御堂筋税理士法人創業者ブログ

 私の父はものを集めるのが好きだった。

 小さい頃、父は各地のこけしなどを買い集めてきた。旅に出て買ったのもあろうが察する所デパートのこけし売り場などで買ったのだろう。それでこけしを飾る飾り棚を買ってこけしを飾っていた。

 次に集め出したのは小鳥たちである。はじめは十姉妹を買ってきた。つがいだったからポコポコと卵を産み、ひなが孵った。次は文鳥である。文鳥は十姉妹よりも多少見場が良い。手乗り文鳥といって人にも慣れるからかわいい。私もよく練った餌をあげたものである。これもどんどん卵を産んだ。

 小鳥を買うことがだんだん講じて、めずらしいインコたちがどんどん増えていった。セキセイインコは無論、小桜インコ、オカメインコなど名前も聞いたことのないインコたちである。おかげで狭い公団住宅の部屋には小鳥のケージが所狭しとならんだ。

 挙句の果てになんとオウムである。はじめは店においていたがあぐね果てて家に連れてきた。ろくに話す練習もさせなかったからもちろん人間の言葉は話さない。ただおりおりギャーと突拍子もない大きな声を挙げるだけである。

 オウムは長生きである。父が死んでのち母がなくなるまで40年余りも我が家にいた。母の家はマンションの14階だったが、近くを通って通勤していた路上の私でさえそのけたたましい声が耳についたものである。はた迷惑もいいところであった。母が逝って手に余ったので兄がどこやらの動物園だかに引き取ってもらった。

 その次は鉄道模型である。これは私にとっては超ラッキーだった。当時はOゲージと言ってけっこう大きな模型だった。父はいわゆる髪結いの亭主だったから、お店の売上からけっこう好きにお金を使っていたのだろう。模型はどんどん増えていった。実は私の趣味の一つが鉄道模型であるが、これは完全に父の影響である。

 またプラモデルも買いだした。主に飛行機である。私も手伝ったが主に父が作ったのだろう。家にいろいろと飾られていた。

 そうした父の所業に不思議に母は何も文句を言わなかった。なぜだろうか?惚れた弱みかもしれない。

 さらに父のコレクション癖は続く…

 ある日、家にビクターのステレオが届いた。まだ昭和35年である。そしてレコードが増えていった。カルメン、軽騎兵、童謡などである。私もそれをよく聞いたものである。未だにそれらの音楽が耳に残っている。

 小学校3年の時には、顕微鏡、試験管、ビーカー、シャーレなど理科の実験道具が頼みもしないのに次から次へと届いた。面白いので葉っぱなど顕微鏡で観察したものだ。

 私の覚えている限り父の収集癖はこれで終わりである。なぜなら父はその翌年身罷ったからである。だが鉄道模型、理科の実験道具はたぶん、いや明らかに私に買ったものであろう。考えてみればありがたいことであった。ただ私にはそれらを使いこなす器量に欠けていたのだが。

 もっと父が長生きしていたらわが家はいったいどんな様相を呈していたことだろう。面白いしワクワクする一方、おぞましい気もする。

 だが私が貧乏人のぜいたく息子となったのは明らかである。

 そして父の気質は私に遺伝的に伝わったようだ。私もいろいろなものを集めたことがある。

 切手、イギリス製のアンチモン鋳物の船の模型、映画のパンフレット類、まだまだあったろうが忘れてしまった。

 鉄道模型はずいぶんと集めた。私はいわゆるてっちゃんだが模型好きのてっちゃんである。30過ぎからは収まったが60を過ぎて再発した。こういうのは具合が悪い。多少経済的に余裕が出るからだ。それで、私は私が子供のころに走っていた国鉄の電車や機関車や客車を買い集めた。最近は収まった。飽きやすいのかもしれないし、必要なものはおおむね手に入れたからだ。それらは私が大工さんに作ってもらった特性の壁にへばりついた飾り棚に鎮座しており、毎日私の目を和ましてくれる。したがって私はとても気分がよいのである。

 今は格別に意図して集めているものはない。ただ本だけがどんどん増えていく。これは勉強だから趣味のコレクションとはいえない。とても自宅では収納しきれないし、さりとて私は物惜しみする方なので家内のように断捨離できない。それに会社の経費で買っているので、会社に図書ブースを作り収蔵している。幹部社員など眉をそびやかしているかも知れないが知らんぷりをしている。

 あと、旅に出るたびにその土地の石ころを拾ってきている。これなどはタダだからいい。ロマネコンティの畑の石などもこっそりと頂戴してある。

 そういえば時効だから白状するが、昔の列車の愛称版をくすねたことがある。今から60年前である。懺悔しなければならない。

 私の家内は、私とは正反対でものを持つことはしない。したがってなんでも用が済めば捨てる。立派なことである。私の行状にはこれも眉をそびやかしているが、ぶつくさいうものの根があっさりしているので放置プレーとなっている。

 なんでこんなにものを集めるのが好きなのだろう。ある種の男のタイプではあるだろう。集めたものをデレーと見ては相好をくずしているのである。さみしがりやなので身の回りがにぎやかだとうれしいのかもしれない。

 しかし、さほどのお金もないし、お金が増えるのも好きだから、骨とう品や美術品、不動産やお妾さんなど身を崩すような出費を伴うコレクションはしなかった。なんとかこっち組に踏みとどまったと自己評価している。

 つまらない話である。

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