御堂筋税理士法人創業者ブログ

わたしは、学生のころ

得意科目は地理であった。

マイナーですよねえ。

 

家内から、

アスペルガーだと

診断されているわたしであるが、

 

その脳みその特徴は、

・順を追った算数や論理思考に弱く、

・人の気持ちを察することに乏しく、

・単純な記憶に威力を発揮する

という、

いささか情けないものである。

 

こういう人間にとって

数少ない、うってつけの

勉強分野に地理がある(?)。

(それ以外に生物というのもあったなあ)

 

さて、その地理、

いったい、どこがおもろいというのか?…

首をかしげる方も多かろう。

 

日本中や世界中の

地域、地域を巡って、

 

気候帯によって分類したり、

植生、地勢の特徴や、

土地、土地の

風光明媚さ、奇観壮観、

人びとの習俗や暮らしぶり、

地場の産業、資源・名産、

農畜産物などなど…

 

いわば、行かずして

世界観光地めぐりをするわけである。

 

「へーっ、おもしろー、

行ってみたいなあ!」

てな感じである。

 

夢見がちで、好奇心に満ちた

少年にとっては

気をそそるものなのである。

 

わたしが鉄ちゃんで

旧国鉄の長距離急行に乗って

飽かず車窓を眺めるのが

無性に好きなのに通じる。

 

さて、前置きが長くなったが

ある本を読んでいたとき

やたら、ストラボンの『地誌』

からの引用がなされていた。

 

『ストラボン!?』

そういえば、

そんな名前の人いてはったなあ!と

なつかしく思い、

またしても、興味が湧いた。

これが、悪いくせである。

 

さっそく、アマゾンを覗くと…

!ありました!

 

龍渓書房というレアーな書店から

広島の研究者の方が翻訳された

2冊セット本が出版されていた。

 

(左はしがストラボン、

ちなみにこの写真はgoogleから拝借

m(_ _)m)

 

世界史で名前が出てくるほどの

地理学の祖といえる方の本が

日本語で読めるなんて!

 

さて、この本、上下巻で、

なんと1,500ページ。

たくさんの地図がついていて

その執念に驚かされる。

 

厚さ9㎝、重さ2.7㎏!

ハードなケース入りで

見事なほどおもしろい装丁である。

 

こだわりの書店の社長さんと

地方の研究者の、

お二人の思いと執念には驚嘆する。

感謝あるのみである。

 

これだけの労作に対して

求められる冊数は想像もつかないが、

コストを、買った人に

割振って分担してもらうと

それ相応のお値段となるのは

いたしかたあるまい。

 

ただし、中身は

高校の教科書と同じようなものだから

真剣に、分析的に読むといった

感じではない。

(私のような素人では

そのような

浅い読み方になってしまう)

 

したがって、

新幹線並みにぶっ飛ばして

ときには、車輪が

線路から浮き上がるぐらい

拍車をかけ、全力駆動し、

斜め読みし、字ずらを追い

ときには、空回りさえしながら、

時速100ページほどで読み進んだ。

それでも全部読むのに

5日程はかかったし、エネルギーも要った。

 

かんじんの内容だが

特に目を引くのは

都市の地点間の距離について

事細かに書いてあることである。

どこからどこまでは何キロほどあると

それは、執拗に書いてある。

 

きっとそういうことが

古代の読者にとっては

関心事で大事だったのだろう。

 

ギリシアやローマでは

距離は、スタディオンという単位で測り、

1スタディオン≒0.185キロメートルである。

それにしても、どうやって測ったのやろう?

 

読んでいると、どうも

長い縄でもって測量したようなことが

仄めかされている。

 

それにしても、ヨーロッパ人は

肉体的、気力的に寧猛だなあ。

すごい!

 

その上、

ギリシアやローマの

有名な、神話や歴史的出来事の

舞台については

逐一触れてくれていて

 

いままで、何べん読んでも

よくわからなかった

ギリシアや小アジアの各都市の所在地や

イタリアやイベリア地方のそれらが

すーっと頭に入ったのはよかった。

 

まさしく、

本の上での遺跡巡りである。

 

また、これはすごいと思ったのは

彼が、地球は丸いということを

うすうす気づいていたことである。

 

その半径、直系、円周も

ほぼ正確に推定している。

驚くべきことである。

 

それにしても、

その知見が、その後

埋もれてしまったのは

まことにもって、惜しいことである。

 

さらに、緯度や経度についても

かなり正確に認識している。

 

北回帰線、南回帰線、

温帯、寒帯、熱帯などの区分と

人間の居住可能性などについてである。

 

それはお日様の作る影が

大きな根拠となっているのである。

ここらあたり

彼らの知見はすごいなと思わされる。

 

ストラボンが生きた時代は

紀元前1世紀から後1世紀は、

カエサルからバトンを受けた

アウグストゥスの治世にまさに重なる。

偉大なローマ(パックス・ロマーナ)の

始まりの時期である。

 

それは、

英雄たちの時代が

人々の心の中で、

まだ湯気を立てていたころだ。

 

日本で言うと、

明治初期の人が、

江戸期や戦国時代を

ふり返るようなものだろう。

 

今から2000年前

ストラボンは、

3つの女性の名を

それぞれに冠した土地、

エウロペ(ヨーロッパ)、

アシア、リヴィア(アフリカ)の

3大陸、つまり全世界を

見渡し、踏破し、語りつくした。

 

その範囲は、西はヘラクレスの柱、

ジブラルタル海峡から

東は、インド、ガンジス川まで、

北は、ドニエプル、ドニエステル、ドン河から

南は、ナイルの源流、エチオピアまで

広きにわたる。

 

それは、当時の

ローマ帝国の版図と重なる。

それ以外の地は、境界の外側、

未知の野蛮人たち(Barbaroi)

の世界となる。

 

つまり、それほど

ローマ帝国は広かったのだ。

一介のティベレ河畔の丘にあった

都市国家がそれほど大きくなった。

まさに民族の偉業であった。

 

爾後、

さまざまな英雄たちが

それにチャレンジし、

世界史を飾った。

サラセン、チンギスハン、オスマン、

ナポレオン、スターリン、ヒトラー・・・

しかし、そのどれも

ローマ帝国の偉業の光彩には

足許にも及ばない。

(ただ一つ、大英帝国の

したたかな例外があるが)

 

そこに、私たちは

この民族の、偉大さ、

勇気、そして寛容を見る。

(ちなみにアウグストゥスの

キャッチ・フレーズは

『寛容』(tolerance)だった)

 

そこから、

現代に生きる私たちが

経営に活かす教訓は無数にある。

 

遠い時代の

人びとの活動や思索の

広さに思いを馳せつつ

この、長大な研究の書に

心からの崇敬の念を抱きつつ、

最後のページを閉じさせてもらった。

 

経営コンサルティングと

会計事務所の統合

 

組織デザイン研究所&

御堂筋税理士法人

小笠原 でした。

 

余談

 

さて、この手の本、

実は他にもある。

 

代表的なものが、

同時代の大プリニウスの

長大な作、『博物誌』である。

古代の人の、博物認識である。

 

もちろん、まだ踏ん切りはつかない。

勢いで、買ってしまうのが

恐ろしいのである。


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