だからだ。
人は静寂や寂静、静止、完成
にはがまんできない。
そこでは
こんどはヘーゲルがいうように
歴史的発展、自由に向けた進歩
のパラダイムが活きる。
さて、現在の私の興味のありかは
デイヴィッド・ヒューム、
ハチソン、アダム・スミス、
ウィリアム・ジェームズ、
G・H・ミード、カール・ワイクなど
道徳哲学、人間同士の
コミュニケーション、
人間の認識や進歩についてである。
すべて
コンサルティングに欠かせない
ものだと思うからだ。
学ぶべきことが多くて楽しい。
そして周りの人の私への意見は
すべてすなおな考えとして
とても参考になるのである。
会計事務所と
経営コンサルティングの融合
御堂筋税理士法人&
組織デザイン研究所
小笠原 でした。