御堂筋税理士法人創業者ブログ

 『返報性』とは、「自分がしたことが、自分に返ってくる」という性質をいう。わたしがこの言葉を目にしたのは、チャルディーニという人の『影響力の武器』という本の中だった。アマゾンで見ると、この本には何と1373個もの評価が付されており、それこそ影響力のある本であろう。読んだ当時は、多少ピンと来ないところがあったが、昨今、返報性というその言葉が脳裏によぎることが増えてきた。

 それはなぜかというと、私がコンサルティングでお客様の幹部の皆さんにマネジメントのスキルをお話しするテーマの中に『リーダーシップ』というテーマがあり、その核となる概念が経営についてのもつべき価値観であり、それを一言でいうと、この『返報性』ということになるからだ。

 経営をしていく上で、自分の会社を高業績企業にしていくためのコツはなにかと言えば…、うーん!?人によっていろいろあるだろうが、わたし的には、やっぱり『論語と算盤』すなわち『経済と道徳』だろうか?つまり精神が物質に作用して価値を創造するということである。そういう意味では、企業経営とは人がものを使って価値を創造するということである。

 世界は物質と精神で成り立っているとわたしは思う。物質はエネルギー保存の法則とエントロピーの法則により支配されている一方、精神こそは自由と価値創造が可能である。企業経営では、経営者はそのどちらもうまく扱わなければならない。

 物質の扱いがへたでは話にならない。なぜなら1+1を2にできないようでは、決して儲けることはできないからだ。しかし人使いがへたで1+1>2にできない経営者はぎょうさんおる。ものは1+1は2にしかならないのだから、さきほどの、人→もの→価値の方程式で価値を生むところは、人のところしかない。この方程式は、経営者から見るとより正確には、経営者(私)→人→もの→価値となるから、経営者の人の使い方は、経営の成否を決める。

 だからこそ、リーダーシップ、つまり経営者・幹部の価値観の研ぎ澄まし、つまり『認識と修養』は致命的に重要であり、マネジメントスキルでも、別格ですべての基礎を形づくるものである。

 では、この価値観とはどのようなものなのか?それを示したものが下のパワポの資料である。

 私は、その価値観のベースをこまかくは3つに分けている。1つ目は、謝恩と報恩である。2つ目は、私の態度がまわりの態度を決めるということである。これを原因と結果の法則という。3つ目は、無知の自覚である。しかし無知の自覚は、2つ目が作動することを担保する私の態度の謙虚さをいうから、実際には、必要な経営の価値観は、謝恩と報恩と原因と結果の法則の2つということになる。

 だが、さらに考えてみると、謝恩と報恩とは、恩を感じて、恩に報いるということであるから、これも原因と結果の法則を、反対の立場から見たものである(つまり原因を受けた側の結果としての行動である)。してみると、この2つの価値観は、実際には1つに統合される。それを抽象的に言えば、『返報性』ということになるのではなかろうか。

 つまり、この世の精神の根本法則は『返報性』ということになる。これは仏教ですでに何千年も前に教えられているところである。そこらあたりにも仏教思想のすばらしさがあるということだ。善因善果、悪因悪果、因果応報、言い方はさまざまだが、人が、とりわけ経営者・幹部が持つべき考え方は、これに尽きるのではないだろうか?

 それを心に植えつけ、自然にそのような価値観から何ごとにつけ行動できるように訓練をしていくことを『修養』という。私のような、浅学菲才、人間的にも決して上等とは言えない者が、このようなことを高説するのは分不相応もはなはだしいが、お叱りを覚悟で述べさせていただくなら、修養とは、学びと祈りと決意、そして行動と反省のくりかえしとなるのだろう。

 小さなうち、若いうちからそのような習慣を身につけられた人は幸せである。ドラッカーは、経営者・幹部に必要な『真摯さ』は後からは身につかないもの、始めから持っていなければならないものだとした。驚くほど簡単であるが、それほど身につけることが難しいこの心根である。ちょっとやそっとの反省ではもちろん身につかないだろう。性根が直るためには身もだえしなければならないほどの痛哭な反省が必要であろう。そのためには己れの小さな悪も見逃さず、顕微鏡で拡大して現前させ、しっかりとした自省と具体的な防止対策が必要であると思う。さきは長いが、避けて通れない道である。

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