経理部長に求められる役割とはなにだろうか。
2012.05.01
ブログ
今月の22日、東京商工会議所さんで
『社長を支える経理部長の役割と実務講座』というセミナーをさせていただく。
⇒http://event.tokyo-cci.or.jp/event_detail-42264.html
昨年もさせていただいたセミナーであるが、
今年は内容をかなり見直してみた。
自分なりにより納得性の高いものにしたかったからである。
その際、まず念頭に置かせていただいたことは
組織への貢献とは何か?特に専門家の貢献とは?にふれた
ドラッカーの『経営者の役割』のことばである。
- 成果をあげるためには、
「組織の業績に影響を与えるような貢献とは何か」を
自らに問わなければならない。・・・
- なすべき貢献には、いくつかの種類がある。
あらゆる組織が三つの領域における成果を必要とする。
・・・直接の成果、価値への取り組み、人材の育成である。
- 専門家は、
その利用者に、何を知ってもらい、
理解してもらわなければならないかを
徹底的に考えなければならない。
(ピーター・ドラッカー著 『経営者の条件』より)
これらのことばを自分なりに噛み砕いて、
経理部長の役割を解きほぐしたものが
今回のセミナーの内容となるのである。
わたしは、今まで長く
お客さまの経営と経理に関わってきて
たくさんの経理部長さんとお会いしてきた。
そして、さまざまな立派な方のしておられること
そこから、いろいろ教わったことと
自分も勉強してごいっしょに取り組んだことをまとめて
今回、8つの役割を想定してみた。
それらは次のようなものである。
少しかた苦しいが、いっしょに見てみたい。
1.経理管理と資金管理
何といっても、スタートは、正しい経理処理ができていることだろう。
それは、経理業務のしくみを整備することと、安定した処理をすることだ。
そして、日々の資金繰りと適切な資金管理である。
これらは、人間の体でいえば、
神経系の維持と血流の管理にあたるのではないか。
課題はというと次のようなものだろう。
□経理業務の効率化、高度化
□すばやく正確な月次決算
□年度から日常までの資金繰り業務
□安定した資金繰りの実現
2.業績管理
つぎに、経営判断を助ける情報を提供し、アドバイスを提供することだ。
これも中枢神経系の整備である。
これは、ドラッカーが『マネジメント』の中で、
小企業の重要な課題に挙げた経営情報の収集であり、
そして、経営チームのひとりとして、セクレタリアートの役割とした大事な機能である。
正直、中小企業ではここが弱すぎる!
その課題は次の二つに要約できると思う。
□業績に関する情報収集システムの構築
□業績の報告と経営数値に基づくアドバイスと改善
3.内部管理
さて、さらに内部管理がある。
内部管理ともなると、もう大企業の課題だと
捉えられがちの敬遠されがちの課題だ。
しかし、これで利益がどれほど救われるか恐ろしいほどのものだ。
私は、旧松下電工のカミソリのような頭脳の持ち主であられた方に
それこそ執事してお教えいただいた。
このノウハウは、私の貴重な宝物でもある。
それらは今でも好きな利益を生み出す次のテーマである。
□会社の諸規定を整備と業務ルール化、しくみ化
□内部監査の実施、ロス・ミス・不正の防止
4.経営計画と予算管理
経営計画は経理部長のしごとかといわれると悩ましいが
しかし、小さな企業では経理部長のしごとではなかろうか。
予算のこともあるし、私は役割の中にいれさせていただいた。
(ただし、総務部長の仕事はすべてはずした)
経営計画の策定と実行管理そして年間予算の作成と管理だが
ここでは予算統制ともっと踏み込んでコスト削減の話も入れたい。
□事務局として経営計画、予算を立てるのをリードする。
□経営計画実行の会議などを事務局となる。
□予算の作成と管理統制
□コストの削減
5.計数教育
さて、価値観や人材育成での経理部長の役割は
これに尽きるのではないだろうか。
中小企業の経営者、幹部、営業マン、ひいては経理マンですら
数字に弱い御仁がけっこういらっしゃる。
これでは儲けられない!
そこで、計数リタラシーの高い組織づくりは経理部長の重要な使命である。
次の二つのことをしっかり組織で取り組みたいものだ。
□経営者・幹部の計数力のアップ
□営業マン・社員の計数力を育て、数字に強くする。
6.承継対策
このテーマはオーナー企業に主に関係するテーマだろう。
ちょっとおこがましいが、
私は、経理部長がオーナーの執事的な役割を果たしている現状、
あるいはいくぶんそうあるべしとの期待も込めて
オーナー企業のスムーズな事業承継で
次の課題に取り組んでほしい。
それは、おどろくほど多彩な選択肢や見識が問われるところだ。
□事業の継続のためのスムーズな事業承継
□経営に必要なオーナー資産管理、執事的役割
7.倫理維持
ドラッカーは、『マネジメント』の中で良心活動と言っているものが
わたしのいうこの役割かも知れない。
だれもが、攻撃陣である中小企業組織の中で
防御陣は経理だけだといってもよいくらいだ。
だから、得点ゲットに血道をあげがちな中で
だれにおもねることもない、不偏の立場は心底価値あるものだ。
社内外の情報の収集と会社良心存在であることがその大事な点だ。
□社内、得意先、仕入先、銀行などの話を聴く。
□ルールの番人として機能する。
これらは計数リタラシーの教育などとともに、組織のホルモンや内分泌系の役割だ。
8.部下育成
最後に、部下育成がある。
これこそが(計数教育とともに)、
わが社には立派な経理部長がいたと後世いわれるための経理部長の仕事だ。
□自分の次をになう人材を育てる。
□勝手にまわる部門をつくる。
こう考えてみると、
経理部長の役割は、
神経系、血液系、内分泌系、ホルモン系を司り
企業という肉体と、経営者という精神が
健全に成長発展し、健やかにくらしていく上で
とても大切な機能を担っていることがわかる。
経理部長の、大切でユニークな機能である。
ご興味のおありの方は、ぜひ東京商工会議所にお越しください
ぜひ、ごいっしょに学びたいものである。
コンサルティングに強い経営エンジン研究所、税理士法人小笠原事務所
大阪 小笠原 でした。