御堂筋税理士法人創業者ブログ

F社は、私がもっとも古くから

お世話になっているお客様である。

業種は、金属製品の

少品種大量生産の製造業である。

第一次の生産プロセスは、

プレス→転造・加工・スポットとなる。

昨日、そこでの月例の会議があった。

生産部門の責任者である

Sさん(40才代前半)の生産性改善の

発表に目を見開かされた。

まず、残業時間ゼロ化への取組み

2月に150時間だったものが、

3月は94時間へ、

そして4月(前月)、ついにゼロになった!

次に業務の効率化の発表である。

特殊品の生産が対象で2つある。

ひとつはスポット溶接業務である。

問題点は、

特殊品のスポット溶接要員を

特殊品加工要員に配置したため

本業務を応援で対応していること

また主導生産のため、

効率が悪いことである。

そこで、この工程を

手持ちのスポット溶接機を

改良して自動化し、

かつ業務をライン化して

人手を減らそうという目論見である。

実施しての効果だが

改善前は、

人員的に、溶接1名、ライン業務1名

で対応していたものを

ライン業務に1名を追加投入した。

これにより1人で1台しか

稼働させられなかったものを

2台同時に稼働できるようになった。

またこれまで、他の作業中は、

生産がとまっていたものが

それがなくなり生産が安定化した。

その結果、これまで、1日に

2,000個しかできなかったものが

8,000個できるようになったのである。

もう一つは、加工業務である。

ここには、1名を投入しているが、

実際には、他の加工職場から

人が応援してきて対応していた。

作業内容を機械別に実態調査し、

作業を標準化することで

能力アップにつなげる目論見である。

手持ちの機械を使い、

これまで、1日に600個程度しか

造れず、またそれも

不安定であったものが、

作業標準を作成し、

そのとおりの作業、検査を行うことで

生産が安定し、

生産能力も、1日に1,000個と

大幅に向上した。

この改善思想は、他の作業へも

展開できるとのことである。

さて、こうした改善は、

立地が悪く、人の補充が

ほとんどままならない同社の

経営環境において、

Sさんが、トップから

「人の補充はもう少し待って!」

から、いつのときからか、

「人の補充は期待するな、

 人がいなくてもできるようにせよ!」

と指示されたことに対する

彼の創造性を発揮した

たまものである。

彼は何年か前に

生産コンサルタントの先生の

塾に通って、改善の

目の付け所を学んだ。

その成果を、自社の現場で

試行錯誤しつつ取組み、

改善効果を出してきている。

最近では自信をもって

会議に臨み、発表してくれている。

頼もしい限りだ。

わたしも、こうした

疑似現場体験を通じて

新たな気づきをもらい続けている。

少品種大量生産の形態の

製造業では、

人の生産性は常に

生産性向上のポイントであり

また、そこには、

たくさんの改善余地がある

という教訓だ。

事実、この会社でも

まだまだ改善のネタは

もっているという。

それは、作業をしている人の

動きをよく観察して

その洞察から起こってくる

アイデアにより

改善がなされるのである。

これは、ドラッカーがいう

仕事のマネジメントであり、

それは、仕事の

分析→統合→管理→ツール用意

の流れに完全に合致している。

余談だが、

ドラッカーはこの革新は

テーラーがなしとげた

科学的管理法により

なされたものであり

20世紀の生産性革新を

もたらしたのは彼であると

最大限の賛辞を

テーラーに贈っている。

この会社の経営者は

わたしと同年齢である。

人をほめるのは

お世辞にも上手とはいえないが、

ひたすら分析的に

ものごとをとらえる頭脳をもち

PDCAを、またその前提として

仕事の見える化を追求し、

それを部下に要求しつづける。

それがこの経営者の長所だ。

そうしたリーダーシップが

Sさんの、さらに

負けず劣らず成果を

出しているHさんなどの

若き管理者たちの

創造的活動を生みだし、

この会社のコストダウンと

生産性向上は

継続的に続けられて

いるのである。

その成果は

もちろんこの業界の

競争構造も反映しているが

継続的に高収益を生みだす

体質として具現化

されているのである。

会議が終ったお昼休み

食堂で昼食を食べながら

Sさんといろいろ雑談を交わした。

わたしはこう言った。

「Sさん、こうした生産性向上で

生まれた利益はきちんと測定できた。

それを利益としてそのまま残すのか

あるいは、君が会社に

自分の部下を一人もらい

自分の後継者を育成したいと

申し出るのか考えてみたらどうか?

わが社は先代の時代から

われわれの時代に移るにおいて

生産管理人材の断絶で

大変な苦労を経験した。

君自身も、自分の祖父くらいの

年齢の先達から、

きびしい真剣勝負を通じて

育ってきたわけだ。

中小企業の大きな課題は

各部門に後継者を配備して

経営をできないことだ。

だからスムーズな伝承ができない。

その原因は、生産性が低いことにある。

さいわいわが社は君たちの努力で

高い生産性を実現している。

これを利益として

税金を払ってしまうのか

人材育成の財源とするのか

経営としてよく考えるべき課題だ。

それを君らが具申して実現し

人材育成に真剣に取り組むとしたら

トップの覚えはこの上なくめでたく

真に、組織に貢献できるはずだ!」と

会計事務所の可能性を追求する

御堂筋税理士法人&

組織デザイン研究所

税理士コンサルタント 小笠原でした。


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