御堂筋税理士法人創業者ブログ

最近、荒井白石の『読史輿論(とくしよろん)』を拝読いたしました。
 この本は、白石が、徳川五代将軍綱吉のあとを受けて、甲府藩主から六代将軍となった徳川家宣の家庭教師として、源氏・平氏という武家の始まりから、武家の世となり、平清盛、源頼朝→北条執権、南北朝、足利尊氏、織豊政権、徳川家康と続く武家政治の歴史をひもとき、その栄枯盛衰の現象と理を説いたものです。

 ふーふーいいながらやっと読み終えました。それは、➀なにしろ博識の白石先生の、歴史説明が微に入り細を穿ち、日本史に無知な小生には、限界を超えた人物の活写があり、ために、読書を中断し、スマホで人物と事件を勉強せねばならず、また、➁江戸時代の学者の文体だからでした。まあドMな難行苦行です。

 結局、武士の台頭と実質的な政権の奪取は、天皇家、藤原家の政治の体たらくと抗争に基づいており、さらに諸侯の天下取りに向けた争いは、源氏VS平氏の復讐また復讐の大義名分の繰り返しの歴史だということです。こういうダイナミックな見方を教えてくれるのは、さすがに勉強になりました。

 それは、ともかく私が教えていただいたことは、つぎの二つです。
1 部下の論考褒賞をきちんとすること(しかも自分は取り込まないで)
2 特定の人間をあまりにも重用して巨大な勢力を与えないこと

 それと、まあ当たり前ですが、自分の親兄弟・親戚の間で目に余る争いをしたような人間は、他人から見てとても尊敬できないということ、いくら辣腕であっても、残忍で人情味のない人間にはついていけないということ、さらに趣味・濫費・女関係など生活が乱れている人間はだめだということです。多少反省せなあかんな。

 ということで、わたしが感銘した部分をご紹介しておきます。

「按ずるに…、されど天下の武士彼を仰ぎし事は、(北条)義時承久の亂後に、多くの闕所を悉く軍功ありし輩に分ちあたへて、おのれ一所も領せざりし一事にやあるべき。」

「正統記にいはく、大方泰時心正しく、政すなほにして、人をはぐくみ、物におごらず、公家の御事をおもくし、本所の煩を止しかば、風の前に塵なくして、天の下則しづまりき。年代を累ねし事、偏に泰時が力とぞ申傳ふめる。陪臣として久しく權を執る事は、和漢兩朝に先例なし。其主たりし賴朝すら、二世をば過ず。義時がいかなる果報にか、はからざる家業を始て、兵馬の權をとれり。ためし稀なる事にや。されば殊なる才德も聞えず、又大名の下にほこる心や有けむ。中二とせばかりぞありし。身まかりしかど、彼の泰時相續て德政を先とし、法式を固くす、己が分を量るのみならず、親族幷にあらゆる武士にまでも戒しめ、高官位を望むものなかりき。其政ついでのまゝに衰へ、終に亡びぬるは、天命の終る姿也。七代までも保てる事こそ、彼が餘薫なれば、恨る所なしといふつべし。およそ保元・平治より此かたのみだりがはしさに、賴朝といふ人もなく、泰時といふ者なからましかば、日本國の人民、いかゞなりなまし…」

 つまり、こうした論考褒賞をきちんとして、私欲なき姿勢でもって、七代の為政を永らえることができるということです。

「(足利)義滿の時、天下の大名を引きすぐりて其職に任じ、殊には譜代の家を立たれし、かへすがへすも大きなる誤といふべし。応仁の亂の、よりて起る所なり。漢の文帝の時、賈誼が諫申せしも、近くは明(の)建文帝の世の亂も、此事にて有し也。後漢の光武、趙宋の太祖は、能此事を心得給て、功臣藩鎭の權を収め給ひき。譬へば虎に翼を付る事の如し。翼なからむだに、其爪牙の利畏るべし。况(まし)てやそれに翼をつけたらむに、いかでか飛で人を食はざらんや。此謂れをば、近代織田、豐臣の如きも、ゆめゆめ知給はざりしに、我、神祖のみ能心得させ給ひし御事、誠に千古に卓越し給ひぬ。萬代の後までも、従ひより給ふべき御事にや。」

 名だたる部下たちのパワーバランスは細心の注意が必要だということです。個人的な好みでは家康は食えないですが、客観的に見た場合には、ダントツの名為政者だと認めざるを得ません。

 残念ながら、家宣公はデビューが47歳と遅きに失し、その政、わずか3年で終わりますが、それでも『正徳の治』として後世、高く評価されているとのことです。

 無知蒙昧な小生ですが、今まで空白地帯だった武家政治の内容を少しずつ理解し始めました。興味も湧いてきて、次は、頼山陽の『日本外史』にチャレンジしようと思います。これは、原文は漢文ですが、さすがにそれは無理で、読み下し文で読み進めます。それでも頼山陽が、幕末・明治の武人、知識人達をとりこにし、中国でも出版されたという、趣き高い詩文は味わえるでしょう。

 さて読み終えるのはいつになることやら。ウィキペディアにあたりながらの読書ですから時間のほどは読み切れません。さらに、その次は本居宣長があったりして。とても本線の目標『史記』の完読に向けては戻れそうにないです。

 いずれにせよ、歴史と偉人の学ぶというのは、やはり経営者・ビジネスマンには必要ですね。なぜならよく腑に落ちるからです。

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小笠原 でした。

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