御堂筋税理士法人創業者ブログ

今から何年も前、かれこれ7、8年になるだろうか?
パナソニックの名古屋の営業部長さんにご紹介されて
とある材木を扱う会社の経営者にお会いしたことがある。
その方は、儒教などすこぶる研究されておられる方であった。

経営計画は300ページにもおよび
そのほとんどは儒教の教えだから、筋金入りの方である。

その社長から、
「小笠原さん、関西人だったら、
石門心学、石田梅岩先生の本、読まなければいかんですよ。」
と言われたことがある。

その言葉はずっと耳を離れず、
最近やっと、その主著、『都鄙(とひ)問答』を再読できた。

都鄙問答の、都とはみやこ、鄙とはいなかということで、
都の人と、田舎の人の問答形式で、
商人道、商人の心構えについて語るという内容である。

江戸時代、士農工商という身分制度の中で
商人は、財を蓄える潜在力があった分、
士族からはやっかみもあったはず。

そんな中、石田梅岩は、商人のよるべき理念について語る。
商人にとっての利ざやは、武士にとっての俸給であるという
利潤俸給説は、利益の正当性を理論化して主張したものであり
商人はこぞって快哉をさけんだものだった。

さらに倹約を旨とし、商業を公器とみなすその思想は、
燎原の火のように、全国に広がって行ったようである。
各地に、明倫舎などの塾が開かれ
多くの人たちがその思想を学んだという。

それは士農工商それぞれの生業につく人たちは
すべて、天道の体現である『性』を実現することを旨として
己が職業に専心することを諭している。

石田梅岩のこうした考え方は
その後の日本の経営の理念に大きな影響を与えることとなった。
たとえば、近江商人の考え方、三井、住友といった家訓には
石門心学の思想が色濃く反映されているのだろう。

私にとっても、経営理念は考えるべきテーマの一つだが、
日本の経営理念が、アメリカのミッションと、多少味わいがちがうのは
日本の経営理念が、事業にたずさわる人々の幸せの創造と追求、
企業の公共性に強くコミットしているところであり、
やはりそれはこうした心学の影響が色濃いのだろう。

日本は民族本来の神道(かんなみち)をベースに
仏教伝来、儒教の教え、鎌倉仏教、宋学、禅の到来により
独特の思想のブレンドで、やがてそれは武士道に結実していく。
商の道、工の道、農の道にも、『道』の精神性が感じられることは
すばらしい伝統であるとあらためて思っている。

来る春からこうした読書会をしたいと願い
今、あれこれ思案中なのだが、
『孝道』の中江藤樹、『商魂』の石田梅岩、
『経営』の二宮尊徳、『至誠』の吉田松陰
など、ぜひとも味わい、血肉にしたい思想だと感じている。

コンサルティングに強い 経営エンジン研究所 税理士法人小笠原事務所
大阪 小笠原 でした。

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