御堂筋税理士法人創業者ブログ

大阪のコンサルティング税理士 小笠原 です。

工場の改善の3回目です。
前回は、生産のフロー図をまとめました。
今回は、利益速度方程式を作ります。

最初に宿題を報告してもらいました。
宿題は、各職場での機械のチョコ停の原因別時間集計。
なるほど、一日30分かあ、案外少ないなあ
そこで、A職場(工程)の実働時間をまず計算しました。
拘束時間が11時間、休憩を除いた所定時間が10時間
そうじと朝礼で40分取られます。
反対に休憩時間を交代で取って機械は動かしているので+20分で
基準実働時間は9時間40分のはず
しかしチョコ停が30分あるので、実際実働時間は9時間10分です。
これを秒に直すと33,000秒です。

ところで、この機械で1つを加工するためにかかる時間
サイクルタイムは35秒。
これでいくと基準生産量は一日943本です。
しかし実際で計算すると943本、
実績は932個です。
実績から逆算すると、サイクルタイムは35.4秒になります。

一本あたりの体積は0.12立米なので
体積に換算した一日当たりの生産量は
基準で119.28立米、実際は111.88立米です。

基準の製品歩留まり率が52.0%と設定されていますが
実績による実際の歩留まり率は48.0%とのことです。

これでいくと生産量は
基準では、62.0立米、実際は53.7立米になります。

売値は立米42千円ですから
1日当たりの生産金額は
基準では2,604千円、実際は2,255千円になります。
基準対比86.6%のようです。

この数値は実績に合致しているかと訊くと
合致しているとのことです。

そこで生産金額の方程式を立てました。
稼働時間×サイクルタイム×材積×歩留まり×製品単価=清算金額

基準では
34,800秒÷35.0秒/本÷0.12立米/本×0.52×42千円/立米
=2,604千円

実際では
33,000秒÷35.4秒/本÷0.12立米/本×0.48×42千円/立米
=2,255千円

となりました。

今度は粗利益を算出します。

粗利益=生産金額-変動費(材料費)です。

材料費は現在12.8千円/立米です。
ですから基準では、119.28立米×12.8千円=1,526千円
実際は、111.88立米×12.8千円=1,432千円となります。

そこで粗利益は
基準では2,604千円-1,526千円=1,078千円
実際には2,255千円-  823千円=  823千円です。
その差は255千円の損失であり
実績は基準の76.3%になっています。

1秒あたりの粗利益は
基準では1,078千円÷34,800秒=30.98円/秒
実際には  823千円÷34,800秒=23.64円/秒
になります。

この差の原因は
稼働時間で    △128千円
サイクルタイムで △ 29千円
歩留まり率で   △190千円
材料費で     + 94千円(使う材料が少なくなっているので)
になっています。

もっともこれ以外にスクラップが
現状8,000千円/月の収入になっており
これを秒あたりに直すと
3.6円/秒になります。

以上の計算式から
この工程の課題は
1.歩留まり率
2.チョコ停のようです。

そこでこの利益速度方程式を他の工程についても
出していってもらいました。
みんな、ついてくるのに精いっぱいの感じでしたが
一所懸命計算して、ぎょぎょっ!てな感じです。
専務も
「この利益速度はすごいですね。」と感心しきり。

さて次に工程の固定費を計算してみたところ
このA工程は10.01円/秒です。
それ以外に第2工程で0.25円、第3工程で5.48円かかりますから
合計でのこの工程を通る製品に対してかかる固定費は16.10円です。
したがってA工程を通る製品の利益は
1秒あたり、粗利益23.64円-固定費16.10円=7.54円です。
ちなみにもう一つのB工程では
粗利益17.74円-固定費16.23円=0.41円
ほとんど生産利益がありません!
しかしスクラップ収入がありますから
この工場での生産損益は、たぶん現在12,500千円くらいでしょう。
キャッシュフローでは21,000千円ですが。

さてここまででてきたところで利益改善の基本的な方向性と
その可能性について言及しました。

利益改善の方法は3つ
1.売上を増やす。
2.生産性を高める。
3.仕入を下げる。

売値は現在、交渉中とのことで
3,000円/立米がねらい
月間の生産量が現在2,500立米ですから
これで+7,500千円

次に生産性を基準まで改善すると
+13,000千円です。

仕入の価格は入札ですから
この改善は別途検討ですね。

いずれにしても
生産性が改善すれば生産量も増えます。
この増収はA工程の場合182立米/月、B工程で521立米
ありますから
全部で703立米×42千円×40%=11,818千円です。
その代りスクラップは若干すくなくなりますが、それは今は考慮外

結局、利益改善の可能性は
販売単価のアップ  7,500千円
生産性改善     13,000千円
増産分の売上    12,000千円
さらにその単価アップ 2,000千円
合計34,500千円の利益改善の可能性があるのです。
なんとすばらしいことでしょうか?
年間4億の利益改善がのぞめるのです。

専務をはじめ皆さんの目の色が明らかにちがってきました。

さてそこで来月までの取組み事項の相談をしてもらいました。

まず生産性改善の主要な課題である
歩留まりですが、日によってちがうとのころ
それは、作る製品によってばらつきがあるようです。
ですから、どの製品が歩留まりが良くて、どれが悪いかを調べること。

次に、チョコ停ですが、これは統計を取っていて
上位2つの原因が大半です。
その解決の可能性を考えること。

すべての職場の利益速度の基準と実際を作り
業績管理資料、経営のコックピットに反映させる資料をつくること

さらに主要な製品別に利益速度を計算すること

を決めました。

みなさん、俄然やるぞ!という雰囲気が盛り上がってきました。
よいことですね。

最後に、わたしから
「ものは押せば動く、ものの論理です。
生産の改善の原則はものの論理です。
ですから数字を出して、そのとおり改善すれば必ず良くなる。
自信をもって取り組みなさい。」
「ちなみに人は押しても動くとはかぎらない。
そこには原因と結果の法則があるからです。
それは人間の論理です。
ですから部下指導、コミュニケーション改善は
わたしが変われば、まわりが変わるですよ。」
とお話させていただいた。

さて次回は、利益改善の方針をしっかり立てて
利益改善の活動の指揮をしていこうと考えています。
さらに製品ミックスによる利益改善の可能性
生産現場で働いておられる方々の機能分析をしていくつもりです。

この会社は、とてつもないような高業績をあげる可能性があります。

コンサルティングに強い税理士法人小笠原事務所 大阪 小笠原
でした。


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