御堂筋税理士法人創業者ブログ

M社は、とある分野の卸売業である。
リーマンショックの影響や、
銀行が奨めた為替リスクヘッジのための
デリバティブ商品で大きな差損を受けるなどして
現在銀行からリスケジューリングを受けている。

かてて加えて、
即戦力と見込まれて加入した
営業マンがすべて退職したため
営業力は、若手の幾人がが残るのみとなった。

私に与えられた社長からのミッションは、
営業の指導である。
具体的ンは、若い社員を育てて、
債権管理、新規開発を進めていくことである。

さらに、リスケ中ゆえに
新しい資金は貸してもらえないので、
与えられた資金限度で、
利益を挙げていかなければならない。

そのためには、売掛金と在庫をきちんと管理して、
資金効率を上げていかなければならない。

そのために、まず私は
新規開発のために
毎月、営業マンごとに
候補先について
決算書や信用調査資料などに基づいて
顧客の評価と、どのようにアプローチしていけば
よいかの指南をしていった。

何百社、何千社も決算書と企業を見ていると、
会社の経営実態、企業性格、経営者のタイプ、課題
仕入先が、その会社にどう貢献できるか、
また、どうすれば取り入ることができるか、
けっこうクリアーにわかるようになる。

そうしたコンサルティングのノウハウを
営業マン達にアドバイスするのである。
そうしていって、新規開発先の
信用確認と、開発の戦略を共有していったのである。

次に、利益の向上である。
問屋とは、銀行と同じビジネス・モデルである。
なぜなら、扱う商品は、金とものとのちがいはあるが、
それを貸して、いくら手数料をもらえるかの仕事である。

だから、その経営のものさしはシンプルである。

   粗利益
―――――――――
 (売掛金+在庫)

つまり、投下資本利益率である。
使える資金を、いかに粗利益に結びつけるかがコツだ。

これを高めるためには
個々の顧客について、
月々の売上高と粗利益、販売条件、在庫の必要性
仕入条件、販売費用がわかればよい。

たとえば顧客A社について、次のような取引状況だとする。
月売上高 5,000千円 粗利益率5%、粗利益250千円、
販売条件は、20日締め月末回収、手形120日、
必要在庫、平均2ヶ月、
仕入サイトは、40日とすると

いただける年間粗利益  3,000千円
つぎ込むお金は
売掛金は、  5,000千円×5.3ヶ月=26,666千円
在庫は、   5,000千円×2ヶ月 =10,000千円
一方仕入れ先から借りる
買掛金は、  5,000千円×1.3ヶ月= 6,666千円

だからA社についての
わが社の投下資本利益率は、
3,000千円 ÷ (26,666千円+10,000千円-6,666千円=30,000千円)
となり、答は年間10%となる。

これを全顧客について分析して資料を作るわけである。
今回、ほぼそれができあがってきた。
私の方でチェックをかけた。
顧客によって、利益率はバラバラである。

それでよいのかどうか?
その判断のための基準が必要となる。
その基準とは何か?
それは、信用度によって必要な粗利益率を設定することだ。
つまり信用できる相手ほど
低い利益率でもよいということだ。

なぜなら、貸し倒れにあっては
元も子もないからである。
実のところ、失礼だが同社では、
以前は、その基準がでたらめであったといえるだろう。

私はその基準を明確にするために
得意先信用格付基準表を作った。
それは、およそ以下のようなものだ。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
格付 定  義        対象先要件     取引条件   在庫   備考
                 TSR 自己資本 サイト 収益率 取引
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 S 上場企業                   省略  8%~   OK   買掛考慮OK
   非上場超優良     65~ 60%~      
 A 強固な財務体質    58~ 40%~              12%~   OK   買掛考慮OK
 B 安定的財務体質       53~ 30%~       18%~   OK
 C 定期的チェック必要  50   20%~              25%~   △
 D 投機的          45~ 10%~              33%~   NO   ファクタリング条件
 E 取引不可        ~44  10%未満
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

与えられている資金は10億円である。
これでわが社は、年間利益50,000千円を稼ぎださなければならないのである。
固定費は年間168,000千円である。
したがって、50,000千円+168,000千円=218,000千円
の粗利益を生み出す必要があるのである。

10億円の金を使って、年間2.18憶円の利ザヤを稼ぐわけである。
その必要利回りは21.8%となる。
これがターゲットの資本利益率だ。

さて、現状はどんなものだろう。
おそらく18%くらいのようである。

つまり、やらねばならないことは、
優良先の粗利益率を上げることと
不良先で低粗利益率の先を入れ替えることだ。
その入替候補が、新規開発先ということになる。

なにしろ金が制約条件だから
なんぼでも増販するという作戦はとれないのだ。
おわかりだろうか。

営業マンには、今後
自分が、会社の金を使って商売をしており、
その顧客の信用度を測って
粗利率とサイトの取引条件を
交渉せねばならないことを
わかってもらわなければならない。

つまりこういうことだ。
交渉先がBランクだとする。
必要な投下資本粗利益率は18%である。
これはどういう意味か?
在庫と売掛金を使って、年間18%の利益を
挙げなければならないのである。
その組み合わせは、粗利率と資本回転である。
つまり粗利益率6%なら3回転(サイト4ヶ月)で18%だ。
粗利益率3%なら6回転(サイト2ヶ月)が必要だ。
この『回転』という意味がわかればOKである。
1年が12カ月だ。売って4ヶ月で回収できれば、
その金は、年間3回金を稼げる。
1回6%金を稼いで来れば年間で18%稼いでくれるのである。
これは、赤血球の働きにたとえられる。
1回に6%栄養を運んでくれるヘモグロビンが、
3回体をめぐったら、全部で18%栄養を運んでくれるではないか。

若き営業マンたちに、
「どや、わかるか?」と尋ねたら、
「OK、OK」といってくれたので
腑に落ちたのだろう。

例題を出したら、
上目遣いに、あれこれ
頭の中で演算をしていた。
どうやら、答えを出せたらしい。

実際、この取り組みを始めてから
新たな有望顧客について
相手の経営者と
大変深いコミュニケーションができて
よい関係が築けるようになった事例も出てきている。

またろくでもない先は
やはり、ろくでもないことを言ってきている。
顧客の入れ替えは、焦眉の課題だ。

そしてなにより
若い営業マンたちが
顧客を見る目がしっかりしてきた。
それが何よりも明日の業績の希望の芽だ。

その点、社長と私とは
意見が完全に一致しているといえるだろう。

ということで、
今後、毎月実績をモニターしていき、
作戦を考えていかなければならない。

これが、某メガバンクの
貸付担当者がほしい
わが社の改善活動の答だ。

わたしが来社するのに
合わされてこられた某メガバンクの担当者の
リクエストもまさにそうしたもので、
彼も査定は、もっときびしかった。
帝国が54点以下のものは掛け目90%
帝国が44点以下のものは掛け目30%で考えているらしい。
してみると、実に1.8憶円が償却対象だ。

わたしが、
「それどこか教えてくれへんかなあ?」と
すなおにリクエストしたら、
苦笑しておられた。

いずれにせよ、
社長と私が、われわれの取り組もうとしていることを
お話ししたら、しごく納得いただき、
それで、ドキュメントを出してほしいとのことだった。

来月の月末にチェックするつもりで
会社に、していただくことをまとめて
お願いして辞去した。

コンサルティングに強い御堂筋税理士法人&経営エンジン研究所
大阪 税理士 小笠原 でした。 


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