御堂筋税理士法人創業者ブログ

「祇園精舎の鐘の声、

    諸行無常の響あり。

    沙羅双樹の花の色、

    盛者必衰のことわりをあらはす。

 

    奢れる人も久しからず、

    唯春の夢のごとし。

    たけき者も遂にはほろびぬ。

    偏に風の前の塵に同じ。」

 

いうまでもない、有名な

平家物語の冒頭の語句です。

 

日本人のこころの中にある

ある種の感情が

呼び覚まされますねえ。

 

買うてきて十年間、積んでおいた

平家物語をやっと手にとりました。

 

(岩波文庫の『平家物語』)

 

登場人物の名前は数知れず。

子供のころから耳にしている英雄たちが

次から次に登場します。

 

そうですねえ、

西洋でいえば、ホメーロスの

トロイ攻めの『イーリアス』

それに比ぶる日本の物語。

 

どこかで耳にした名前、

平清盛、敦盛、薩摩守忠度、

重盛、維盛、資盛…

源頼朝、九郎判官義経、

梶原景時、那須与一、

そして、後白河法皇…

歌舞伎などでおなじみの名前が

次から次へと登場します。

そして、今回、やっと

ああそういう人なんだ、

そういうストーリーなんだと

わかりました。

 

これ、昔の貴族や

上級武士階級の子どもたちなら

乳母に読み聞かせてもらったり、

あるいは、

数え年七つともなれば

ポテトチップスでも頬張りながら

自分で読んでいたのでしょうか。

 

そんな少年少女のときに

読んでおきたい物語です。

 

それにしても

歴史のエポックメイキング

となったできごとを語る

作者のその語り口は

すばらしい冴えですねえ。

 

例えば、一の谷に敗れた

平家の西国落ちの場面

 

「いくさやぶりにければ、

    主上をはじめたてまって、

    人々みな御舟にめして出給ふ、

    心のうちこそ悲しけれ。

 

    塩にひかれ、風に順って

    紀伊路へおもむく舟もあり、

    葦屋の沖に漕出でて、

    浪にゆらるゝ舟もあり。

 

    或は須磨より明石のうらづたひ、

    泊定めぬ梶枕、

    かたしく袖もしをれつゝ、

    朧にかすむ春の月、

    心をくだかぬ人ぞなき。

 

    或は淡路のせとを漕とほり、

    絵島が磯にたゞよへば、

    波路かすかになきわたり、

    友まよはせるさ夜鴴(ちどり)、

    是も我身のたぐひかな。…」

 

すばらしい七五調の情景描写

そして心理描写です。

 

なんといってもハイライトは

壇ノ浦の合戦と安徳天皇の入水、

平家滅亡の場面。

 

「悲しき哉、

    無常の春の風、

    忽ちに花の御すがたを散らし、

    なさけなきかな、

    分段のあらき波、

    玉体を沈めたてまつる。

    殿をば長生と名づけて、

    ながきすみかと定め、

    門をば不老と号して、

    老いせぬとざしとかきたれども、

    いまだ十歳のうちにして、

    底のみくづとならせ給ふ。…」

 

無常観ただようことばのちりばめ様

ほんとうに、感情移入されてしまいます。

 

この作者、

どれくらいの漢籍の知識があるのかと、

驚嘆するほどの引用や喩え

あっけにとられます。

むかしの人の教養はすごい!

 

また、

美しく、心地よく、麗しい

日本語の響きとリズム。

やはり、七五調ですねえ。

 

それにしても、清盛

なんでこんなに馬鹿なんでしょうか。

自分の一族にしか興味がない。

それに負けずとも劣らない

頼朝の不寛容精神

そこに騎馬戦の騎馬武者のように

座を占める後白河上皇の面妖さ。

たまりません。

 

彼らに翻弄される

忠義の人たちの悲劇の数々

なんとかしてあげてよと

悲痛さで、読む側も表情がゆがみます。

 

一体、出家したり、

仏教に触れたりして

なにを学んでいるのかと

思ってしまいます。

 

民政不在と強制徴収され続ける

農民や庶民は

迷惑この上ないことですねえ。

 

こんな情景、

しかし今でも、

どこかの会社で目にします。

 

平安後期の

このアンニュイと堕落ぶり

貴族のおとこは

なにかあれば落涙、

そでを濡らすことしきり

日本人のなよなよしさは

ここに始まれりてな感じです。

 

さて、イギリスやフランス、

ドイツなどと同じくらいしか

歴史の長さを持たない

後進の国、日本

 

その歴史の中で

日本人の精神と心情の形成に

大きな影響を与えてきた書物で

これは読んでおかなければ

というものって

どんなのがあるんだろうと

Googleすると、

 

古事記、日本書紀を筆頭に、

あるはあるは・・・

万葉集、古今和歌集などの歌集

源氏物語、枕草子などの小説、エッセー

土佐日記に徒然草、

そして、この平家物語など。

 

もちろんその後も

鎌倉から、室町、そして江戸へ

禅の思想、儒学、国学、武士道と

わたし達の精神の断面に

順々に塗り重ねられた

思想の地層が続きますが。

 

(わたし的には

万葉のあのますらをぶり、

聖徳太子の国制整備

天智、天武の奮闘ぶりなど

とてもなつかしく、

すがすがしく感じますが)

 

こうした、古層の上に

順々に心情が塗り重ねられて

すなお、きまじめ、直情径行、

自然を大切にする、礼儀正しい、

諦め、論理性に欠けるなど

私たちの心根が

形づくられたのだなあなんて

思いを馳せながら

読ませてもらいました。

 

ぎょうさん外国の方々が

来られる時代、

コミュニケーションの機会も増えます。

そんな折、わが祖国と民族について

語れるようにしておきたいと

思っています。

 

経営コンサルティングと

会計事務所の融合

 

組織デザイン研究所&

御堂筋税理士法人

 

小笠原 でした。


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