ドラッカー経営を中小企業で実践する-⑭経営計画の実行管理」
2024.04.13
コンサルティング
「ドラッカー経営を中小企業で実践する
第14回 経営計画の実行管理」
要約
1 ものごとは何をするかと同じくらいどのように進めるかが大事である
2 経営計画の実行管理は月次のPDCAサイクルを基本とする
3 そこでは、ふりかえり→1on1→会議→フォローのサイクルを確立させる
プロローグ
中小企業をドラッカー流の経営で高業績企業にする基本のあり方は、ニッチNo1になる経営計画をPDCAで飽きることなく推進していくことです。ものごとは「何をするか」が大事ですが、「どのように進めるか」も同じくらい大事です。今回は、その進め方を説明します。
0 経営計画の実行管理の基本的あり方
戦略計画のドラッカーの定義は次のようなものでした。
「戦略計画とは、企業家的なリスクを伴う意思決定を、可能な限りの知識をもって体系的に下し、意思決定の実行に必要な活動を体系的に組織し、意思決定の結果を組織的かつ体系的にフィードバックし、期待と比較測定する連続したプロセスのことである。」
要は、経営計画とは、計画して、役割分担して、実行管理する一連の流れだということです。つまり当たり前ですがPDCAのサイクルを回すということです。前にも述べましたが、日本の中小企業の場合にはそれができていません。せいぜい作ったきりなのです。それでは、ドラッカーのいうとおり「夢にすぎない」のです。
経営計画の実行管理サイクルの基本は月次です。具体的な姿は図のとおりです。まず1ヶ月の活動と成果について月末にふりかえり次月の活動の計画をたてます。次に直属の部下(上司)と個人面談でコーチングをします。近頃はそれを『1on1』といいます。さらにできるだけ早く経営計画の推進の会議をします。あとは日常で計画をフォローしていくのです。
1 ふりかえり
経営計画の実行管理において個人的にふりかえることは、1ヶ月の自分の活動とパフォーマンスです。前回説明した『目標管理シート』を中心として、1ヶ月の時間の使い方の記録である『時間管理表』、そして自分の活動と成果の数字をまとめた『経営のコックピット』、そしてスケジューラー(手帳)を使います。
ふりかえりとは、自分の行いをかえりみることで、自分の過去の行為について考察し、一定の評価を加えることです。英語では“Reflection”と言われます。それは鏡に自分を映すことです。Reflectionだけが自らを高めます。それゆえ西洋哲学ではとても大事なものとされています。ふりかえりにより、経営計画の実行力が限りなく高まっていきます。
ふりかえりでは、計画に対して実行したこと、できたこと、できなかったこと、その反省、気づき、評価を行い、それを踏まえ次月取り組むことを決めます。決めたことは手帳に具体的な期日とともに記入します。ふりかえりは月の最終日までに行います。「よーいドンの音が鳴る前に、靴を履いておけ!」です。
2 個人面談(1on1)
ふりかえりは全社員にさせます。それが終わったらすぐに直属の部下と個人面談をし、部下のふりかえりを共有します。静かな部屋で約1時間、じっくりと部下の目標管理の状況、時間の使い方、パフォーマンス、課題意識を聴きます。
このときに必要なスキルが『コーチング』です。コーチングとは、意図的なコミュニケーションの技法であり、それは傾聴と質問を中軸として、相手に自問自答させ、方向性や自己決定を導きだすものです。本人の内からの動機づけを高める極めてすぐれた方法です。ほぼあらゆる人間関係で有効であり、したがって経営者、幹部をはじめ全社員に身に着けてもらいたいスキルです。弊社でも定期的に開催しています。
3 経営計画の推進会議
個人面談が終わったら、できるだけ早く経営計画の会議を開きます。弊社では第3営業日の午前9時からですが、せいぜい月初1週間以内には開いてほしいものです。
この会議こそは経営計画の推進の中核に位置する大事なイベントです。それは計画の実行と実現の状況を参加者全員で共有し、なすべきことを決定していくものです。ちなみに著者本人の日ごろの活動の中心はお客様のこうした会議に参画し、それを効果的なものにしていくことです。
会議の具体的なポイントについては、次回くわしく説明していきます。会議の参加者の範囲ですが、あまり広げすぎても拡散してしまいますが、それでもできるだけ広く参加してもらうのがよいと思います。
4 フォロー
ふりかえり、1on1、会議のあとは、分厚い部下フォローが続きます。そのスタイルは部下の仕事の習熟状況によりますが、基本は日々のコミュニケーションを通じた部下の活動と心理状態の観察です。そこでサポート(介入)が必要だと感じたら、フラットな目線で相談に乗り、アドバイスや介助をしていくのです。部下のフォローについては、テレサ・アマービルという人の書いた『マネジャーの最も大切な仕事』という快著があります。ぜひお読みください。
以上