新人のメンタリングで会計・財務・税務の考え方を整理しています
2022.12.11
人材の育成
御堂筋税理士法人の小笠原です。今、最近入社された3人の人たちの個別のメンタリングをしています。それぞれ毎月1回1時間程度対話をしています。その機会により私は皆さんのことを知り、皆さんは私の考え方を知るわけです。
第1回は、私の小著「御堂筋税理士法人・経営の考え方」を読んでもらい、感想や質問を語ってもらいました。この本は、メンバーの諸君に私の経営や仕事に対する考え方、それらができあがってきた歴史を理解してもらうために作りました。おかげさまで十二分に寄与しているように思います。よかったなと思いますので、皆さんもぜひお作り下さい。
次回は、私の会計・財務・税務についての考え方を学んでいただこうと思っています。それで私が作った短いレジュメを事前に読んでもらって、疑問事項や質問項目を挙げてもらいました。ところがこのレジュメはけっこう専門的なもので、税務部門の方でも初心者にはかなり難しい内容だと思われ、まして税務以外の部署のメンバーにはちんぷんかんぷんかもしれません。しまったと思いましたが、まあそこは1on1でうまく説明していきます。
そんなことで、私の考え方の要点をまとめておく必要があるなとふと思い立ちました。それは素人に専門領域の思想をどうわかってもらうかという課題に打ってつけだと思ったからです。そこでメモ用紙に頭に想起したことを書きつけていきました。
まず前提として会計の目的は何かということがあります。私は、会計の目的は、企業活動による経済的成果の測定と経営者への報告だと考えています。そこではなんぼ儲かったのかが最も重要な課題でしょうから、必然的に損益計算書(PL)での期間損益の測定が第一義となります。
会社では、儲けるためにまずお金を使ってその後お金が入ってきます。その入出金を売上とか仕入とか経費とかあるいは固定資産とかいうふうに分類していきます。これを仕訳といいます。お金が出入りするなかで、これは儲けの計算に関係するというものだけをかき集めて損益計算書を作ります。
そうすると儲けの計算に関係ないお金の出入りが残ります。そこでこれらをかき集めて会社の資産、借金に分け、資産から借金を差し引いたものを自己資本として貸借対照表(BS)という表を作ります。ですからBSでは会社のふところ具合が判ります。
一応、BSで資産とされるものは会社の財産ですが、それらだけが会社の財産なのかと言われると大いにギモンです。なぜかというと会計のルールは19世紀に確立しておりまして、その頃は鉄やコンクリートでできたものが財産だったからです。つまり目に見えて触われるものでなければ財産とは考えないのです。
しかし、本当にそうでしょうか?私はちがうと思います。自分の会社を経営したり、お客さんの会社をコンサルしたりして思うのですが、本当に財産とは、まず経営者のリーダーシップ、そして社員という人材の質、次にお客様の存在そして自社のノウハウではないでしょうか?ドラッカーもそのように言っています。そしてこれらは目に見えず触われません。
触われないから資産に挙げる必要はなく、お金を使うたら全部経費です。なんとラッキーなのでしょう。だからドンドン使いましょう。
一方、借金の方はどうでしょうか?ドラッカーは利益の本質は未来の費用の積立だと言っています。きょうびの税務署は税金をたくさんふんだくる必要があるために、会社の負債のうち、たとえば社員の退職金とか役員の退職金とかは払うまでは一切経費での積み立てを認めません。だけどこれらは巨額な借金です。それ以外にも未来のリスクはいっぱいありますが、それらを見越して経費を立てることは許しません。ですから、BSを見てそのままこれがわが社の財務体質だ、経営体質だなんてまったく言えないわけです。
ほんとうの企業の体質は財務の体質だけでは判断できません。非財務的な体質を見なければならないのです。ではそれは何か?それは企業人格であり高業績体質なのです。それは測りがたいものですが、でも何らかの方法で推し量れると思います。
たとえば、企業人格と高業績体質をもたらすものは、あくなき人材の教育であり、マーケティング活動であり、ノウハウ開発活動であり、ブランディング活動なのです。ですからこれらの活動になんぼ銭を使っているかをみれば、そのための活動レベルは判ります。
しかしふつうの会社の経費科目には、人材育成費という科目も、マーケティング費という科目も、ノウハウ開発費という科目もありません。皆さん、せめてまずはこの3つの科目を作り、そしてそれぞれなんぼ使うか決断してください。これらの銭を使わんと儲かったとよろこんでる場合とちゃいまっせ。「金の使い方を見ればその人の人格が判る」という金言があります。けだしそのとおりでしょう。これはええ会社を作るための努力のものさしです。
一方ええ会社になったという成果のものさしはなにでしょう?一つには売上高に対する利益の割合です。これが普通の会社の倍以上あればよいわけです。次に会社の雰囲気、社員のイキイキさを肌で感じることがあります。さらに組織の風土を点数測定する方法もあります。
何をいいたいのか?つまり財務数字だけではよい会社のものさしとしてははなはだ不完全なのです。でもそれでも財務数字をより経営のよきものさしとしてしていくためには、会計のしかたについての哲学が必要なのです。そして新しく入ってくれたメンバーに、私の会計のしかたについての哲学をわかってもらうのが、次回のセッションのねらいなのです。
私の会計哲学は、第一に、もっともシビアな考え方での利益を計算することです。
もちろん会計には業界とお国で決めたルールがあります。しかし工夫はなんぼでもできます。それは将来のわが社を創る活動にしっかりと経費を使い、また未来の負債と将来のリスクをきっちりと経費として挙げることです。
第二に、BSに載っている資産を極限まで吟味しもはや金目のものと言えないものは放ってしまい、BSを筋肉質にそしてスリムにすることです。在庫をへらし売掛金をさっさともらい、お荷物になるような設備は買わずひたすら現金をためることです。そうですなまあ売上がゼロになってもメンバー全員のお給料を2年分くらいは払えるくらい貯めます。
第三に、それらのために究極の節税をすることです。節税というても保険や機械や太陽光を買うことちゃいまっせ。人材育成と顧客開発と試験研究にしっかりとお金を使い、社員と役員の退職金は外部で積立て、ゴミみたいな財産は残らず処分することです。
というように説明したらわかるでしょうか?そもそも簿記がわかってないとしたら、簿記をどう説明するかですねえ。これのネコでもわかる説明方法は一応もっています。今から皆さんとお話する機会が楽しみです。
会計事務所と経営コンサルティングの融合
御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所
小笠原でした。