中小企業で実践するドラッカー経営-⑫ 組織の組み立て方 その2
2024.02.12
コンサルティング
「ドラッカー経営を中小企業で実践する
第12回 組織をしっかりと組み立てることの重要性(2)
要約
1 中小企業で使える組織は、通常、職能別組織、事業部制組織、そしてチーム組織である
2 職能別組織は一般的だが、セクショナリズムを生みがちで、経営人材を育てるには事業部制組織が効果的である
3 職能別組織でも、部門別損益計算の工夫によって経営人材を育てる組織にしていくことができる
プロローグ
前回は組織の部門設定や運営原則、組織図の作り方、運営ルールなどについて話をしました。今回は、組織の組み立て方の種類やその特徴、どんな場合にその組織はフィットするかなどについてお話をします。
1 中小企業で使える組織は3種類である
ドラッカーは『マネジメント』の中で組織のあり方について詳細に解説をしています。彼は5種類の組織を紹介していますが、その中で中小企業で使えるものは3つあります。職能別組織、事業部制組織、チーム組織です。
職能別組織は、ごく一般的な組織のあり方です。営業、製造、業務、経理、総務といった仕事の種類別に組織化した組織です。職能別組織は、わかりやすく安定しているのが長所ですが、一方属する人の視野が狭くなり、また硬直的になりがち、意思決定がセクショナリズムに陥りがちで、経営者の育成に不向きであることなど欠点もめだつ組織です。ですから本当に、小企業あるいは現業に向いた組織といえます。もしこの組織で経営人材を育てようとすれば、例えば営業と製造の間で人材のローテーションをするなどの視野を拡げさせる工夫が必要です。
事業部制組織は、独自の市場や顧客を持った小さな会社の集まりといった組織で、成果中心の組織です。それらは往々、製品別、市場別、顧客群別、地域別、業界別などで区分されます。事業部制組織は、単独で損益計算ができるため、明晰で経済的であり、マネジメントが成果に向けて集中でき、コミュニケーションと意思決定が効果的にできます。その場合でも事業部内の組織は職能別組織となります。経営者を育てるには経営をさせる以外に方法がないため、事業部制組織は経営者を育てるにうってつけの組織と言えます。そのため可能な限り事業部制組織をめざすのがよいと思います。
チーム組織は、社内のプロジェクトチームで使います。わたしはマーケティングやイノベーションの推進はチーム組織で行なうのがよいと思います。それは部門横断的な組織だからです。さらに常設のチーム組織として経営チームがあります。経営はチームで行なうというのがドラッカーの考え方で、わたしもそのとおりだと実感しています。チームはチームリーダー(キャプテン)とメンバーから成り立っています。チームではチームビルディングという活動が大事で、そのためにチーム内のコミュニケーションを密にして協力体勢を強くしていくことがたいせつです。
上記以外にマトリクス組織というものもあります。マトリクス組織とは、職能別組織と製品などの政策の推進組織を織物の経糸と横糸のようにクロスさせた組織ですが、意思決定権限が複雑になるために、中小企業では扱いずらく、そのためよほど状況にフィットしているとき以外では使いません。
2 部門別損益計算ができるようにしたい
わたしは幹部の仕事というものはひとかたまりの完成の喜びが味わえるものがよいと思っています。それはつまり、大の女や男が職業人生の長きにわたってチャレンジしがいのある仕事です。その究極はやはり損益計算によって業績が評価できるものでしょう。なぜならビジネスは結局、いくらもうけたかで評価されるからです。
そういう意味で、わたしは可能な限り部門別損益計算ができるように工夫することが重要だと思っています。もちろん事業部制組織では各ユニットが独自に損益計算できますが、職能別組織でも工夫をすれば部門別損益計算が可能です。否、部門別損益計算できるようにしたいものです。理由は先に述べたとおりです。故稲盛和夫さんがアメーバ経営で実践したものがそれにあたります。
3 部門別損益計算の留意点
部門別損益計算では各部門を、儲けるミッションを負っているプロフィットセンター(PC)とそれ以外のコストセンター(CC)やサービスセンター(SC)に分類します。製造業を例にとりますと、営業部門をPCとする方法と製造部門もPCとする方法があります。製造部門もPC化するのがよいと私は考えます。それ以外にも通常はCCやSCに性格づけられる物流部門やはてまた経理部門なども、工夫次第でPC化できる可能性があります。その場合には、社外の仕事も取り込むことがよいと思います。
皆さんも工夫して、各部門長が経営者的感覚で仕事をできる組織をめざされたらいかがでしょうか。
以上