ドラッカーの『マネジメント』超要約を作りました。理由は…
2021.05.10
読書と修養
御堂筋税理士法人の小笠原です。
金曜日は、毎月行なっている経営コンサルティング・チームの読書会でした。これは、私がセレクトした課題図書を読む前に、その内容を紹介するものです。その日取り上げた本は、『組織開発教科書』(W・ウォーナーバーク)でした。私がまとめた要約で解説しましたが、それでも50ページ以上あります。原本では540ページあります。
この本は、アメリカのMBAの教科書ですから、本来は半年、一年掛けて学ぶもの、それを1時間半でおさらいするのは、乱暴きわまりないですね。それで今、再度要約を見直して勉強しております(遅い!)。
組織開発とは、組織を活性化させる技法の分野です。まあコンサルタントには必須のスキルですねえ。解説は進めていきましたが、準備不足の読み込み不足で不出来、みんなに迷惑を掛けました。解説後、全員に感想を訊いたら、専門用語が多くて難しかったという意見が多かったです。たしかにせやなあと思いました。
さて、そんな中で T 君から、ドラッカーの『マネジメント』の全体像を教えてほしいというリクエストがありました。うーむ、要約かあ、わかったどこかでやりましょう!と約束してしまいました。
それで、さっそく今朝から本を引っ張り出して、まとめに取りかかったわけです。『マネジメント』は全3巻、彼自身も長いと言っているくらいです。それを1巻1ページでまとめようという魂胆です。
作業しつづけること3時間、やっとまとめ、さっそく、Teamsでメンバーに送りました。T君から?が来ました。さて下の図は、超要約の要約です。まあご覧ください。
まず前置きがありまして、その後3部構成となっております。第一にマネジメントですること、その次にマネジメントの方法、最後にマネジメントの戦略で考えるべきことです。ここまで圧縮すると1,060ページの本も、全貌を捉えられますねえ。勉強になりました。
このあと、そのまとめをご覧入れます。参考になればうれしいのですが。しかし、この本、今回はななめ読みですが、何度読んでも、その時の問題意識に当りますね。すごいと思います。もっともっとじっくりと読んで、著者の真意を理解しなければならないのでしょう。
ドラッカー『マネジメント』の超要約
Ⅰ マネジメントの役割
(1) 企業の成果 組織に特有の目的とミッションを果たす→経済的成果をあげ、永続する
企業の目的→顧客の創造 利潤は必要条件にすぎない
企業のもつ起業家的な機能 マーケティングとイノベーション
・ マーケティング…顧客から見たわが社→会社に浸透させる
・ イノベーション…変化が常態の中で、経済的価値を追求する
管理的職能としての生産性 利益は必要
目的とミッション 明確な定義が目標→戦略→計画を可能にする
5つの質問→事業は何か、顧客は誰か、顧客の価値は何か、われわれの事業は何か、何であるべきか
目標 8つの目標…マーケティング・イノベーション・経営資源・生産性・社会責任・利益
戦略計画 目標設定→昨日の廃棄→新方法開発→スタート時期
(2) 仕事を生産的にし、働く人に成果をあげさせる
背景;肉体労働→知識労働、重要なこと;仕事と労働とはちがう
① 仕事を生産的なものにする 分析→統合→管理手段の組み込み
生産のパターン→個別、リジッド大量、フレキシブル大量、連続→それぞれでポイントがちがう
管理手段→ 定型と例外、パターン識別と定型化、基準設定、管理システム構築
ツール→ツールは簡単がよい、ツールに人が使われてはならない
② 働く人と働くことのマネジメント アメとムチから新たな方法へ
労働の諸側面 生理的、心理的、社会的、経済的、権力的、分配的→これらは混在する
ⅰ 責任の組織化 仕事を生産的に、フィードバック情報、生涯学習→参画、権限、LS機会
ⅱ 雇用の保障と所得の安定
ⅲ 人が資源である 資源として見る→強みを活かす
(3) 社会に与えるインパクトの処理と社会への貢献(省略)
Ⅱ マネジメントの方法
企業は一定以上の大きさになるとマネジメントという骨格が必要になる
(1) マネジメントの仕事
・ 課題 ① 全体成果>部分総和(強み発揮、弱み消去)、② 今要るものと、将来要るもののバランス
・ 5つの仕事 ① 目標設定、② 組織する、③ チームづくり、④ 評価、⑤ 自らを含めた人材育成
・ 仕事の設計 視点の考察 → ① 本来機能、② 期待貢献、③ 上下横の関係、④ 必要情報
・ マネジメント教育 考察 → ① 明日のわが社に必要なマネジメントの開発、② マネジメント教育
※ マネジメント教育では共同評価とキャリアプラン、経験が必要、上司は手本を示し成長に手を貸す
・ 目標管理 陥りがちな罠の考察 → 貢献からの目標設定、組織と個人の統合を齎す『哲学』
・ 成果中心の精神 きびしく真摯さを求める、それは人事に表れるが人間的配慮も要る
(2) マネジメントのスキル
① 意思決定 問題の理解、反対意見、複数の解決案、意思決定の必要性、妥協、担当、検証
② コミュニケーション 性質;知覚、期待、要求、非情報 → 双方向性、経験の共有、組織のあり方である
③ 管理手段 特徴;非客観性、成果に焦点、非定量も → 有効性の7条件 → 真の手段は人事
④ 分析 前提;人間システム、社会内存在、財務評価、リスク → 条件;意思決定に有用、期待と成果、共有
→ 求めること;前提検証、問題の明確化、複数の案、問題理解
(3) マネジメントの組織 組織は戦略と環境に従う
・ 学んだこと → 組織は設計すべき、まず基本単位を設計、組織は戦略に従う
・ 3種類の活動 既存事業の活動、トップマネジメントの活動、イノベーションの活動
① 組織の基本単位設計
4つの視点;ⅰ基本単位、ⅱ統合・分離の基準、大きさと形、ⅲ位置づけ、ⅳ関係づけ
ⅰ 基本単位 活動分析 → 視点;卓越性が必要な分野、深刻な打撃となる分野、わが社にとって重要な価値
ⅱ 統合・分離基準 貢献分析 → 成果活動(直接、貢献、情報供給)、
インプット活動(良識、助言、法務)、 家事活動、トップ活動
ⅲ 位置づけ 決定分析 → 影響時間、影響範囲、定性要因(価値と人事)、繰り返し性
→ 決定は、可能な限り低いレベル、十分なほどに高いレベルで行なう
ⅳ 関係づけ 関係分析 → 活動間の関係を最小限に絞る
→ 悪い組織;階層が多い、問題頻発、瑣末時に捕われる、大会議、調整役など
② 組織の設計原理と組織の仕様
・5つの組織設計原理…職能別、事業部制、チーム、擬似分権型、システム型
職能別組織と事業部制の利点と効果的な場合の理解がたいせつ
・ 要件 明晰さ、経済性、方向づけ、理解容易さ、意思決定容易さ、安定性・適応性、
永続性・自己革新容易性
・ 仕事中心の組織(職能別・チーム) 仕事の組織化 → 段階別、スキル別、チーム
※ チーム型は、トップチームや知識労働で効果を発揮する
・ 成果中心の組織(事業部制・擬似分権型)
・ 結論;設計原理から理想とする組織の検討→複雑な状況をそのまま精査→妥協・譲歩・例外→シンプルに
Ⅲ マネジメントの戦略(欧米型取締役会の項は除外)
(1) トップマネジメントの仕事と組織
・ トップ特有の仕事がある、トップ独自の組織構造が要る、独自の補佐機関が要る
① トップマネジメントの仕事
・ ミッションを考える、基準設定、組織づくりと維持、組織設計、生涯、儀礼、危機リード…
・ 原則 他人ができることはしない、現業からは手を引く(原則)
・ チームの必要性 仕事の多様性が求める人間像;思考する、行動する、人間的人間、代表する人間
・ 小企業 課題担当、目的・目標、締め切りの工程表が要る
② トップマネジメントの構造
・ チームのルール 各自が担当分野の最終決定権をもつ、批判し合わない、
キャプテン=リーダーの役割、コミュニケーション
・ 補佐機関 企画部門の必要性、トップには刺激と情報が必要
(2) 規模のマネジメント…規模、複雑さ
・ 規模がちがえば、指数的に複雑さを増し、構造、政策、戦略、管理、行動がちがってきて、
内部にエネルギーを消費する
① 小企業…大企業以上の組織的かつ体系的なマネジメントが必要
ⅰニッチNo1戦略、ⅱ トップチームの役割組織化、ⅲ 情報の整備
※ 小企業トップ特有の仕事;
社内の主要人間との接触(強みは彼らの考えを知りうること)、社外との接触
② 中企業…タイプ別に問題
ⅰ単一技術市場型、ⅱ複数製品市場を持ち類似特性あり、ⅲ複数事業が相互関係
肥満を避け集中 → 成功基盤分野の確保、それ以外の分野の抑制と禁欲
③ 大企業…明晰な公式組織、事業部制、幹部育成、小企業に手を出さない、外部の血の導入
・ 規模のマネジメント 不適切な徴候があれば、事業転換、M&A、売却と整理で
適切規模に移行する
(3) 戦略のマネジメント…多角化、同族企業、グローバル化、変化と成長、イノベーション
① 多角化
集中が何よりだが誘因がある。多角化では共通市場または技術で統合多角化し
一体性を保つしかない
・ 内的誘因…心理欲求、規模の不適切さ、コストセンターの収益化
・ 外的誘因…経済規模、市場の力学、技術の力学、税制、求人市場
・ 多角化の核…市場→顧客の認知とストーリー性、製品→具体性、卓越性、中核性、
戦略性、マーケティング
・ 無効な多角化…周期合わせ、財務的知恵、有効な多角化…強み伝い、体質一致
・ 多角化の方法…自力開発、買収、分離、合弁
② グローバル化(省略) 成功しているものはすべて単一市場、単一技術である
③ 成長のマネジメント
・ 成長そのものは目標たりえない、よい企業になることが正しい目標であり、
成長は結果である。
・ 成長が必要なとき…放置すれば衰退する場合、成長が生存条件…
・ 成長の準備…継続学習、財務的下支え、トップの思想
④ イノベーションのマネジメント
・ イノベーションの意味 科学や技術ではなく経済価値である。
・ イノベーションの力学 確率→GAP探索、インパクト未顕現の変化、認識・
ビジョン変化、企業家の企み
・ 重要事…既存廃棄・高い目標・評価法&予算、多くのアイデアと識別、中止基準、
トップのコミット、別組織
以上です。
しかし、どれも本質洞察ですね。かれこれ30年ほど拝読していますが、いまだにわからないことが多いです。すごいですねえ。
会計事務所と経営コンサルティングの融合
御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所
小笠原でした。