御堂筋税理士法人創業者ブログ

 『帳簿の世界史』という興味深い本がある。著者はジェイコブ・ソール。amazonでもなかなかの評価である。原題は、『The Reckoning: Financial Accountability and the Rise and Fall of Nations』、翻訳すると「帳簿記入:財務の説明責任と国家の盛衰」となる。

 なにが興味深いかというと、お金の出入りと残高をしっかりと記録していた国家や支配者は隆盛を誇り、そこから目を背けたり無視したりしたところは衰退したり破綻したりしているという結論である。

 私のような会計人でコンサルタントをしているものにとっては、まさに実感しているところとまったく合致しているので、大いに腑に落ちたし、再確信できたし、参考事例がいっぱいできた。熟れ熟れのデラウェアをひと房たっぷりと味わった感じである。

 隆盛の例は、アウグストゥス(ローマ初代皇帝)、ルネッサンス期トスカーナの商人、ダティーニ、フィレンツェのコジモ・デ・メディチ、世界の金融センターだったときのオランダ、ルイⅩⅣ世、陶器職人ウェッジウッド、アメリカ創世期のフランクリン、ジェファーソン達

 破綻の例が、スペインの太陽王フェリペⅡ世、断頭台に送られたルイⅩⅥ世などである。まあこの二人、一方は傲慢でいうことを聞かない、一方はおぼっちゃまのあほたれである。しかたないわな。必然の帰結であろう。ルイⅩⅣ世も晩年はこちらに落ちてしまった。

 成功例では、本人が数字に強く自分で記録しているか数字に強い財務担当者がいた。そして、為政者が財務担当者の説明とアドバイスに従っている。

 失敗例では、本人が数字が嫌いか、無視する。財務担当者のいうことを聞かないか、あるいはうざい担当者は当座ける、財務担当者は挙句の果て為政者のプレッシャーに負けて数字をごまかしていた。

 そして、その典型例は、再度いうが、わたしが直接体験したり、見聞きしている身の回りの会社の状況とまったく同じでなのである。

 こういうのを帰納的結論という。人間の判断のすべては帰納的結論が根底にあるから、それは納得できるのである。まさに帰納法おそるべしである。さて、経営者の皆さん、あなたはどうか?よーく考えてもらいたいのである。

 「『椅子から一度も立ち上がらずに仕事を終えた』とダティーニは語っている。ルールは単純明快だ-とにかくすべてを誠実に帳簿に記帳すること、まちがいなく集計すること、それだけである。もう一つ付け加えるなら、つねに心配し、つねに注意しなければならない。」

 そうなのである。損益計算書を見ていると、会社の活動がビビッドに把握できるのである。ビジネスモデルを理解しているとなおさらである。だから、必要な数字を見ていると経営ができるのである。また納得できるように数字の表し方を工夫しなければならないのである。経営者のもっとも大切なツールなのだから。

 「1395年にダティーニは妻に宛てた手紙の中で、仕事が忙しすぎて頭がおかしくなりそうだとこぼしている。不安がダティーニを仕事へと駆り立てた。そしてきちんと帳簿をつけることで、万事が秩序正しく保たれ、心の平安が得られた。ダティーニ商会のある支店の支配人は、この二年間安眠できたことがないとぼやきつつも、『温かいベッドでのんびりしたい』という連中を馬鹿にしている。」

 まったく同感である。わたしもそんなレベルまで行かないが、毎日いくつかの記録をしている。労働時間の記録は除くと、確定申告のために必要な事項の記録、支出の記録、クレジットなどの明細のチェックと仕訳、年間の家計費の予算とのバランス管理、ときどきの財産額の確認などである。こういうことをしておくとかなりの財務的把握ができ、したがって抑制が効く。わたしは私生活上は、大して倹約の精神もなく、むだ遣いも多いが、なんとか破綻せずに、収支均衡の私生活を送れているのはこのおかげだ。

 オランダでもイギリスでも、女性に帳簿記入を教え、家計管理が推奨されていたという。まったくその通りだろう。これぞ、House Keeping、良妻たるゆえんの一つとなろう。

 つまり、国家でも会社でも家庭でも、すべからくうまく経営していくためのはお金の管理は絶対に不可欠だということである。皆さん、これをこれ考思してくださいな。

 それゆえ、トップは会計的素養を身につけなければならないわけです。「会計の帳簿と記録の文化が、王の国政の中心業務にその後近づいていった。…帝王学教育は明らかに有益だが、それだけでは国家を効率的に運営できない。
“the notebook and archiving culture of accounting moved ever closer to the central practices of royal statecraft.
Humanist education was clearly useful, but it was not enough to run a state effectively.”」その通り!

 『本書でたどってきた数々の事例から何か学べることがあるとすれば、会計が文化の中に組み込まれていた社会は繁栄する、ということである。”If there is any historical lesson to be learned here, it is that those societies that managed to harness accounting as part of their general cultures flourished.”』

 同感である。それゆえ私たち会計人の職責は重く、それゆえにやりがいがある。社長や社員の皆さん、そしてご家族の皆さんが笑顔で生き生きとしていらっしゃる、そういう姿を眼前に浮かべ、日々精進しているのである。

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