御堂筋税理士法人創業者ブログ

第25回     経営に必要なスキル     決算書を読む力(その2 )- 貸借対照表

要約

1.経営において、利益をあげることと資金状態を良くすることは同等に重要である

2.貸借対照表は、資金状態、つまり資金の使い方と調達のバランス、資金の残り方を表す

3.貸借対照表を読めるようになると、経営者・幹部の財務についての見方が広がり深まる

プロローグ

損益計算書は会計の専門外の人にも理解しやすいものですが、貸借対照表(B / S)はなかなか理解しにくいものです。しかし、経営にとって利益をあげることと資金を豊かにすることは車の両輪であり、企業存続に不可欠です。だからこそ、経営者・幹部にとって、貸借対照表を読めるようになることが重要なのです。

1  貸借対照表の本質

貸借対照表は、企業が「どのような資金」を「どれだけ使って」いるか、そのために「誰から」「どれだけ資金を調達しているか」を示します。

経営には、設備、在庫、売掛金、現預金という 4 種類の資金が必要であり、それは仕入先(買掛金)、金融機関(借入金)、株主(自己資本)の 3 者が提供しています。資金は「設備資金」と「運転資金」に大別されます。「設備資金」は設備投資に必要な資金で、自己資本か長期の借入金でまかなわれます。

一方の「運転資金」は、商品を仕入れて販売し、代金を回収するまでに必要な資金をいい、主に仕入先の与信でまかなわれます。

貸借対照表は上下に二分され、下半分は設備資金の構造(固定資金)を示し、上半分は運転資金の構造(流動資金)を示しています。

2  .「設備資金」の特徴と課題

「設備資金」とは設備投資のための資金です。資金としての特徴は「長期にわたって寝かされる」種類のものであり、ここには以下のような 2 つの課題があります。経営者は投資の際、これを熟慮した上で意思決定しなければなりません。

①設備資金は、自己資本か長期の借入金でまかなわなければならない

②設備投資は、一度実施すると後戻りできない

だから、借入金の返済額は投資の利益に見合うものでなければならず、設備投資にあたっては、投資収益性の分析が必須なのです。その判断の基準となるものには、投資回収期間、投資収益率、ディスカウント・キャッシュフロー、内部収益率などがあります。弊社HP(トップページ下、資料ダウンロードより)に投資収益性検討表のフォーマットを用意しています。専用フォームからお申し込みいただくと、資料をダウンロードできます。必要な方はぜひお使いください。

3  .「運転資金」の特徴と課題

「運転資金」とは日常の仕入れに必要な資金のことです。この資金としての特徴は、いわば「血液循環のように日々循環するお金」であるということです。仕入れた商品は、販売により粗利益をもたらします。したがって、利益をあげていくためには、その“循環速度”が課題となります。

運転資金の必要額は、売り上げ規模と、商品を仕入れてから販売した代金を回収するまでの日数によって決まり、その額というのが貸借対照表の「棚卸資産(在庫)と売掛債権の合計額」です。一方で、仕入先は一定期間の支払を猶予してくれている状況となり、その額が「買掛債務」に当たります。そしてこの両者の差額が、正味の必要運転資金となるのです。

必要な運転資金の額は、業種や企業の経営のあり方によって異なりますが、基本的には在庫を管理し回収を早めること、また、支払い条件の交渉で、できるだけ販売代金を回収してから仕入代金の支払いが起きるようにし、資金の節約に努めることが大切です。

4  .貸借対照表の総合的な見方

貸借対照表は次の 3 つの視点で評価します。

( 1 )資金の効率性

指標となるのは、総資産回転率(回)【売上高÷総資産】です。基準は製造業で 1 回、卸売業で1.5回です。経営では、少ない資金で多くの売り上げをあげる方が良いことは自明の理です。そこで、企業は設備の稼働率向上、回収の早期化、在庫の削減に努め、また経営に不要な資金を使わないことが重要です。

( 2 )資本の蓄積がなされているか

この指標となるのは、自己資本比率(%)【自己資本÷総資産】です。自己資金が多い方が安心なのは、マイホームを買う時と同じです。わが国の自己資本比率は平均で 45%となっていますが、それくらいが良好な目安となります。

( 3 )支払能力

この指標となるのは、流動比率(%)【流動資産÷流動負債】です。

例えば「流動」を水とすると、「固定」はいわば氷のようなものです。飲み水としていつでも使えるのは水ですが、氷はどうでしょうか?

取引先や金融機関は会社の支払能力に注目していますが、それは財布の中身、手元資金と売掛金と在庫の合計額が、当面支払うべき買掛金と短期借入金の合計額に対して余裕があるか、という点を見ています。両者の比率が150%、つまり支払うべき資金の1.5倍の資金があれば是とするのです。

このように貸借対照表の理解は、経営をめぐるお金の流れのメカニズムを把握することにより深まります。皆さんもぜひ自社の数字を確認し、貸借対照表が分かる経営者・幹部をめざしてください。

次回は、PLとBSを総合した、決算書から経営分析をする方法を説明します。

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