経営者が社員育成でもつべき心がまえと態度について
2015.04.27
高業績企業づくり
今日は、人材育成に対して
経営者がもつべき考えについて
お話したいと思う。
それは、最近、そういうことを
ちょいちょい考えつつあるからだ。
のっけから告白すると、わたしは
社員を育てるというマインドが低かった。
それでも、手前みそかもしれないが、
ひと様から、『社員が育っていますねえ』
といわれることがあるが、
それは、資質のよい人が入ってくれたから
だと思っている。
マーケティングの大家、ラブロックが、
「人材育成の前に人材採用あり」と
書いているところである。
(だから人材採用は大事ですねえ)
それはともかく、そんな本能丸出しの
マネジメントの権化だったわたしだが
齢60を超え、人材の育成にも
多少思うところも出てきた。
そこで、まったくの生煮えだが
その思うところを、
少し考えてみたいと思う。
■人材育成の必要性の痛感
まず、人材の育成の必要性を
経営者がどう痛感できるかである。
・人が育てば、企業が発展する
「真の資源は知識だけである。」
これは、ドラッカーのことばである。
ヒト・もの・カネが、
経営資源だといわれるが、
ヒトがいなければ、価値は創造されない。
「無生物から取得される
いかなる成果、いかなる効用も、
人々の手とはたらきがなければ、
一つとしてえられなかったであろう。」
こちらは、大変古く、
ローマ時代の哲学者・弁論家
キケローのことばである。
・だから、
長期的にもっとも効果の高い投資は
人材育成投資である。
ここを、確信しなければならぬ。
そうなると、儲からないから
「研修にあてるお金は出せません」
などという寝言は、
出てこなくなるはずである。
・また、
組織の責任は永続することである。
そのためには、家族と同じで
世代の松明を
手渡し続けなければならない。
そんな当たり前のことを
しみじみと感じて
肝に銘ずることである。
・そして、
社員を一人前の
仕事人、管理者、経営者に
育てることは、
縁あって社員をあずかった
この身として当然の義務であると
これまた、肝に銘ずることである。
それは、森信三先生が
修身教授録の「教育の真髄」で
お教えくださるところである。
ドラッカーも、
経営者の仕事は教師の仕事に
もっとも近いと述べておられる。
キーワードは、
誰もが、大切は人の子である。
人の親の思いを感受し
お預かりした社員を
育てずんば止まぬ、
裂ぱくの思いでいそしむことである。
であればこそ、
やさしく、きびしく育てるわけである。
そこのところは、
共有しておかなければならないと思う。
■次に、育成の基本スタンスである。
・まず、よくできることを通じて
人に活躍させるということである。
『強みを活かす』
人は、できることに対して
お給料を払われていなければならない。
だから、その人の強みを
活かす分野がなければ
これは、ご縁がないと割り切るべきだ。
また、人柄が問題がある場合は
採用ミスである。
ここで、人柄とは、
「原因と結果の法則」が
わからないことをいう。
この二つがOKなら
あとは、必ず開花するとの
信念をもつことだけである。
・つぎに指導姿勢について
森信三先生は、
吉田松陰先生の人柄を挙げて
「本当に偉い方というものは、
みだりに声を荒げて、
生徒や門弟を叱られるものではない。
大声で生徒を叱らなければならぬ
ということは、それ自身、
その人の貫禄の足りない何よりの証拠。
深い思いやりとか慈悲心が、
しだいに相手にわかりかけてくれば、
叱るなどということは問題ではなくなる。」
「真に剛に徹しようとしたら、
すべからく柔に徹すべき。
魂をあつかう教育の問題は、
至柔至剛の魂をもたなければ、
真に解くことはできない。」
『至柔至剛』
つまり、やさしくあたたかいの極みが
すなわち、しっかりきびしくになる!
わたしの目下の取組み課題である。
そういえば、小学校の担任だった
細川泰夫先生はそうであった。
まねしなければ・・・。
■さて、臨む態度である。
・「だれでもふつうは、
まともなことを考えている」
これが、他人と関わるときの
大前提であると思う。
・そこで、常に
相手の思っていることを知る
ことが第一である。
相手の見ている事実を見る
ということだ。
・そのために、まず、経営者には
(もちろん経営者には限らず、
管理者は、もっと一般に人は…)
よく聴く、観察する、質問すること
がだいじだ。
よく聴く
アイサックスは『対話』の中で
傾聴する→相手の話を尊重する
→自分の考えを保留する
ということを提案している。
その心のプロセスを
つつがなく進めるためには
『すなおに聴く』という姿勢が
なんといっても必要だ。
その訓練には、
外界のものを第一瞬
批判精神なしに
眺める、受けとめる
ということをするとよい。
そして、相手の様子を
よく観察するということだ。
(ただし目を凝らしてはならない。
柔和にできたらよいのだが)
すると、たくさんの情報が得られる。
その上で、
相手の考えを確認するために
相手の考えを深めるために
相手の考えを育てるために
質問をしていくのである。
したがって、この質問が
人材育成の
最大のコツだといえよう。
古来、孔子、ソークラテース、ブッダが
使ってきた質問術である。
その上で、
適切なフィードバックを
してあげるとよい。
けだし、フィードバックこそ
人を育てるエネルギーとなる。
ポジティブな承認は励みになる。
それゆえ、上に立つ人は
特にこの
『承認』を学ばねばならぬ。
いわゆるほめるということだが、
認めるでもOK、また感謝もよい。
次にネガティブなフィードバックだ。
実はこれが、人の育成に
最大の力となる。
先述の細川先生は、
「小笠原君、トマトはなあ
とことん水を与えへんようにして
ストレスをかけると
おいしく実るのやで」
と教えてくださった。
しかし、このネガティブ・フィードバック
自在に使えるようになるには
相当の練習が要るなあ。
先ほどの松陰先生の
春風駘蕩のおもむきも要るし、
あえてきびしくする心の制御も
必要であるから。
教えるということも必要だ。
この場合のキーワードは
『わかりやすく』である。
これは、常に意識して
実践することが必要だ。
そのためには、まずは
自分がそのことを
消化しきっていなければならない。
「人の自己啓発に
手をさしのべることほど、
自分の自己啓発の
助けになるものはない。」
(P・ドラッカー)
・専門用語を使わない。
・適切なたとえ話を使う。
・ひとことでエッセンスを述べる。
・簡単なモデルを使う。
これらは、私も意識する方法である。
最後に理解度の確認である。
そのために、とにかく
相手に語らせることが大事だ。
そのために、自分はしゃべらないことが
もっとも自制が必要となる。
自己顕示欲の滅却である。
「説明してみ?」
これがキラー質問である。
そして、相手の答えを
よーく聴き評価する。
うまければ拍手してほめてあげる。
???なら適切な対策である。
「またやってみ?」
というのはアクション系の
確認のキラー質問である。
そしてやはりよーく見て
評価、教導してやる。
だから、会議では、
必然的に、経営者の役割は
ドラッカーが見た
GMのA・スローンの態度に倣う。
「発言はしない、
ただし、質問はしてよい。
そして、最後にまとめを述べる。」
これが、ドラッカーが
『経営者の条件』の中で述べた
経営者の行動原則である
「聞け!話すな!」に結実する。
■まとめ
人は、自己啓発によって育つ。
そのためには、
仕事で完成の喜びにつながる
ような役割を与え
失敗を通じて、
やりとげさせることが肝要である。
人間が育つのには、
5年、10年の歳月が必要だ。
だから、長い目で
人材育成を考えなければならない。
そこで、再度断言しよう。
人が育てば、会社は発展する!
だから、長期的に
もっとも効果の高い投資は
人材育成なのである。
■余談
そのためには人材育成の
しくみが必要だ。
それは基礎としての
価値観と基準行動
1階としての、
読み書きそろばんと専門スキル
2階としての、
マネジメントスキルと経営学である。
(この話はまたいずれ)
会計事務所の可能性を追求する
御堂筋税理士法人&
組織デザイン研究所
税理士 小笠原 でした。