御堂筋税理士法人創業者ブログ

先代創業者と奥様の遺影がかかる
仏壇のある和室に

当代経営者ご夫婦と
次代を担う後継者が並んで座り
わたしが向かいに座って
来年度の経営の課題について
丸一日、検討してまとめた。

最後に来期の組織体制の話になる。
お母さまが
「社長は、来期はT(息子さんのこと)がやればいいて言ってたよ。」
社長も
「来期は、せがれがやればいいと思ってます。」
この瞬間、経営のバトンタッチが決まった。

わたしは拍手を送った。

お母さまが続けていう。
「年齢がいくと、目も見えないし、物覚えもわるくなって・・・
これからは、半日会社にいって
午後は、Jちゃん(お嫁さんのこと)に料理やいろいろ教えたいの・・・」
その光景を心の中で楽しむように・・・

息子はしばし、沈黙している。
彼の思いを知っているわたしは、
彼の様子をじっと眺める。
介入すべきかどうか、見極めるために

やがて、後継者の息子さんが口を開く。
そして、心に溜めていた思いを吐き出しはじめた。
「おやじは、Jに簿記学校に通って
 お店の経理を勉強して・・・なんて
 勝手に決めて言うけどね、
 おれは、Jに会社にタッチさせようと思っていないんだよ。
 勝手に、決めないでほしい。」

しばらく、息子が思いを語り続ける。
「そりゃ、将来、そうすることも必要になるときが来るかもしれないけど
 自分でいろいろ決めて、経験してみて、
 失敗をしてそうするのと、
 親から言われたままそうするのとでは全然ちがうんだよ。
 これじゃ、おれはずっと親の言われたとおり生きることになる。
 自分で思うとおりにやらせてほしいんだよ・・・」

お母さまは、少し面喰って、悲しそうな表情で
でも、静かに息子さんの話を聴き入っている。

社長と奥様は困惑しながら、
社長が、「小さな会社なら、家族が商売に携わるのが
 いちばんいいのじゃないかと思ってるんだ・・・」とおっしゃれば
奥様が、「わたしがこの家に来て
 そうするのがいいと思って、仕事を手伝ってきた。
 でも、お父さんもわたしも数字が苦手だったから・・・
 ・・・おばあちゃんから、教わってきたこの家の流儀、
 この家の味も教えてあげたいし・・・」

ここで、わたしが口をはさむ。
「どうしてT君は、奥さんを会社にタッチさせたくないのかな?」

T君が口を開く。
「おれが子供だったころ、
 家で夜ごはんを食べる時も、
 いつも話題は、仕事のことばかり
 おれも学校のことや友達のこと
 話したいことがたくさんあったのに・・・
 さみしかったです・・・」

奥さんが思い出して口を開く。
「そういえばNちゃん(T君のおねえさん)が
 受験生のときに、わたしに食ってかかったことがありました。
 『おかあさん!わたし!受験生なのよ!』って」
「それは、どういう意味なんです?」 わたしが訊く。
「わたしが仕事で夜が遅く、
 ご飯やお弁当のケアも十分してあげれなかったんです・・・」

わたしも、T君とおなじような境遇だったことが
わたしの心で重なる。

また、沈黙がこの部屋を包む。
わたしは、先代とそれを支えた先代の奥様の
人柄を偲ばせる遺影に
しばし視線を送った。

後継者が重い口を開いた
「とにかく、しばらく おれの思いどおりにさせてくれないか」
お母さまがそれに答える。
「わかった・・・」

「でも、Jには料理、教えてやってくれよ」
「そうだね。。。」

夜の帳が部屋をつつんだ。

この話は、一度ははなしあっておかなければならないことだった。
この場所で、親子がこの話題について語り合ったことには、意味があった。

それは、静かで、凛として、そして気持ちを通い合わせるいい対話だった。

コンサルティングに強い税理士法人小笠原事務所 大阪 小笠原
でした。


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