カエサルの人格に触れて心と体が震えた。
2014.10.22
読書と修養
「指導者に求められる資質は
次の5つである。
知性。説得力。肉体上の耐久力。
自己制御の能力。持続する意志。
カエサルだけが、
このすべてを持っていた。」
(イタリアの高校の教科書)
ガイウス・ユリウス・カエサル
その生涯
前100年頃
– ローマで誕生。7月生まれ
名門だが、偉人を
排出していない貴族の出である。
母はアウレリア
カエサルは姉と妹にはさまれた
一人息子であった。
塩野七生の筆はこう伝える。
「それゆえか、
母の愛情を満身に浴びて育つ。
生涯を通じて
彼を特徴づけたことの一つは、
絶望的な状態になっても
機嫌の良さを
失わなかった点であった。
楽天的でいられたのも、
ゆるぎない自信があったからだ。
そして、男にとって最初に
自負心をもたせてくれるのは、
母親が彼にそそぐ愛情である。
幼児に母親の愛情に
恵まれて育てば、
人は自然に、
自信に裏打ちされた
バランス感覚も会得する。
-ローマでは
民衆派と元老院派対立
前82年
– 遠征中の元老院派スッラが
民衆派の支配していた
ローマへ侵攻。
(本来、軍隊を率いて
ローマに入ってはならなかった)
民衆派を弾圧
カエサルもそのリストに入るが
助命嘆願が相次ぎ助命
カエサル、キリキアへ逃れる。
スッラはいった
「君たちはわかっていない。
あの男は
とんでもない大物だということを」
前78年
– スッラ死去。
カエサル、ローマへ帰還。
庶民の街に住む。
政治的出世の野心は満々
服装には金をかける。
女性は名門の奥さま方を
手当たりしだい。
とほうもないプレゼントをするなど
それでもだれからも恨まれない。
必要なお金はクラッススから借りる。
-出世のつてがなく
弁論と高官告発で存在を示そうとする。
身の危険から
留学を兼ねて小アジア逃亡
海賊につかまり身代金を要求されるが
要求額を逆に3倍に吊り上げて
大物ぶりを演出
ゲスト気分で過ごし、
「釈放されたら
お前らぶっ殺すからな」
と放言。
実際にそうする。
前69年
-出世街道の戦略に着手
– ようやく財務官に選出
ヒスパニアへ赴任する。
前65年
-帰国、やっと元老院議員になる。
– 按察官に選出。
前63年
– 最高神祇官選挙で
(終身職で公邸つき)
対立候補を破って当選。
- カティリナ陰謀事件で
キケロ、小カトーらの
元老院派と対立するも負ける。
カエサルが
陰謀に関わっていたという会議中
彼は手紙を部下から受け取った。
それを見た小カトーは、
陰謀に加担した証拠だと
中身を見せろと詰め寄った。
カエサルは躊躇するも、
カトーの執拗な要求に
中身を見せると、
それは愛人セルウィリア
(カトの異父姉)からの恋文だった。
真面目一方のカトは
「この女たらし!」と罵倒したが、
議場は大爆笑となり
これでカエサルへの疑いはかき消された。
前62年
– 法務官に選出。
人気取り政策で
ド派手な芸能大会をしたり
自費で公共工事をしたりして
国民の人気を得る。
借金はしだいに天文学的
になっていくだが
まったく意に介さない。
前61年
– 前法務官格でヒスパニア総督に選出。
このころから金回りがよくなる。
-生涯の目標とやるべきことがわかり
ローマに帰ってくる。
前59年
– 執政官選出
(最高権力者、任期1年)
三頭政治の開始。
(ポンペイウス・クラッススと)
元老院でのやり取りを
毎日壁新聞にて張り出す。
マスコミ戦略にたけた男である。
ゆえに反対派も
なかなか本音を言えなくなる。
前58年
– 前執政官でガリア総督。
ガリア戦争が勃発
(紀元前51年まで)。
縦横無尽の才覚で
大活躍、連戦連勝、
ガリアを完全平定
ゲルマン人をライン川以北に
封じ込める。
「ガリア戦記」を執筆
ローマ人たちに
ニュースを送り続ける。
このガリア戦記は
最高のラテン語で
第1級の文芸作品と
みなされる。
前56年
-任期中はローマに入れない。
北イタリア(ルビコン河以北)に居留
– ポンペイウスとルッカ会談。
第2次三頭政治
前53年
– クラッスス戦死
三頭政治が事実上崩壊。
前52年
– アレシアの戦い。
ローマ元老院で
反カエサルの動きが
激しくなる。
前49年
– ルビコン渡河。
国法を破りローマ進軍
ローマ内戦の開始。
この一部始終も
「内乱記」で逐一公開
前48年
– 担がれたポンペイウスが
ギリシャへ国外脱出
ファルサルスの戦いで勝利
ポンペイウス、エジプトで殺さる。
前46年
– タプススの戦いで勝利。
初の凱旋式、
10年期限の独裁官に選出。
前45年
– ムンダの戦いで元老院派撲滅
ローマ内戦が事実上終結。
終身独裁官に選出。
‐ 何かと彼は王になろうとしている
とのうわさが絶えず。
懸命に否定する。
前44年
– 3月15日
パルティア掃討の出征前日
元老院演説をする前に
ローマ元老院議場で暗殺。
カエサルの思い描いていた
世界像と野望は何だったのか?
カエサルは
ローマがもはや
ローマ人の国家から
コスモポリタン国家に
変っていきつつあると
認識していて
元老院による共和制では
それに適した統治はできず、
強力なリーダーシップが必要
だと考えていた。
塩野七生さんの
縦横無尽の筆になる
すばらしい労作
『ローマ人の物語』
寝不足になること必定の
このとんでもない
血湧き肉躍る大スペクタクル
さて、われわれは
そこに
描かれたカエサルの
事跡と人格の謦咳に触れて
何を感じ取り、
何を学ぶべきか。
私が感じた
カエサルの特質を
思いつくままに
挙げてみたい。
・無類の自己演出家
めっちゃおしゃれ
・セレブの女性
(もちろん人妻)
をたくさん愛人にもつ。
でも誰も縁切りしない。
誰からも恨まれない。
・天文学的に借金
(また貸してもらえた)
政治目的 (買収、
公共事業、民衆接待)に
湯水のごとく使う。
借金もあまりに多すぎると
貸し手よりも強くなる。
貸し手のクラッスス
も大したものだ。
・私的な金銭欲はなし。
ゴージャスな別荘にも興味なし
遺言で、
ローマ在住の全市民に
300万円づつ贈与する
としたくらいだ。
・豪華な食事に興味なし
酒もあまり飲まない
「しらふなのはカエサルだけ」
とキケロは書いている。
・冷徹な現実主義者
人間心理に透徹している。
計算されつくした言動
・それゆえ
戦争では、常に敵を凌駕
とんでもない大勝の連続
・生涯を通じて
頭に血が上って
人に接したことが
ほとんどないという
真の貴族精神
(もちろん怒るふりは
しょっちゅうした)
・それゆえの人たらし
カエサルの軍隊の兵隊など
彼に真髄
(その事例はあまた)
・何人でも差別なし
ひたすら人を活用したし
ひとを見限ることはなかった。
・すばらしい文章力
(多くの文筆家を
自己嫌悪に陥らせた)
ラテン語を完成させたと評価
・それを駆使した
大衆へのマスコミ戦略
・すばらしい弁舌力・修辞力
とまあ、
男がほれるいい男である。
単純な僕など
きっと心酔して
彼のために死んだことだろう。
私も少しでもあやかって
経営のかじ取りに活かしたい。
そんなエピソードには
事欠かない彼の生涯である。
日経新聞上で
幾多の経営者が
愛読書No1に挙げる理由が
やっとわかった。
「ガリアは、
そのすべてをふくめて、
三つ分かれる。
第一は、
ベルガエ人の住む地方
第二は、
アクィターニア人の住む地方
第三は、
彼らの呼び方ならばケルト、
われわれの呼び名ならば、
ガリア人が住む地方である」
有名なガリア戦記の
最初のくだりである。
大文豪の多くが
書きたくても書けない
名文らしい。
導入部が一切ないのだ。
いきなり本題
これで皆魅了される。
僕もまねしたい!
カエサルは
ヨーロッパを創作しようとした。
そして創作したのだ。
それは後世の多くの
野望をいだいた
ヒーローたちの夢であった。
ナポレオンは第二帝国と称した。
ヒトラーは第三帝国と称した。
みなカエサルの後継者を
めざしたのだ。
そして、その夢は今
EUとして実現しつつある。
カエサルは
破った敵対者たちを
スッラのように大虐殺することは
決してしなかった。
放免して、自由にさせた。
彼はいった。
「わたしが自由にした人々が
再びわたしに
剣を向けることに
なるとしても、
そのようなことには
こころをわずらわせたくない。
何ものにもまして
わたしが
自分自身に課しているのは、
自らの考えに
忠実に生きることである。
だから、
他の人々にも、
そうあって当然と思っている。」
ガイウス・ユリウス・カエサル
人類史上
比類ないヒーローであり
真に貴族精神をもった
偉大な人格であった。
そして、それは
2000年後の私たちを
勇気づけ、
奮い立たせ続けている。
会計事務所の可能性を追求する
御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所
大阪 税理士 小笠原 でした。