御堂筋税理士法人創業者ブログ

以前にも少しご紹介した、
ヒルティの幸福論(岩波文庫全3巻)をやっと読了した。

ヒルティは19世紀後半のスイスの法律家、思想家で政治にも携わった人である。
その趣きは、品格と原則に基づいたキリスト教の倫理を体現しておられるように思う。

この本は、本文はさほどむずかしくもないが
膨大な注釈が、わたしのような浅学者には負担となる。
それも、ほとんどが新旧の聖書からの根拠づけである。
本来なら、聖書を横においてページを繰りながら
じっくりとキリスト教の教えを学ぶテキストとして使うべきものかもしれない。
(それだと数ヶ月没頭するだけの時間が必要だろう)
(それだけに聖書はこう読むということの大変な学びになる)

幸福を得るために彼が主張する心構えは次の3つである。
1.地上を越えた、超越的な倫理体系をこころに持つこと
 (つまり神の意図を自分の人生の道しるべとすべきこと)
2.それにつながって、よき仕事を持つこと
3.人生に不幸はつきものだと、こころに準備をしておくこと

結論からいえば、もっともだと思った。
特に、彼の考え方の全ベースとなっているキリスト教への信仰について
大変勉強になったし、そこまでいわれると
なるほどそうだなとシンパシーを持たざるを得ない。

人生における自己の生き方、起きる出来事に対する受け止め方に
自己を超越した、永遠の神の相というものさしをおくと
不思議なくらいこころが落ち着くことは、
たとえわずかの体験実験でも実感されるところだ。

彼は、友情(友愛)こそ至高の心根だというが
この博愛的な感情は、反対にもっとも人間の敵である
虚栄心と果てしない欲望と対極をなすものだ。
まさにこの2つを足して、利己主義という。
そしてそれがわたしにとって最大の根源的ながんである。

キリストが十字架にかけられながら
彼をあやめる者たちに対してこころからの赦しを神に祈るのは
その感情の究極のものだ。

キリスト教は、哲学ではない、信仰を要求する宗教である。
それは、キリストの死と復活という歴史的事実に基づく。
そこから神の実在を確信することができるというのが
ヒルティのキリスト教を唯一のこころのよりどころとすべきだという論旨である。

それを信じることは、思索ではない。
意志により飛び込むことであり、そこでの経験に基づくものであると。
そして飛び込んだものが必ず体験するのが神の恩寵である。

人は人生の安寧を求めるに
あまたの賢人が苦しみ、考え、提唱するいくつかの方法論がある。
仏教もそうだし、西洋哲学もそうだ。
哲学も、神と科学をわけるカントの考え方や
その後の無神論、厭世主義、実存主義などさまざまな流派があるわけだが
そのひとつとしてわれわれに最終の納得感を提供し得ないという。

深く考えさせられた著作である。
注釈をすっとばして本文だけをお読みになってもよいのではないかと思おう。
チャレンジしてみようという方はぜひどうぞ。

なお、魂を揺さぶってやまない珠玉の表現が
この本にはそこかしこにちりばめられているが
最後に述べておられる老年期についての考察は
とてもすばらしく思ったので、後日ご紹介したい。

ということで、不謹慎だが
いずれにせよ、これでやっとまた
次の本に取りかかれることができる。
どれにしようかな?
とりあえず、森信三先生が奨めてくださる
モンテーユを本棚から取り出したところである・・・

コンサルティングに強い経営エンジン研究所 税理士法人小笠原事務所
大阪 小笠原 でした。


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