相手の話を聴く人、自分のことばかり喋る人
2024.05.10
コンサルティング
かれこれ30年近く昔、お客さんの会社を訪問していたときに、その会社の主力仕入先であるM電工の営業部長が来られた。社長さんに誘われて同席したら、その部長がそれは尊大横柄に感じられる態度でふんぞりかえって座られ、自分の話ばかりされていたことがあった。
私はあっけにとられた。このときの光景は今も強く脳裏に焼き付いている。営業とはこのように自分のことばかりしゃべることなのだろうか?私は営業とはお客様のお話を聴くことだと信じている。
さて、私は仕事柄、毎日いろいろな人にお会いする。そのとき、相手が専ら自分のことばかり話す人なのか、あるいは人の話を聴く人なのかを見定める。
私の経験では、大半の人は自分のことばかり話す。こういう人はコミュニケーションのくせとして自分の話ばかりする人なのだろうなと推察する。
私は経営コンサルタントなので、人と会うのは相手の話を聴くためであるから聞き手に回ることが多い。また私自身、人の話を聴くことがとても好きなので、相手が自分の話ばかりされてもなんら支障はない。それに私はしゃべることが得意ではないと思っているので、相手が話をしてくれると助かる。しかし、それにしても自分の話ばかりする人には強い違和感を感じてしまう。
ある本を読んでいたら、自分のことばかり話す人は他人の話を聴く暇や余裕はないという。それはそうだろう。話したり聞いたりすることのバランスを取るには、なかなかの器用さが必要だ。常にそのようなことを意識しておかなければならないからだ。
おしゃべりといえば女性の方々はお得意のようで、彼女らのお話ぶりを聴いているとお互いに気兼ねなく自分のことを話している。それは上手なものだ。そういう場合はおたがいにストレスはないのだろう(か?)。
私のお客様の経営者の中で、幾人か私に話をさせるのがお上手な方がいらっしゃる。会話を「ボールを放られた方が話をする」遊びに喩えると、その方々は油断するとすぐにボールを私に放ってくる。ボールを受け取った私は喋らざるを得ないわけである。やれやれまた上手くボールを受け取らされたわいと感じてしまう。そんな場合には、しかたなくしばらく話をしてできるだけ早くボールを相手に投げ返し「ところであなたは?」と切り返すのである。
一般的に人は自分のことを話すのが好きだと私は思う。もちろん私も自分が話をするのは好きだ。私の場合、その大半は考えているアイデアや知識で、それらを提供することが私の価値であると思っている。
ただ、相手の話を聴くのはそれをはるかに凌ぐ価値があると思っている。そこにその人のさまざまな有益な体験や気づきがあるからだ。コンサルタントはミツバチのような存在で、あちらこちらの花を巡っては蜜や花粉を集めてくることが大事である。このことは、例えば営業マン、スタイリストやネイリスト、あるいは飲食業のおやじなど対人的な仕事ではあまねく言えることではないだろうか。
というわけで、私は正直に言って、自分のことばかり話す人にお会いするとこの人を多少値引きして見てしまう。「大丈夫か、この人は?」と感じてしまうのである。なぜなら、人の話を聴かない人は、狭い範囲でしか思考できないように思い、したがって知恵高く、深く仕事をし、人生を歩めるように思えないからだ。さて皆さんはどのように思われるだろうか?