詩経でぐぐっと来た詩
2022.07.18
経営者へのメッセージ
詩経は、書経、春秋、易経、礼記とならんで五経と言われる儒教の経典のひとつです。孔子が、「詩三百、一言以て之を蔽はば、思い邪なし」と論語で語った、中国の周代の歌集です。他の儒教の経典の中にも、多く引用され知らず知らずの内に、私たちも耳なじんだ言葉があちこちに散らばっています。いわば言葉の宝庫です。
さて、詩経は、国風と言われる民間の伝承詩、雅と言われる朝廷の正しい音楽、そして頌と言われる宗廟での音楽の3部に分かれていますが、さすが雅、その中でも大雅といわれる周王朝の正式式典歌は、荘重でいいですね。国風の婚礼歌なども素朴でいいですが、私は大雅が経営の格言となる言い回しも多く好きです。
ご紹介するのは『抑』。この詩は、詩経 大雅 蕩之什の中にあります。周の10代の王、若い暗愚の厲王に、諫言の志士、95歳の衛の武公が諫めたものとされています。衛の武公はそのような廉直の臣であったようです。いはば王の施政への警世の歌ですね。
大雅 蕩之什 『抑』
1
抑抑威儀、維德之隅。
人亦有言、靡哲不愚。
庶人之愚、亦職維疾。
哲人之愚、亦維斯宾。
2
無競維人、四方其訓之。
有覺德行、四國順之。
漠定命、遠猶辰告。
敬慎威儀、維民之則。
3
其在于今、興迷亂于政。
顛覆厥德、荒湛于酒。
女雖湛樂從、弗念厥紹。
周敷求先王、克共明刑。
4
肆皇天弗尚、如彼泉流、
無淪胥以亡。夙興夜寐、
油掃廷內、維民之章。
隋前車馬、弓矢兵。
用戒我作、用缝方。
5
質爾人民、謹爾侯度、
用戒不慎。慎爾出話、
敬爾威儀、無不柔嘉。
白主之站、尚可磨也。
斯言之站、不可為也。
6
無易由言、無日矣。
莫捫肤舌、言不可逝矣。
無言不離、無德不報。
惠于朋友、庶民小子、
子孫繩繩、萬民靡不承。
7
視爾友君子、輯柔爾顏、
不遐有愆。相在前室、
尚不魄于屋漏。無日不顯、
莫予云觀。神之格思、
不可度思、可射思。
8
辟爾為德、藏傳嘉。
淑慎爾止、不愆于儀。
不僭不賊、鮮不為則。
投我以桃 報之以李。
彼童而角、費虹小子。
9
往染柔木、言觸之絲。
溫溫恭人、維德之基。
其維哲人、告之話言、
順德之行。其維愚人、
覆謂我僭。民各有心。
10
於平小子、未知藏否。
匪手攜之、言示之事。
座面命之、言提其耳。
借白未知、亦既抱子。
民之靡盈、誰知而莫成。
11
昊天孔昭、我生靡樂。
視爾夢夢、我心慘慘。
海爾諄諄、聽我藐藐。
匪用為教、覆用為虐。
借日未知、亦丰既毫。
12
於乎小子、告前舊子。
聽用我謀、底無大悔。
天方艱難、日要瞭國。
取譬不遠、吴天不武。
回適其德、傅民大棘。
読み下し文や現代語訳は労力が要り、とてもここに書けませんが、中にいくつものなるほどという表現があり、すごく気に入りました。それを順々にご紹介しておきます。
1より
庶人の愚なるは、亦(また)職(しゅ)として維(こ)れ疾なり
哲人の愚なるは、亦維れ斯(こ)れ戾(つみ)なり
庶民の愚かさは、生まれつきの悪い癖でまあしょうがないが、
知恵の優れた人の愚かさは、故意に犯した罪である。
4より
夙(つと)に興(お)き夜(よは)に寐(い)ね
庭内を洒埽(さいそう)す
維れ民の章(のり)なり
上に立つ王は、朝早く起き、夜遅く寝て、寝廟の堂の下を掃き清めるものだ。
5より
白圭の玷(か)くるは、尚ほ磨くべし
斯の言の玷くるは、爲(をさ)むべからず
白い玉の欠けたものは、磨けばよいが、
言葉の至らぬものはどうにもならない。
6より
言を易(やす)んずる無かれ、苟(かりそめ)を曰ふ無かれ
朕(わ)が舌を捫(おさ)ふる莫(な)し 言逝(およ)ぶべからず
ことばを軽んじてはならない。でたらめを言ってはならない。
我が舌を押さえるものはいないが、一度口に出したことばはもとには戻らない。
8より
我に投ずるに桃を以てすれば、之に報ゆるに李を以てす。
自らがきちんと相手に接すれば、相手もきちんと自分に接してくれるはずである。
なかなかいい言葉だなあと思いました。
会計事務所と経営コンサルティングの融合
御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所
小笠原 でした。