経費を削減する?経費率を減らす?
2007.11.08
ブログ
大阪の税理士 小笠原 です。
私は常々、今より儲けるための方法には、
①売上を増やす。
②粗利益率を上げる。
③固定費を下げる。
の3つの方法がありますとお話をしています。
でもこれは、単なる能書きです。
じゃ、実際に上の3つを実現し儲けを増やすには、どんな方法があるのか?
その問いに答えられなければ、
私たち会計事務所は、単なる評論家に過ぎません。
それでは、私自身、自分に満足できません。
実は去年1年間、事務所で『利益3倍プロジェクト』なるものを立ち上げ、
上の3つの課題について、どんな具体的方法があるのか
分担してマニュアルにする取り組みをしました。
そのマニュアルを持っていて、お客様から訊かれたら、
「社長、その場合には、こういう方法がありますよ」 なんて
お話できたら、いいなぁと思ったのです。
例えば
売 上 300,000千円
粗利益 60,000千円 (粗利益率20%)
固定費 50,000千円
儲 け 10,000千円
という会社があったとして、
売上を10%上げる、利益率を3%上げる、経費を5%下げると、
儲けはどうなるのでしょうか?
売 上 330,000千円
粗利益 75,900千円
固定費 47,500千円
儲 け 28,400千円
だいたい儲けが3倍近くになりますよね。
そういったモデルのための具体的な方法論なのです。
それで、スタッフみんなが、
それぞれどういう方法があるかをしらみつぶしに調べ上げ
そして、本を買い込んで勉強し、まとめていきました。
売上を増やす方法、粗利率を上げる方法は、
わりあい具体策も出て、なるほどという方法も分かっていきました。
問題は固定費を下げる方法です。
すばらしいマニュアルを作ってくれましたが、
中身となると、抜本的な方法が中々ないものなのです。
そんなことがあって、今も固定費を下げる方法には
どんなものがあるかを時折考えています。
そこで今私が考えていることは、
固定費を削減するという考え方では限界がある、
固定費比率を下げるというのが正しい考え方
ではないかと思っているのです。
どういう意味かというと
固定費を削減するという考え方だと
例えば、電話代をどう減らすか?電気代をどう減らすかなど
しょぼい考えしか生まれないのです。
挙句の果てに人件費の削減ということで人を切るといった、
経営の屋台骨を揺るがしかねない愚かなことも頭に浮かぶわけです。
ところが固定費比率を下げるということになれば
経費の生産性に目が向きます。
この経費は、しっかり活用されて、
売上を増やす効果があるのかということに目が向くのです。
まず経費を多いもの順に並べて見ます。
①人件費
②物流費
③設備コスト(家賃など)
④販売費
といった順でしょうか?
圧倒的に人件費が多いでしょうね。
そこで人件費比率を下げることが必要なのですね。
それを色々考えてみました。
そして人件費比率を下げるためには5つの方法が
あるのではないかと思うようになりました。
ではその方法とは、どんな方法でしょうか?
人件費比率を下げる5つの方法
①社長、幹部が、重要な課題に取り組むようにする。
雑用をせず、経営課題に取り組ませる。
②社員の1ヶ月の仕事の中身と投下時間を調べ、
してはならないことを明確にし、するべきことの時間を増やす。
③間接人員を直接化する。
営業マンに配置転換する。
④固定費を変動費化する。
業務をアウトソーシングに切り替える。
⑤コストパフォーマンスのよい人を活用する。
シニア、主婦、学生、海外勢
とりわけ①と②が大変効果がある方法です。
ある会社の経営会議で、幹部の方にお訊きしました。
私 )「Aさんは、仕入の請求書を毎月細かくチェックしています?」
Aさん)「ええ、そりゃ見てます!」
私 )「そりゃけっこうですね(笑)、ではNTTの電話のご利用明細は?」
Aさん)「それも見てますよ!」
私 )「なるほど、じゃ社員の給料のご利用明細は?」
Aさん)「??・・・それ何ですか??」
私 )「1ヶ月間、社員が何をしていたかですよ。
どんな仕事、どの得意先のために
何時間掛けていたか、だって人件費は結局時間の利用でしょ。
その時間が粗利を挙げることに集中されていたか?です。」
Aさん)「それは見ていません。しかし、だいたいは分かっています。」
私 )「それはだめです。Aさんが使うお金で、いちばん大きいのは仕入、
その次は給料じゃないですか?
その大きな経費項目をチェックしていないなんて。
しっかりチェックしてください。
思ってもいなかったようなことが分かりますよ!」
私が尊敬する経営学の大家、P・ドラッカー教授は、
『創造する経営者』の中で
経費を分析するためには、
経費の性質に応じて4つに区分して考えることを述べておられます。
経費の性質の4分類
①生産的活動・・・販売促進の活動
②付随活動・・・移動時間、請求活動、回収活動
③監視活動・・・悪いことがおきないようにする活動
④浪費・・・手待ち時間
社員の1ヶ月の時間を集計し、この4つの分類で分けてみるのです。
そして成果の挙がる活動に時間が振り分けられているかを見るのです。
ドラッカー教授は断言しておられます。
『成果の90%は、全体のわずか10%の活動から生まれている。
そして時間の90%は、成果の挙がらない活動につぎ込まれている。』
皆さんもぜひ自分の時間、社員の時間の使い方を調べてみてください。
とんでもない事実が浮かび上がってくるでしょう。
ちょっと工夫すれば、成果のあがる活動に取り組める時間が
2倍や、3倍になりますよ。
そうすれば、どんな成果が生まれるか?
それは火を見るよりも明らかですよね
税理士小笠原/河原事務所 小笠原でした。