中小企業で実践するドラッカー経営-⑬ 戦略課題を具体化する
2024.02.18
コンサルティング
「ドラッカー経営を中小企業で実践する
第13回 戦略課題を具体化する
要約
1 経営計画の基は戦略課題であり、それはマーケティングとイノベーション、生産性の向上、そして人材の確保と育成を中心とする
2 戦略課題は活動に具体化されなければ意味がない
3 戦略課題の推進は『目標管理シート』で進める
プロローグ
ドラッカーは経営計画の重要性を説いていますが、その手順は、事業の定義→事業の目的とミッション→事業の分析→戦略計画→経営計画→仕事の具体化というものです。彼は、「最高の戦略計画であっても、仕事に具体化されなければ、よき意図にすぎない。」と述べています。つまり計画を仕事として具体化することが決定的に重要になのです。ではどのようにしていけばよいのか、それが今回のテーマです。
1 戦略課題とは何か?
まず、そもそも戦略課題とはどのようなものでしょうか?彼は「企業の目的は顧客の創造である」と断言しています。それはお客様がいいなと思うものを生み出し販売していくことです。特に経営資源に乏しい中小企業では戦略が大事で、それはある特定の分野(ニッチ)でナンバー1になる方策だと述べています。
そのために大事なことは、マーケティングとイノベーション、生産性を高めること、そして人材の確保と育成です。さらに、独自ノウハウの生成、ブランディング(知名度を上げること)、マネジメントのしくみを作ることでしょう。これらが戦略課題であると私は思います。
2 戦略課題の重要性と具体化の必要性
ものごとは木と同じように、根や幹がしっかりしてこそ、葉が繁り成長していきます。つまり「元立って末明らか」なのです。その元が、基本方針つまり戦略計画ではないでしょうか?経営は水に流される木の葉のようであってはなりません。その日暮らしを脱却して堂々と事業を営んで行こうとするならば、ぶれることのない方向性が必要です。
しかし以前にも述べたように、多くの中小企業では、戦略的経営計画もなければ、ましてそれに基づいた意図的な行動もなされていません。それでは、自らの願い、意図を実現していくことはできません。あなたもまさか食べていけさえすればよいとは思っていないはずです。いい会社にして、自分も社員もやりがいを持ち安心して暮らしていけるようにしたいと考えているのではないでしょうか?
ですが、いくら戦略計画がだいじでも、それが今の行動に具体化されなければなりません。そうでなければただ願いや羨望があるだけです。もちろんそれは夢の実現への出発点ですが、しかしすべての成功者たちは、水鳥のように水面下で必死に水を搔いているものです。計画とは未来の実現のためになされるものですが、しかしそれは今現在何をしていくかの活動を伴わなければなりません。
仕事には、今日食べるためにしなければならないことと、将来のために今することの2つがあります。足下で利益を出すことは喫緊の課題ですから、意図して行動をしない限り、将来のための活動は後回しになり、下手をすると放置されます。しかしどんなに今の仕事をこなすのに忙しくても、将来のための布石を打って行かなければなりたい姿には近づけませんし、世の中の変化を先取りしていくこともできません。
ここに、戦略課題を具体化していくことの必要性があります。
3 戦略課題は『目標管理シート』で進める
では、どのようにして戦略課題を具体化し、今の活動に落とし込んでいけばいいのでしょうか?わたしはドラッカーが、マネジメントの哲学だと述べている『目標管理』を活用すべきだと思っています。
目標管理とは、幹部がトップとのコミュニケーションにより自らの戦略課題を具体化し、推進していく方法です。それは会社の方向性と担当する本人のベクトルを合わせ、トップと幹部が1on1を通じてしっかりと推進していくためのツールです。私は独自に『目標管理シート』というものを作り、わが社で、そして広くお客さんにも使ってもらっています(図表参照)。
この目標管理シートは半年単位での戦略課題を具体化した上で月別での活動の管理を意図しています。毎月このシートに向き合うことにより、計画・実行・評価・見直しというPDCAのサイクルがしっかりと回り、着実に課題への取組みが進められるようになります。
永年実践して感じることは、このシートを使うと、課題の実現への道すじがはっきりとし、共有でき、そして思考力と実行力が高まっていくということです。目標管理シートでのふりかえりや会議での発表がしっかりとできるようになれば、安心して戦略計画の実行を見守っていけるようになります。
このシートは弊社のHPからダウンロードできますのでぜひご活用ください。
以上