御堂筋税理士法人創業者ブログ

 御堂筋税理士法人の小笠原です。わたしの仕事は、お客様の会社を高業績企業にするサポートです。そういうとかっこわるいですが、そんなに名人でもありません。ですから、日々勉強して、腕を磨いていかなければなりません。その主な方法は、本を読んでなるほどと思ったことを、さっそくに日々実践してみて、効果を確認していくことです。

 最近、関心があるのは、サポートの進め方、特にアドバイスのあり方、そのためのコミュニケーションの進め方、さらにその場合の思考のスタンスです。それで、今月に入って、『信頼されるアドバイザー(The Trusted Advisor)』、『アドバイザーの技術(The Art of Advisor)』、『水平思考(Lateral Thinking)』の3冊を順番に読みました。それぞれ、とても勉強になりました。

 『The Trusted Advisor』は、私がとても尊敬している、会計事務所経営のバイブル、『プロフェッショナル・サービス・ファーム』の著者、デイヴィッド・マイスターの著書です。アドバイザーのタイプを発展的に4段階に区分し、専門知識提供から、ニーズ対応型、関係性構築型を経て、究極、信頼関係ベースに至るとしています。

 著者は、信頼されるアドバイザーに共通の属性として次のようなことを挙げておられます。
  1 自分自身よりも、クライアントに焦点を当てる性向がある
  ・ 先入観なしに話を聴ける十分な自信
  ・ 答えを仮定せずに探索するに十分な好奇心
  ・ 同行する旅でクライアントを同格と考えることをいとわない気持
  ・ 彼ら自身のエゴに服従するに十分な内的自信
  2 クライアントを、役割を演ずる人間ではなく、個人として焦点をあてる
  3 継続的に問題の定義への焦点あてと解決が、技術的、内容的な制御よりも重要だと信じている
  4 競争者をめざすことなく強い“競争的”気力を示すが、
   常にクライアントによりよいサービスを提供する新たな方法を見つけようとする
  5 特定の結果を目指すよりも、常に次の正しい一手をなすことに焦点をあてている
  6 自分の組織での報酬や力学によってよりも、正しいことをなそうとする内的な気力に動機づけられている
  7 方法論、モデル、技法、ビジネスプロセスを終結への手段と見ている
  8 クライアントとの関係性での成功は、質の経験の蓄積に結びつけられていると信じている
  9 販売と奉仕は両方ともプロフェッショナリズムの側面と信じている
 10 仕事生活と私生活との間には区別があるが、双方ともに極めて個人的(人間的)だと信じている

 そのためには、1 信頼を勝ち得る、 2 効果的にアドバイスをする、 3 関係性を築く、の3つのスキルが必要だと述べています。

 そして、信頼性構築の方程式が示されています。
T = (C+R+I)/S つまり、信頼=(言葉+行動+親密さ)÷(相手中心or自分中心性)

 そのステップは、1 入口(Engaging ;注意→焦点化) → 2 傾聴(Listening; 口よりも耳が大きい+ 認識と肯定) → 3 問題の構造把握(Framing; 根本課題が明瞭にオープンに語られる) → 4 理想形を描く(Envisioning ;代わりの現実の姿が描かれだす) → 5 約束(Commitment ;手順が合意される、コミットメント感が一新)となります。

 その中で、特に私が確認したことは、傾聴の重要性と些細であってもいかな配慮や思いやりもとても大切であるということでした。

 それを基に、次に読んだのが『The Art of Advisor』でした。この本では次の7つのことがらが論ぜられていました。

アドバイスの技術における7つの原則
1 自らのクライアントを知らなければならない
2 援助する、あるいは少なくとも害をなさない
3 自らの役割に同意する
4 決して一人芝居をしない
5 明瞭で建設的にプロセスを踏む
6 倫理的に潔白であること
7 最初に終わりを決めておく

 この本で全巻をつらぬいている考え方は、クライアント(お客様)中心ということで、徹底して、相手の立場に身を置いて話を聴き、そして協働していくということです。そのプロセスにおいて、ヒントと答えという必要な情報のほとんどは相手が持っているということです。したがって、アドバイザーは徹頭徹尾それをひき出せるかが、アドバイスの質を決定づけるといっても過言でないということです。これは前書にも通じますが、かなり目からうろこでした。

 もう一つは、自分のためになる利益誘導を決してしてはならないということです。人間のその嗅覚はそれは鋭いですものね。まるで麻薬探査犬のようです。

 そうしたことを踏まえて、有名な、デボノの『Lateral Thinking』を読みました。シックス・ハットの思考法で著名なデボノで、いまさらなあという気もありましたが、さすが世界的権威ですね。とても学びになりました。

 水平思考(Lateral Thinking)は垂直思考(Vertical Thinking)に対する言葉です。垂直思考とは、私たちが普段そうなってしまっているような思考法、よく言えば論理的、演繹思考、悪く言えば凝り固まった考え方をいいます。思い込み、視点を変えられないのが特徴です。

 一方、水平思考は、再構成、生成的、仮説的思考です。柔らか頭といえばよいでしょうか。この本では、その思考法の事例が満載です。また学校での教え方も詳細を極め、かなり学術的でもありますねえ。

 例えば、視点を変える、判断保留、お絵描き、デザイン思考、本質思考、喩え、ブレスト、ランダムな言葉との結びつけなどです。

 しかし、いちばんなるほどと思ったことは、判断保留です。わたしたちはついつい早めのジャッジでNoを宣言してしまいます。しかしすべては可能性があるわけです。それをむげに切りすててしまうことは可能性を閉ざしてしまうことです。ゴミ箱から丸めて捨てたメモを拾った経験はだれにでもあるのでは?

 ここから、すべての情報は役に立つという命題が出てきました。これはコンサルタントには第一級に重要です。そこからは、すべてのフィードバックは役に立つということが出てきます。見たくない現実を見るということは、経営者、コンサルタントに限らず、人間にとって大切なことではないでしょうか。そういう気の進まないことをする勇気を与えてくれることばだと思いました。

 すべてのわが社のスタッフたちが、このような原則をたいせつにして、仕事に取り組んでいってほしいと思いました。

会計事務所と経営コンサルティングの融合

御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所

小笠原 でした。

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