ドラッカー経営を中小企業で実践する第29回 「経営者のスキル ー 問題解決と意思決定」
2026.02.15
コンサルティング
要約
1 経営者・リーダーに特有の仕事は問題解決=意思決定である
2 問題解決・意思決定は5つのステップで行なう
3 意思決定はいくつかの案の中から行なうが、その時に最も大切なことは反対意見を出させることである
プロローグ
かつて私の知っている社長が「小笠原さん、私の仕事は一言でいえば意思決定ですから、それ以外はひまです。」と言われたことがあります。けだし、そのとおりだと思いました。
ドラッカーも、「意思決定はエグゼクティブに特有の仕事である」と述べています。ところで、意思決定は問題解決と同じ意味だと私は思います。ではその意思決定・問題解決とは何か?これが今回のテーマです。
1 問題解決と意思決定のパターン
問題解決と意思決定は、機会追求と並んでビジネスの本質をなすものだと言えます。ビジネスとは、一言で言えば顧客の問題解決だと言えます。さらにマネジメント自体問題解決と言ってもよいでしょう。
問題は、発生型問題(問題解決)と設定型問題(意思決定)の2つに大別されます。発生型問題には、基準乖離型と目標未達型の2つがあり、設定型問題(意思決定)には、計画設定型と好機準備型の2つがあります。詳しくはものの本をお読みください。
2 問題解決・意思決定の手順
問題解決・意思決定の手順はおおむね図のように5つのステップからなっています。

(1)の問題の特定で大事なことは、問題とは事実ではなく意見だということです。哲学的にいうと、通常事実というものはありません。あることがらに対する見方があるだけです。このことはあなたの頭を柔らかくし、問題についての考え方を拡げます。
したがって(2)のあるべき姿とはあくまで意見だということです。こうした見方を明確にしてこそ、原因の特定のために何を調べるかがはっきりしてきます(3)。
その上でいくつかの解決案を考えます(4)。最低三案が必要です。それは強制発想です。さらにそこに「何もしない案」を加えます。案は多い方がよい解決策がでてくる可能性が高いからです。ここまでのプロセスは時間を掛けて熟考します。最適案を選ぶにあたっては、図のように評価項目を定め、数字で評価するのがわかりやすいと思います。
【最適案の評価法の事例】
| 項目とウェイト | A社 | B社 | C社 | |
| 予算500万円 | 10 | 9 | 8 | 10 |
| 期間6ヶ月 | 7 | 9 | 8 | 10 |
| クラウドシステム | 9 | 10 | 8 | 9 |
| セキュリティ | 5 | 10 | 8 | 7 |
| 結 果 | 293 | 248 | 286 | |
最適案が選ばれれば、あとは迅速に実行していきます。そして、最後のステップは実行結果の評価です(5)。評価は必ず現地現物を見て行ってください。彼のローマ時代の英雄カエサルも必ずそうしたそうです。もし結果が良好であれば、それを定式化して定着させます。例えばマニュアルを作成して、訓練するなどです。
問題解決の手順を進めるにあたって有効な方法が自分や相手に対する質問です。各ステップに合わせ「問題は何か?」「あるべき姿は何か?」「原因は何か?」「対策は何か?」「うまく行ったか?」など適確な質問をして、解決を前進させ、メンバーを刺激するのはリーダーの重要な役割だと言えます。
これらの考え方はドラッカーの『経営者の条件』の中で縷々述べられていますから、ぜひ読んでみてください。
3 反対意見の重要さ
その中で私がなるほどと思ったことは、ドラッカーが反対意見の重要さを説いていることです。少し長くなりますが引用します。
「選択肢すべてについて検討を加えなければ、視野は閉ざされたままである。・・・意思決定は、全会一致によって行なうべきものではない。対立する意見が衝突し、異なる視点が対話し、いくつかの判断からの選択があって、初めて行なうことができる。したがって意思決定の原則は、意見の対立がないときには決定を行なわないことである。」
そして、意見の不一致が必要な理由を3つ挙げています。
1 組織の囚人になることを防ぐ
自分のメリットのために都合のよい決定をしてもらおうとする。それを防ぐのは反対意見である。
2 代案を得る
代案のない決定は向こう見ずなばくちである。決定は常にまちがえる危険があり、代案をもっていることが必要である。
3 想像力を刺激する
理論づけられ、検討しつくされ、裏づけられている反対意見は、創造力のもっとも効果的な刺激剤である。
そこで決定的に大事な経営者・リーダーの思考原則・行動原則が生まれます。「私の役割はメンバーが自由に発言をできる環境を創り出すことであり、そのための原則は聴くことである」ことです。ここにおいて、高業績企業を生み出すためのリーダーシップのあり方と他人の話を聴くことの重要性がつながってくるのです。いかがでしょうか?
まとめ
日常の経営の仕事は、さまざまな問題解決と意思決定です。経営者が真に効果的な意思決定をなすためには、日常の意思決定は下におろし、重要な意思決定にじっくり時間を掛けることです。そのための確立された手順が今回紹介したものです。皆さんも機会があれば一度この方法を使ってみてください。
以上