御堂筋税理士法人創業者ブログ

帝国データバンクさんの会報誌に連載している記事のおすそ分けです。

「ドラッカー経営を中小企業で実践する
第4回 中小企業経営のポイントその2 ― 経営を数字で見える化する」

要約
1 経営に必要な情報は月次決算の数字ではなく、経営の活動と成果の関係の見える化にある
2 そのための資料が『経営のコックピット』である
3 経営のコックピットでは、いちばん上に損益計算書を示し、常に決算予測を入れ、その下に営業活動や生産活動などの活動と成果の数字を示し、経営の全体像を数字で表わす

1.プロローグ
 前回は、経営を数字で見える化することについて、まず月次決算の工夫、そして月次決算だけでは不十分であることを述べました。今回は、では何が求められているのかをお話したいと思います。

2 経営を数字で見える化する具体ツール
 経営を数字で見える化するために私が作った資料が、次に示す『経営のコックピット』です。

 経営のコックピットは、その会社のさまざまな活動について、その活動と成果を端的に示す指標をもれなく体系的に表わした数値資料です。
 経営のコックピットでは、横方向に月ごとの業績や活動の数字を入れ1年間の推移がわかるようにします。そして、右の方にその月までの累計値、さらに決算の予測値の欄を作ります。
 縦方向では、いちばん上に損益計算書を示します。次に営業活動や生産活動、さらに商流や物流あるいは開発などさまざまな活動について、活動→成果にいたる指標を下から上に示します。最後に人員の状況、財務の状況に関する指標を示します。
 このようにコックピットの縦の項目配置は、図のように下から上に向かって経営の活動→成果の流れを示します。それが図の上向きの矢印の意味です。経営では、まず社員の仕事ぶりがあって、活動量と活動の質で成果が決まります。野球にたとえると、活動量は打席に立つ回数であり、活動の質は打率です。営業活動を例にとると、活動は、訪問→提案→見積り→受注率→受注という流れになります。この流れの数字をコックピットで下から上へと示します。
受注活動の量と成果(受注金額の残高など)が近い将来の売上と利益になります。図の左下から右上への斜め向きの矢印はそれを示しています。
 

 損益計算書では、左から右へ業績の月別推移を示します。図の左から右への矢印です。さて損益計算書を作る上で決定的に重要なことは、今月以降の業績を予測して、常に決算予測をするということです。
決算予測型の月次決算をするわけです。私はこれを『儲けのカーナビ』と呼んでいます。カーナビでは常に到着予測時刻が示されます。ドライバーは、その情報により、道すじを選択しスピードを調節しつつ運転していきます。経営も同じです。
 「過去と他人は変えられない、変えれるのは未来の自分の行動だけである」とはよく言われることですが、まさにそのとおりです。月次決算はどんなに早く出しても、しょせん結果です。車の運転でいうとバックミラーで見る風景です。結果は確認するためのものであり、今さら数字を書き換えるわけには行きません。
バックミラーを見ているだけでは車の運転はできません。ある経営学者は、「どんなにどしゃぶりでも前を見て運転しよう!」と述べています。けだしそのとおりです。
 もちろん、業種、ビジネス・モデルによって予測精度はまちまちです。しかしながら予測の質は企業の営業の業務の質を示します。私の経験では、予測できればできるほど目標達成が容易になっていきます。ですからまず売上予測ができる情報のしくみを作っていきます。
 コックピットによって、経営者・幹部は自社のビジネス・モデル、ビジネス・プロセス、管理ポイントをつかんで行きます。したがって、コックピットは何年もかけて会議でたゆまずブラッシュ・アップしていくものです。それにより、よりシャープに経営のかんどころをつかんでいくことができるのです。

 私の経験では、皆さんが、コックピットにより、経営の全体像、活動と成果の関係性、異常点、ボトルネック、機会がよくわかればわかるほど、ビジネスの解像度と納得性が高まり、必然的に会社は高業績化していきます。人は変なところがわかれば、必ず手を打つものだからです。マラソンやダイエットの場合と同じです。
 

 皆さんも、ぜひ一度コックピットづくりにチャレンジしてみてください。なお、コックピットのひな型と事例は、弊社のHPのトップページの一番下、各種フォーマットのダウンロードからアクセスして、自由にお持ち帰りください。

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