女性の活躍をねがって
2020.10.10
事務所のこと
弊社々員の40%は女性である。役員・管理者でも女性が活躍している。昨今のグローバルでのビジネスや政治の世界での女性の活躍が喧伝される中、弊社も決して遅れをとってはいないと自負している。
しかし、小生が開業して10年ほどは決してそれで良しとはしていなかったと告白しておかなければならない。
優秀な人材が相次いで入社してくれたのは、開業後5年を過ぎたころからだ。今は代表社員(ふつうの会社でいう代表取締役)を務めてくれている才木と松本はそれらの一員である。
こうして、弊社の幹部の陣容が整った。男性が小生と才木、女性が松本など3名であった。実に女性の方が多かったのだ。
女性と男性では組織と職場に対する帰属意識、コミットメントのありようが異なるように当時わたしは感じていた。それはわたしが男だからかもしれない。正直にいうと、多少物足りない?それがわたしには少しばかりさみしく感じられたものだ。ご指導をいただいていた宮本嘉興先生にも、ほんのちょっとそういう心情を吐露したこともあった。
女性には、結婚ののち、家庭を築き、出産、子育てという大事なイベントがある。男のようにのうてんきに仕事に没頭というわけにはいかない(本当はそれではダメなのかもしれないが)。仕事面での要求をどこまでなしえるか、多少その手加減が測りかねた。それがちょっとばかりストレスにもなった。
ときどきお話をするが、わたしの実家は小さなすし屋を経営していた。すし屋は母の実家の稼業なので、父が生きていたころでさえ、母が社長のような感じであった。そういうわけで、わたしは生まれてからずっと母親が仕事をしている姿を見て育ってきたので、女性が仕事をもっているのは当然という感覚なのであった。
長じて結婚した相手も教師をしていたので、自然に共稼ぎになった。仕事と家事の両立は家内にとってたいへんだったろうが、不満もいわず頑張っていた。わたしは決して協力的な夫というわけではないが、多少の家事分担はしていた。
わりと残業の少ない公務員でさえ女性への労働負担は加重されるのだから、まして民間のビジネスではさらに負担が増す。いよいよ男性は家事分担への協力の度合いを増していかねばなるまい。
今日のような世界情勢と日本の人口動向では、ますます日本社会では女性のフルタイムでの就労が要請される。そのためには、さまざまな面から女性が働きやすくする環境を創っていかねばならない。さいわい菅政権ではそうした変革への意志も感じられる。
われわれ男性の意識変革、税制面・社会保険面での専業主婦優遇という致命的な愚策(とわたしは考えている)の是正、子育て支援などなど取り組むべきことは多い。わたしもそうだったが、男性が幼児をケアして、保育所の送り迎えなどをする姿を見るのはほほえましい。
さて、最近、女性に関する興味深い本を何冊か読ませていただいた。フェイスブックのCOO、シェリル・サンドバーグの『リーン・イン』(一歩を踏み出すという意味)、『女性脳の特性と行動 ──深層心理のメカニズム 』という心理学の本で、ローアン・ブリゼンティーンという医師が書いたもの、さらに『うそつきたち、恋人たち、ヒーローたち』というディープラーニングの大家、セーノフスキーという人が書いた脳科学の本である。
サンドバーグはわたしより10歳ほど年下だが、彼女の小さい頃のアメリカ社会の女性が働くことに対する意識、主として男性社会がそれを形づくっているそれは驚くほど、わたしが子供の頃知覚していた日本のそれと近しい。そんな中で彼女のようなたぐいまれな才能ある女性が切り開いてきたキャリア、その体験とそのなかで感じてきた印象はとても貴重なもので、多くのことをわれわれ男性に教えてくれる。
またブリゼンティーンの本は、女性の感じ方、意識、行動の特性(男性のそれとのちがいから)を従来のおもしろおかしく式で書いたものではなく、脳科学の面から、主にホルモンの作用を通じて科学的に教えてくれる。「あるあるある!」「そうそうそう!」「ブフッ(笑)」とおもわず叫んでしまう数多くのエピソードについて、その理由を説得力豊かに語られる。すべての男性が感じる女性のどうしても理解できない性癖、行動について慈しみとやさしさをもって理解することにすこぶる役立とう。
こうした、理解を通じてこれからさらに到来する、男女の共同参画社会がより実り多くなるように期待したい。
さて、さらに大いなる気づきをもらったのが、『うそつきたち、恋人たち、ヒーローたち』という、これも脳科学の本である。そのなかで、類人猿の研究に関連して、チンパンジーの社会とボノボの社会の比較についての記述が目を惹いた。
チンパンジーとボノボはとても近接した種とのことで、チンパンジーはコンゴ川の北側、ボノボは南側に生息しているらしい。チンパンジーは男社会で、そのために権力争い、仲間殺しが多発する。一方、ボノボは女性中心の社会で、群れの結束がつよく平和な社会らしい。なんとも示唆に富んだ事実である。
ここから、推測されることは明白である。人間社会はほとんどが男性中心社会である。周知のように、戦争や殺人が絶えない。女性が政治のリーダーになったとて、国家間の対立構造はなかなか解消しないかもしれないが、しかし女性が政治的リーダーシップを執ることにおける可能性を考えさせるものだとわたしは感じた。
女性の仲間をたいせつにするという面で男性を凌駕するその性質は、将来によい恵みをもたらすものと期待したい。
最近、女性の活躍という目で、わたしのお客様の人員構成を見たとき、あまりにもお寒い状況に慄然とせざるをえない。経営会議における女性メンバーの存在は、多くの組織でほぼ0である。これから、意識的に女性に活躍の場を与えるにしても、その実現は優に10年はかかる事業である。道は遠いのである。しかし、一歩一歩進んでいかなければならない。女性の活躍なくして明日のわが社は存立しえないと経営者には確信してもらいたい。
わて、わたしどもの組織も、さらに女性の活躍しやすい組織をめざし、力強く歩を進めたいと願っている。活躍したいと願っている女性を誘引するような会社をめざして。
会計事務所と経営コンサルティングの融合
御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所
小笠原でした。