中小企業で実践するドラッカー経営⑦-マーケティングの進め方
2023.07.12
コンサルティング
要約
1 企業の目的は顧客の創造であり、その中心がマーケティング活動である
2 マーケティングとは販売を不要にするための品揃え、価格付け、流通チャネル選択、販売促進の活動である
3 マーケティング活動は、会社の全部門の人たちが参画するマーケティング委員会で推進する
4 マーケティングとはつまるところわが社をブランド化することである
プロローグ
「企業の目的は顧客の創造である。したがって、企業は二つの、ただ二つだけの起業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。他のものはすべてコストである。」 これはドラッカーの『マネジメント』の中でも、つとに有名な一節です。では、マーケティングとは何か、どのように進めていくのか、それが今回の話の内容です。
1.マーケティングとはなにか
「マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、自ら売れるようにすることである。」(ドラッカー)
マーケティングとは売れるしくみづくりです。そのためには徹底的に顧客の視点に立って、わが社の製品・サービスを考えなければなりません。その中心は、顧客にとっての有用性です。顧客が解決したい問題とはなにかの徹底考察です。そのためには顧客に訊く以外に方法がないとドラッカーは述べています。顧客が願うことはなにか?便利さ、品質、デザイン、堅牢さ、価格、アフターサービス、こだわりなどがコア価値ではないでしょうか?そこには妥協なく徹底的にこだわりたいものです。次にレスポンス・スピードです。さらに顧客の一人ひとりへの対応です。そしてホスピタリティです。そこには『自利利他』の精神の反映があると思います。
2.マーケティングで考えるべき要素
マーケティングには大きく分けて3つの段階があります。まず市場を調べわが社のターゲットを明確にし、わが社の立ち位置を明確にします。次に、製品・サービスを具体的にデザインします。そして最後に、マーケティング活動のあくなき実践展開があります。
マーケティングを具体化するためには、まずわが社の製品・サービスについて、『4つのP』をデザインします。4つのPとは、Product(品揃え)、Price(価格)、Place(流通チャネル)、Promotion(販売促進活動)をいいます。
① 品揃えとは、わが社がカバーする製品・サービスの範囲です。どこまで揃っていたら顧客がいいなと感じるかです。
② 価格は、ただ一つの利益をもたらすマーケティング要素です。値段は決して安ければ安いだけよいものではないことは、日ごろ私たちが痛感しているところです。
③ どのようなチャネルを通じてものを販売するかの選択が流通チャネルです。一般にはエージェントを通じるか、直販するかでしょう。
➃ 最後に、販売促進手段の工夫があります。品揃えと価格は基本的なマーケティング要素ですが、それが定まったら販売促進の工夫が、マーケティングの醍醐味だと思います。わたしも販売促進のデザインを重視しています。次の図はその具体的なイメージです。参考にしてください。
それとは別に、実際の販売活動の設計と訓練による販売の強化活動があります。BtoB企業では営業部隊の訓練を行います。訓練内容は、営業プロセスの標準化(営業MAPの作成)、商談プロセス・プレゼン力・傾聴力・交渉力の訓練、そして営業チームのマネジメントの確立です。BtoC企業の場合には、マーチャンダイジングの諸要素、店構え、品揃え、展示法、クリンリネス、ホスピタリティなどの工夫と訓練となるでしょう。
これらすべての活動において、考え方の大鉄則は、私が顧客だったらなにを望むか、どう感じるかです。それをマーケティングの大家、セオドア・レヴィットは『顧客中心主義』と述べました。とても大事でかつむずかしいことです。
3.マーケティングの実践法
マーケティング活動を実践する場合には、会社の全部門の人間が参画する『マーケティング委員会』を立ち上げ、そこでテーマを定めてマーケティング活動の実践とふり返りを積み重ねていきます。
「マーケティングとは、企業の成果すなわち顧客の観点から見た企業そのものである。したがってマーケティングに対する関心と責任は、企業のあらゆる分野に浸透させなければならない。」
ドラッカーの言葉ですが、私はこの言葉に深く影響を受けて上述のような考えに至っているのです。
4.マーケティングは戦略経営における企業活動の中核である
これまでお話してきたように、ニッチNo1の地位を築き上げることが高業績企業の条件だと私は確信しています。私自身も下手なりにニッチNo1を指向してきました。そして今思うことは、それはわが社をブランド化することだということです。マーケティングとは結局のところブランディングなのではないでしょうか?ブランディングとは、わが社の製品・サービスをぴかぴかに磨き上げ、徹底してデザインにこだわり、最高の奉仕の心を磨きあげることではないでしょうか?それは、自利利他の精神であり、徹底的に本質にこだわる禅と(茶道など)道の精神を基にした活動ではないでしょうか?