御堂筋税理士法人創業者ブログ

 毎日1万歩歩くことに決めて1年が経過した。

 1万歩歩くことにしようと思ったのには2つの理由がある。一つは、母親が年を取ってから二度もつまづいて骨折し、それが致命傷となって亡くなったからだ。足が心もとなくなると老いが激しくなる。小生の周りにもそういう方がいて、こうはなりたくないなと思うし、まして自分の母親がそうだったので、明日はわが身という恐怖心がある。さらに、いっとき右膝に水が溜まり左足だけで階段の段を進めるという情けないことになったのもこたえた。

 もう一つは、一昨年の秋に座骨神経痛を患って難儀していたからだ。座骨神経痛というのは、ヘルニアの一種で物理的に椎間板が飛び出して神経に当たる病気である。常に痛いのでやっかいなものである。少しでも運動をしたら、症状も軽くなるのではないかと思ったからだ。医学的根拠はない。こちらの方は、2年近くも近くのお医者さんに通って気長に治療した結果、おかげさまで症状がかなり改善し、最近は痛みも気にならなくなった。

 それで、昨年の夏から毎日1万歩を目標に歩き出したというわけだ。1万歩といえば、約6.7㎞歩くことになる。しかし、毎日、日常生活でそれだけ歩くということは、都会暮しの知識労働者ではありえない。ということで、必然的に、意図して歩く機会を創っていくことになる。これがけっこう涙ぐましい努力を必要とする。

 例えば、お客様を訪問する際も、できるだけ歩いて行くようにした。テレワークの日など普通だったら自宅で過ごすので歩くことなどない。そこでそうした折には近所を歩く。これは歩くために歩く。そのために当てもなく家の周囲を徘徊することになる。まだ完全にはボケていないので、家を忘れて家族に迷惑をかけるということはないが。

 小生は、大阪市内の肥後橋というところに住んでいて、その気になれば、周りには地下通路が巡っている。いちばん距離を稼ぐならば、自宅近くのダイビル本館から、フェスティバルタワー(朝日新聞本社)を経由して、地下鉄肥後橋駅の一番南の出口までを往復するルートがある。これだと往復で3,000歩以上を稼げる。地下街は雨に降られず全天候型で、しかも夏の暑さ冬の寒さも凌げてありがたい。

 また、ドージマ地下街から梅田に行くコースもある。阪神、阪急のデパートまで往復すると約6,500歩稼げる。コロナ下ということもあって、晩御飯のおかずのお買い物にかこつけて梅田まで歩いていくのが半ば習慣になった。これなど趣味と実益を兼ねている。デパ地下は食材の豊富で良品が多いが、めったやたらに高いのが困りものではあるが。

 家にいて、どうも気が進まなければ、自宅マンションの廊下を往復する。自宅玄関からエレベーターホールまで往復すると約80歩である。幸い、わが階には3組しか住民がいなくて人に会うこともほとんどないから、この単調なコースを何十往復もする。たまに人の気配がする折は、不審に思われるのもいやなので、終には家の中をうろうろする羽目にもなる。なんともこっけいな光景である。

 それなら、ルームランナーを買えばいいではないかという話になるが、それはけっこうかさばるので狭いわが家では実用的でなく、家内の反対が予想されるし、わたし自身もメンテナンスなどの点から、その継続活用の自信がない。さらに、どうもハツカネズミのようで多少悲しくなる。なので今のところは購入にいたっていない。

 さて、早朝から出張するときなど大変である。朝6時台の列車に乗ったりしなければならないときなど、夜明けから家を出て、うろうろ歩いて歩を稼がねばならない。自宅から大阪駅までは歩いて20分強、なんば駅までは約45分で、ちょうど歩数を稼ぐにはちょうどよいし、途中には網の目の如く地下街が張り巡らされているから、いくらでもコースをチョイスできる。

 また、出張先の最寄り駅についても、かげんによっては徒歩で会社まで行く。夏の盛りなど汗でずぶぬれになるから着替えが要るし、ちゃんとした格好で行かなければならないときには、靴を持参しなければならない。また私のように暑さと日光と紫外線が嫌いな人間には、サングラスと日傘も不可欠である。

 とにかくちょっとしたすき間の時間利用、コースの工夫、持参物の怠りなきよう、など、常に1万歩を念頭において生活している感じだ。

 1万歩を歩くためには、1時間半の時間が必要である。起きている時間を16時間として、従ってそのうちの10%を歩く時間として確保しなければならない。そうすると、ただ歩くだけでは、人生の生産性に甚大な影響を及ぼす。第一退屈でしかたがない。これが上高地にでも住んでいる文学者や哲学者ででもあれば、思索の時間となるのだろうが…。ところで、小生には、元来歩きながら本を読むという悪癖がある。したがって必然的に読書をしながら歩くことになる。

 むかしは、本を読みながら歩いていても、周囲に目端が効いていて、周りにも迷惑をかけることはなかったのだが、寄る年波か、以前のような動体視力と敏捷さがなくなってきた。昨今のような(特に大阪の)自転車の危険極まりない通行状態、運転者意識の救いようもない低さでは、身の危険を感じる。(この自転車の通行マナー問題は深刻である。彼らはそのうち高速道路でも逆行しだすのでは)

 こういう状態だから、集中力を要する思想書など、とても歩きながら読書というわけにはいかない。かといって興味のない本を読む気にもならない。そこでありがたいのが、携帯の音読機能である。アマゾンKindleでダウンロードした小説を聴きながら歩くことにした。

 家内などはあきれ果てた風情だが、小生が幼き頃は、「君の名は」など連続ラジオ小説が、毎日朗読でオンエアーされていたのだから、それもありではないか。ちょうど文学への造詣不足にひけ目を感じていた折でもあり、小説を聴きながら歩くことにした。それでKindleで主に著作権の切れた0円で手に入る小説を片っ端から聴いているというわけである。

 歩きながら聴くのだから気の散っていることも多く、限りなく浅い聞き方だが、それでも筋ぐらいは追える。というわけで、夏目漱石や森鴎外やトルストイやゾラなど、名だたる文豪の小説を読ませてもらっている。

 携帯には、歩数のアプリが入っていて、リアルタイムでフィードバックのもらうので、なおいっそう取組みに対する強迫観念がつのる。私はいらちだから、できるだけ早い時間帯に1万歩を達成したいという心理になる。なので朝早くからうろうろしたりして、歩くことが生活の中心とまでは言わなくとも、主要な部分になっていることはまちがいない。

 データの記録を取ることが必須となると、ちょっと動く時ですら、携帯を忘れないようにしなければならないことになる。二度ばかり、携帯を忘れて外出してしまったことがあったが、そのときは悲惨である。気分が限りなくブルーである上に、帰宅してから携帯を揺さぶって歩数を記録させなければならないからだ。携帯は振動を感じて歩数をカウントする。したがって携帯を意図的に振ると歩数を感知する。それにしても1万回携帯を前後に振るのは気の遠くなるような作業である。なんともこっけいな話である。

 正直に白状すると、この1年間に、1日1万歩に達しなかった時が4回あった。いずれも酔っ払って1万歩にあと少しの足らずを歩かなかったためであった。そのうちの2回は、あとたった100歩程度の不足であって、これは一日のうちで携帯を持たずに家の中をうろつくことが必ずあるから、実際には1万歩を超えていると自分で自分を容赦した。

 さらにもう一日は、酔っ払って寝てしまったのだが、12時過ぎにふと起きてそのことに気づき、宿泊先のホテルの廊下をうろうろして歩数を稼いだ。厳密に言えばアウトだが、本格的に眠りにつくまではその日だと考えてこれも1万歩を超えたものと自分に甘く認定した。

 あと1回だけは、ほんとうに寝てしまって数百歩足りなかった。痛恨である。連続記録というのは、双葉山の69連勝にせよ、イチローの69試合連続出塁にせよ、一度途切れてしまうとまた始めから仕切り直しとなるのでほんとに辛いものである。それだけに戦々兢々で臨まなければならぬ。

 さてアプリの記録を見ると、この1年間の一日当りの歩数は、11,576歩であるらしい。年間では4,121,164歩となる。距離に換算すると2,761kmとなり、これはおそらく日本列島縦断の距離に勝るのではないだろうか?そう考えるとあらためて日々の蓄積ってすごいまあと思うのである。

わが携帯の万歩計アプリの記録である

 おかげさまで、だいぶ足が強くなってきた気がする。けっこう走れるようになってきたからだ。取り組んでみてよかったと思う。これからも日々あれこれと工夫しながら、雨が降ろうと槍が降ろうと、毎日1万歩にチャレンジしていきたい。とてもtrivialなことだからかえって楽しいということもある。

 継続は力なりというけれど、人間の体力はこの年齢になると、秋の日のようにつるべ落としに落ちてくる。今この瞬間が一番若い。少しでも下降曲線を緩やかにし、健康寿命をできる限りのばし、老後他者にかけるであろう迷惑をできる限り減らし、楽しい余生をできる限り増やしたいものである。

会計事務所と経営コンサルティングの融合

御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所

小笠原でした。

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わたしはインデアン・カレーの大ファンである。