御堂筋税理士法人創業者ブログ

 ようやく太平記を読み終えました。岩波文庫で6巻ありました。とにかく長かったです。ほっとしています。

 太平記は、鎌倉幕府の倒幕から、後醍醐天皇による建武の中興、南北朝の分裂、足利尊氏による室町政権の成立までを描いています。

 内容は、面白いことは面白いのですが、戦の描写の連続に加え、登場人物が多すぎて、話の筋を追うので精一杯でした。その上、史記など中国の故事が延々とインサートされて、話が脱線することおびただしいです。読み続けるにはかなりの辛抱が要りす。丹念に読めばとてつもなく時間がかかるのでしょうが、私など委細構わず、すっ飛ばして読みましたので、読書の質は最低でしょう。それでもいいと思っています。

 血なまぐさい描写が夥しく、また話が途方もなく誇張されていて、文質は、平家物語に遠く及ばないと感じました。編集に関わったとされる玄恵上人など編集者の見方、価値観が色濃く見え、その上足利政権の目もあって、物語の質も同様だと感じました。

 それよりも面白かったのは、校注者による各巻末のかなり長い解説です。太平記の成立、時代と背景、その後の時代への影響などとても学びになりました。

 そもそも武家の歴史は、平家物語に見られる源氏と平家の確執、権力の交代よって成り立っています。平清盛や源頼朝からの流れです。鎌倉幕府は、源氏の頼朝によって開かれましたが、それを横取りしたのは平家の北条だということです。したがって鎌倉幕府の打倒は、源氏の流れを汲む足利氏と新田氏が挑みました。しかし後醍醐天皇の親政への野心から、それを阻止しようとする足利尊氏とそれを支持する新田義貞の争いに転化してしまいました。

 そういうこともあって、足利政権を倒した織田信長は平家を自称し、さらに織豊政権を倒した徳川家康は源氏の嫡流家系を買ったということです。どうしても大義名分が要るのですね。

 日本は、神代の時代から、万世一系の天皇家を、藤原家が臣として輔弼するという政治形態でしたから、それに代わる武家もあくまでも君臣の義を明らかにして、己が存在と立場を名分として明らかにして根拠づけることが必要だったようです。

 ですから、徳川家は、その理論づけには必死の精力を注いだということです。それを進めたのが、御三家の一家、水戸藩の水戸光圀でした。彼は大日本史を編纂して、徳川の正当性を、万世一系と君臣の義の理論の中で明らかにしようとしました。そして、それは3世紀にもおよぶ大事業となりました。

 しかし、その間に、歴史観は大きく変化していきます。平家物語にもありますが、足利尊氏は天皇を廃嫡し、また親王をあまた殺害し、実際上天皇に変るほどのとんでもない逆賊でありましょう。足利は神代からの万世一系を滅ぼしたわけです。ここで日本の天皇家の系譜は滅びたのです。

 南朝正統説は、北畠親房の親王正統記よりこの方江戸時代では確立していきましたが、しかし肝心の実際の系統は北朝となっています。このねじれは大変にやっかいな問題でしょうね。

 そうした歴史は、荒井白石などの研究により、冷静に考察されました。やがて、江戸末期、水戸学派は藤田幽谷、藤田東湖らによりこうした歴史観は精製され、それは尊王攘夷の指導哲学となり、時の下級武士たちを歴史の回天に向わせることとなりました。

 こうした歴史を考察させる重要な引き金を、太平記は果たしているということです。私にとっての日本史でこのパートは、知識が欠落していましたので、それで大変勉強になりました。

 私はまだ中国史や日本史、とりわけ国学については、ほとんど基礎知識がありません。この後、史記などの中国史を学び、日本思想が培われてきた歴史背景を学んでいきたいと思っています。

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小笠原 でした。

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