ドラッカー経営を中小企業で実践する 第44回小笠原の実践ドラッカー流経営 - POST経営:T 人材育成
2026.06.18
お客様の支援
要約
1 経営を見る視点には、財務的視点、ビジネス的視点、価値的視点の3つがあるが、価値的視点がもっとも目的的・本質的であり、その中核課題のひとつが人材育成である
2 人材育成には、基礎教育、専門教育およびマネジメント(経営人材)教育の3つの種類があるが、その前提として文化に合う人材の採用という課題がある
3 2のうち最重要なものは経営人材の育成であり、その方法は経営をさせるOJTが七割、外に出させるOffJTが三割である
4 人材育成は、組織の中核的戦略課題であり、組織的・体系的に行なわなければならず、そのように人材育成に取り組まない組織などというものはそもそも企業という名に値しない
1 経営を見る3つの視点
私の仕事を直截に言うと依頼者の経営会議に参加して、経営計画の達成、高業績化に資することです。
そのことに永く携わってきて最近強く思うことは、私は3つの視点でこのテーマについて考え、ものを言っているなあということです。それらは、財務的視点、ビジネス的視点、価値的視点です。財務的視点とはP/L、B/S、C/Fを見て分析するものです。ビジネス的視点とは、マーケティングや生産性などの取り組みの効果性にあてはめるものです。価値的視点とは、前回話した人的貸借対照表の考え方から見ることです。
そして価値的視点が、目的的・本質的な視点です。価値的視点とは、経営者の修養と幹部育成が、人材が育ち、顧客を惹きつける立派な企業を創るという思考です。したがって極言すれば人材育成こそがもっとも重要な課題だということになります。
2 人材育成の3つの取り組み
一口に人材育成と言いますが、そこには、基礎教育、専門教育およびマネジメント(経営人材)教育の3つの種類があります。職業人生を考えた場合に、人の一生は、ジュニア→一人前の仕事人→マネジャー・マイスター→経営者と辿れるのではないでしょうか?
したがって人材育成では、これら段階ごとの育成訓練が必要です。紙幅の関係もあり、下表で各々のかんどころを示しておきます。
【段階ごとの育成訓練】
| 段 階 | ねらい | 方法・必要なもの |
| 基礎教育 | 社会人として再教育、オンボーディング、風土になじむ | 外部研修・プログラム・頻繁な1on1・・・ |
| 専門教育 | 一人前の仕事人に育てる | ロードマップ・OJT・1on1・・・ |
| マネジメント教育 | マネジメントの5つの仕事-PDCA・チーム創り・指揮・業績管理・人材育成ができる | 外部研修・外部交流 |
| マイスター育成 | わが社の秘密の差別化を実現する | 徒弟制・守破離・国家認定・・・ |
| 経営者育成 | 次世代の経営者、MA先への派遣経営者を育てる | 経営計画・損益管理・外部交流・・・ |
ここで一つだけ補足しておきたいことがあります。それは、そもそも人材を育てる前に、が社の価値観にふさわしい人材を採用することが前提だということです。まともな人を採ることすら困難なこのご時世、リクルートは専門の人間を割り当て全社的に取り組む必要があるのです。
3 経営人材の育成
さて上記の中でも別格に重要なのが経営者育成ではないでしょうか。経営者をどう育てたらよいかと私に質問される方がけっこういらっしゃいます。私は「あなたはどうして経営者になれたのですか?」と問い返します。経営者になるためには、経営する以外に方法がありません。ものごとはすべからくそうではないですか?
では経営する訓練とはどうするのでしょうか? 経営とは、限られた人・もの・カネを使って、利益を挙げることです。そのために仮説を立て検証を繰り返すのです。そのために必要なものは損益計算書です。そこには使った費用、挙げられた成果が示されます。それを見ながらどうすればいいか考え手を打っていくわけです。
ですから、経営人材を育てようとすれば、そういう場を与え経験をさせる以外に方法がありません。それを会議と経営者による毎月のコーチングで進めて行くのです。
しかしそれは七割です。残りの三割は、本を読み、外に出て学び人と交わることです。特に会社員は井の中の蛙となりがちですからこれはとても大事です。外部の勉強会や交流会に出るとわずかな時間で驚くくらい多量の情報に接し刺激を受けることはよく経験のことと思います。
4 人材育成は中核的課題
さてこのように人材育成とりわけ経営者・幹部の育成は最重要の経営課題です。その割にしっかりと取り組んでいる中小企業が少ないことは驚くばかりです。人材育成は、経営計画の第一の課題として、トップ陣の一人を責任者に置き、予算をとって計画的に進めて行くことです。次に私が考える年間の人材育成計画を示しておきます。
【年間人材育成計画】
| 月度 階層 | 1,2月 | 3,4月 | 5,6月 | 7,8月 | 9,10月 | 11,12月 |
| トップ陣 | 経営合宿 | 経営合宿 | 経営合宿 | |||
| 取締役会・経営会議・経営計画の遂行・価値観研修(通年) 外部交流と外部研修 トップによる1on1・人事評価によるフィードバック | ||||||
| 上級マネジメント | 同上(取締役会を除く) | |||||
| マネジメント | 経営計画に基づく自部門マネジメント 1on1・トップによる価値観研修・経営会議のオブザーバー・人事評価によるフィードバック | |||||
| 初級マネジメント | 外部でのマネジメントスキル研修(部門マネジメント・PDCA・タイムマネジメント・数値管理・論理思考・アイデア発想・コーチング・ファシリテーション・・・) 1on1・トップによる価値観研修・経営会議のオブザーバー・人事評価によるフィードバック | |||||
| 若手社員 | 仕事およびスキルの目標管理1on1・OJT・人事評価によるフィードバック | |||||
| ジュニア | 新人研修 | 顧客出向研修 | 配属→OJT・1on1 | |||
人材育成は、経営の根幹です。かつての日本が世界に存在感を示すことができたのは、何よりも学校教育の成果だと私は考えています。私自身の人生をふりかえっても、学校に行かせてもらったのが何よりの親への恩だと思うのです。そういう観点から森信三先生が教えてくださるように「大切なご両親のお子さんを一人前の人間に育てるのは企業の使命である」思うのです。したがって、社員をろくに(真剣に)育てもしないような会社など企業という名に値しないと思うのです。あなたは自分の子をほったらかしにしているのですか!
以上