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 詩経は、書経、春秋、易経、礼記とならんで五経と言われる儒教の経典のひとつです。孔子が、「詩三百、一言以て之を蔽はば、思い邪なし」と論語で語った、中国の周代の歌集です。他の儒教の経典の中にも、多く引用され知らず知らずの内に、私たちも耳なじんだ言葉があちこちに散らばっています。いわば言葉の宝庫です。

 さて、詩経は、国風と言われる民間の伝承詩、雅と言われる朝廷の正しい音楽、そして頌と言われる宗廟での音楽の3部に分かれていますが、さすが雅、その中でも大雅といわれる周王朝の正式式典歌は、荘重でいいですね。国風の婚礼歌なども素朴でいいですが、私は大雅が経営の格言となる言い回しも多く好きです。

 ご紹介するのは『抑』。この詩は、詩経 大雅 蕩之什の中にあります。周の10代の王、若い暗愚の厲王に、諫言の志士、95歳の衛の武公が諫めたものとされています。衛の武公はそのような廉直の臣であったようです。いはば王の施政への警世の歌ですね。

大雅 蕩之什 『抑』


抑抑威儀、維德之隅。
人亦有言、靡哲不愚。
庶人之愚、亦職維疾。
哲人之愚、亦維斯宾。

無競維人、四方其訓之。
有覺德行、四國順之。
漠定命、遠猶辰告。
敬慎威儀、維民之則。

其在于今、興迷亂于政。
顛覆厥德、荒湛于酒。
女雖湛樂從、弗念厥紹。
周敷求先王、克共明刑。

肆皇天弗尚、如彼泉流、
無淪胥以亡。夙興夜寐、
油掃廷內、維民之章。
隋前車馬、弓矢兵。
用戒我作、用缝方。

質爾人民、謹爾侯度、
用戒不慎。慎爾出話、
敬爾威儀、無不柔嘉。
白主之站、尚可磨也。
斯言之站、不可為也。

無易由言、無日矣。
莫捫肤舌、言不可逝矣。
無言不離、無德不報。
惠于朋友、庶民小子、
子孫繩繩、萬民靡不承。

視爾友君子、輯柔爾顏、
不遐有愆。相在前室、
尚不魄于屋漏。無日不顯、
莫予云觀。神之格思、
不可度思、可射思。

辟爾為德、藏傳嘉。
淑慎爾止、不愆于儀。
不僭不賊、鮮不為則。
投我以桃 報之以李。
彼童而角、費虹小子。

往染柔木、言觸之絲。
溫溫恭人、維德之基。
其維哲人、告之話言、
順德之行。其維愚人、
覆謂我僭。民各有心。
10
於平小子、未知藏否。
匪手攜之、言示之事。
座面命之、言提其耳。
借白未知、亦既抱子。
民之靡盈、誰知而莫成。
11
昊天孔昭、我生靡樂。
視爾夢夢、我心慘慘。
海爾諄諄、聽我藐藐。
匪用為教、覆用為虐。
借日未知、亦丰既毫。
12
於乎小子、告前舊子。
聽用我謀、底無大悔。
天方艱難、日要瞭國。
取譬不遠、吴天不武。
回適其德、傅民大棘。

 読み下し文や現代語訳は労力が要り、とてもここに書けませんが、中にいくつものなるほどという表現があり、すごく気に入りました。それを順々にご紹介しておきます。

1より
庶人の愚なるは、亦(また)職(しゅ)として維(こ)れ疾なり
哲人の愚なるは、亦維れ斯(こ)れ戾(つみ)なり

庶民の愚かさは、生まれつきの悪い癖でまあしょうがないが、
知恵の優れた人の愚かさは、故意に犯した罪である。

4より
夙(つと)に興(お)き夜(よは)に寐(い)ね
庭内を洒埽(さいそう)す
維れ民の章(のり)なり

上に立つ王は、朝早く起き、夜遅く寝て、寝廟の堂の下を掃き清めるものだ。

5より
白圭の玷(か)くるは、尚ほ磨くべし
斯の言の玷くるは、爲(をさ)むべからず

白い玉の欠けたものは、磨けばよいが、
言葉の至らぬものはどうにもならない。

6より
言を易(やす)んずる無かれ、苟(かりそめ)を曰ふ無かれ
朕(わ)が舌を捫(おさ)ふる莫(な)し 言逝(およ)ぶべからず

ことばを軽んじてはならない。でたらめを言ってはならない。
我が舌を押さえるものはいないが、一度口に出したことばはもとには戻らない。

8より
我に投ずるに桃を以てすれば、之に報ゆるに李を以てす。

自らがきちんと相手に接すれば、相手もきちんと自分に接してくれるはずである。

なかなかいい言葉だなあと思いました。

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小笠原 でした。

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