御堂筋税理士法人創業者ブログ

帝国データバンクさんでの連載記事のおすそ分けシリーズ第5回です。

「ドラッカー経営を中小企業で実践する
第5回 中小企業経営のポイントその3 ― 経営者・幹部がマネジメントの仕事をする」

要約
1 経営者・幹部の仕事はマネジメントであり、それでこそ会社の業績が挙がる
2 マネジメントでは、人数の和を超える成果を出させ、目先と将来の二兎を追いかけねばならない
3 マネジメントの仕事は、計画、組織づくり、指揮、統制、人材育成の5つである

1.プロローグ
  前回までで、経営に必要なニッチNo1戦略と経営の数字による見える化の意義を説明しました。今回はその設計図とものさしを使って、経営者・幹部が何をしていかなければならないかを説明します。

2.経営者・幹部の仕事はマネジメントである
  マネジメントという言葉には、マネジメントをする人という意味もあります。したがって当たり前ですが、経営者・幹部の仕事はマネジメントをすることです。マネジメントとは、人を束ねてある仕事を上手に進め、成果を出すことだといえます。
  中小企業では、経営者といえども実務の仕事を担当していることが大半ではないでしょうか?しかし、経営者・幹部が営業や生産の担当としていわゆるオペレーションに埋没してしまい、マネジメントの仕事をほったらかしにしていては成果は期待できません。経営者は監督であり、幹部はコーチです。せめて社長は80%以上監督専任であり、コーチはせめて20%はコーチ兼任であらねばなりません。これがドラッカーの教えです。

3.マネジメントの仕事の要諦(※)
  ドラッカーは、マネジメントの仕事の要諦として、次の2つのことを述べています。

第一に、メンバーの一人ひとりの力を合わせて、人数の単なる合計力を超えた成果を出させるということです。つまり1+1>2にするのです。オーケストラの指揮者、団体スポーツの監督と同じです。これは、物質の世界ではありえない、ただ精神の世界でのみなせることだと述べています。まさしくそのとおりでしょう。

 第二に、短期の課題(目先の業績)と長期の課題(戦略的課題)のバランスのとれた取組みが必要だということです。人間の目はカメレオンのように左右別々のものを見るような器用なことはできません。また一度に一つのことしかできません。だからこれはアクロバットのように難しいことだといっています。
私は、彼のこの言の真意はわれわれに長期の課題への取り組みを忘れてはならないということを理解させることだと理解しています。

 わが社を永続する高業績企業にしていくための本質的な課題は、マーケティングにせよ、イノベーションにせよ、生産性の向上にせよ、人材の育成にせよ、すべて5年、10年という長い時間のかかる仕事だからです。
長期の課題に対する正しい取り組みの姿勢はただひとつ、今取り組むことなのです。それを明日すりゃいいやと考えるぐーたらな経営者が率いる会社には、決して栄冠は授けられません。
 ※ 要諦(ようてい)とは非常に大事なポイントのことをいいます。

4.マネジメントの5つの仕事
 さて、下の表に示すように具体的なマネジメントの仕事は5つあります。計画を立てる、組織を整備する、指揮(人のマネジメント)、統制(業績のマネジメント)そして人材育成です。
 経営の骨格は、目標を定め経営計画を中心として、社員を束ねて成果へとリードしていくということにあります。先の5つの仕事はこうしたストーリーに則っています。
 これらの中で、計画を立てることや指揮、統制は比較的取り組まれているように思いますが、組織の整備と人材育成については全般的に見てかなり遅れているように感じます。
 組織を整備するとは、具体的に社員の身分制度をしっかりと定め、それにしたがって地位や報酬の処遇をするということ、組織の単位と各部門の仕事をきちんと決め、それらに基づいてしっかりとした組織図を作り、それらに基づいて経営を進めるということです。そして人・金・事業の決定についての決裁の権限とコミュニケーションのしくみをきちんと決めるということです。どうも創業社長はこうしたことが苦手のようです。
 人材の育成とは、事業の永続と避けて通れない世代の交代をしっかりと見据え、経営人材、即戦力、新卒の採用、発掘、育成のしくみを作り、しかけを行なっていくことです。そのためには、人材育成をわが社の主要な戦略課題と位置づけ、OJTのしくみを作り、管理者を訓練し、年間計画を立てて育成を進めていくことが必要です。
人が育てばいい会社になるというのは理の当然でなのですが、いい会社になれば人が集まるということと、いい会社にするには人を育てなければならないという、鶏が先か卵が先かの問題で経営者は頭を悩ませるのです。しかし結論は両方を追わなければならないということです。
 よい会社にするには、経営の理念を確立し、高業績企業にしていかなければなりません。人材の採用と育成を最重要課題の一つとして位置づけて経営に取り組まなければなりません。そして経営者自らが明日の経営幹部を手、幹部が若手を手塩にかけて育てていかなければなりません。そのためには時間もお金も必要です。時間の10%、育成費用は1人当たり年間20万円はかけたいものです。経営者の覚悟が必要なのです。

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