御堂筋税理士法人創業者ブログ

わたしは仕事がら、日ごろクライアントの方々やセミナーの受講者の方にさまざまな本をご紹介しています。
今日は、その中でも特にお勧めしている本を10冊ご紹介したいと思います。まずは次のリストを見てください。

・マネジメント           (P・ドラッカー)   ☆☆☆☆
・一倉定の社長学(1,2巻)    (一倉定)       ☆☆
・High Output Management      (A・グローブ)    ☆☆☆
・産業ならびに一般の管理      (H・ファヨール)   ☆☆☆☆☆
・実学               (稲盛和夫)      ☆☆
・経営者の条件           (P・ドラッカー)   ☆☆☆☆
・修身教授録            (森信三)       ☆☆☆
・原因と結果の法則         (ジェームズ・アレン) ☆
・アレクサンドロス大王東征記    (アッリアノス)    ☆☆☆
・怒りについて           (セネカ)       ☆☆☆
※ ☆印は読みやすさ・読みにくさの程度を示しています。☆1つは超読みやすい~☆5つは難かしい、です。

 なぜこれらの本をご紹介するのか、少し解説も交えて順番にお話をしたいと思います。

1 マネジメント(ピーター・ドラッカー著、ダイヤモンド社刊) ☆☆☆☆

 言わずと知れた、経営学の比類なき大思想家、ドラッカーさんの主著です。これ1冊あれば、経営に関するほとんどのことは学べるのではないでしょうか?わたしは、経営指導の考え方や方法の多くはこの本から学びました。現在の新訳は3分冊となっていて大部となっていますが、ゆっくりと精読を重ねたい書物です。経営計画、仕事と労働、マネジメントの仕事、マネジメント・スキル、組織の考え方、経営チーム、規模のマネジメントなど、どの箇所も経営を担っていく上での課題、原則、実践について記されています。私は前後5年間にわたって、有志の経営者の方々を集めて1年間の連続セミナーを開いておりました。そのために毎回読み直しましたが、その都度新たな気づき、そのとき念頭にある課題に対するヒントをもらいました。我流の経営の弊害を避けるためにも、少なくとも経営を担当する人間には必読の書です。
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2 一倉定の社長学(第1巻;経営戦略篇、第2巻;経営計画・資金運用篇、日本経営合理化協会刊) ☆☆

 これは知る人ぞ知る昭和の名コンサルタント一倉定さんが書いたひたすら実践的な経営書です。とにかく事例が満載で具体的、誰が読んでもよくわかり、すぐに実践できるすぐれた書物です。わたしも若いころ、この本をまねてコンサルティングを始めました。しかしその内容はドラッカー理論、ランチェスター理論を踏まえたオーソドックスなものです。全体は10冊からなっているシリーズものですが、そのうちの1巻と2巻が、経営計画に関するものです。一倉さんの指導理論においては、経営者の姿勢がすべてであり、それは経営方針の確立、お客様を訪問して声を聴く、現場を回る、売上年計と時間当り賃率(限界利益)を見るなど、極めて明確でシンプルです。それ以外にも5巻『増収増益戦略』、6巻『内部体勢の確立』、8巻『市場戦略・市場戦争』(ランチェスター戦略の解説書としても良書)もよい内容です。特に、経営者としての心の軸がしっかりしていない新米の経営者にはお勧めします。https://amzn.to/3wBhms1

3 High Output Management(A・グローブ著、日経BP社刊)  ☆☆☆

 アンドリュー・グローブは、インテル社を今日の優良企業に育て上げた名経営者です。彼が世のマネジャーのために渾身の力で筆を握った著作です。世に経営書、マネジメントの本は学者、実務家がたくさん著していますが、経営者の書いたものは一冊は読んでおきたいものです。GMのスローンやGEのウェルチなど名作も多くありますが、私はこの一作をお勧めします。それは経営資料の意味合い、1on1の大事さなど、具体的なことがらについて懇切に解説してくれているからです。そしてそれは小笠原が大事に思っていることと合っているからです。世にこうした経営書も多くありますが、多くは口述したものをライターが代筆したものが多そうですが、グローブは自ら筆を取ったように思われその熱意が伺われるところもわたしが好きな所以です。
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4 産業ならびに一般の管理(H・ファヨール著、ダイヤモンド社刊) ☆☆☆☆☆

 本書は経営管理論、組織論の不朽の古典です。書かれたのは今から一世紀以上前ですが、内容はまったく陳腐化しておらず、また内容も大変に優れていて、背筋を伸ばさされます。この本は、入手も困難(ユーズドしかなくしかも高価)で、かつ内容もむずかしい。にもかかわらず、わたしがこの本を取り上げるのは、わたしが接している中小企業の決裁権限のルールや命令の一元化など、組織の組み立て方、運営がまったく体をなしていないからです。もし読まれたいという方がいらっしゃったら、わたしの蔵書をコピー取られてお読みください。こうした経営論の古典の中で、大変に見識が高く、かつ内容がむずかしいものとしては、組織存続の3条件や経営者の道徳的創造性が書いてあるチェスター・I・バーナードの『経営者の役割』や生産性の上げ方が書かれているフレデリック・テーラーの『科学的管理法』などがあります。そうした考え方の概略を学ぶのであれば、どれか一冊、経営学の本(おおむね大学生向けの教科書ですが)を読まれることをお勧めします。
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5 実学(稲盛和夫著、日本経済新聞出版刊)    ☆☆

 経営者になれば(そうでなくても)、数字の見方は分かっておかなければなりません。しかし会計の本は専門的で、なかなか頭に入らないものです。そういう中で、この本は京セラの創業者である稲盛さんが、脱サラをして起業した折の、経営者としての会計への関わり方の経験を書いたものであり、ふつうのビジネスマンにとって大変わかりやすくかかれています。そういう点で、わたしはこの本をひろくお奨めする次第です。あと会計の本としては、ロングセラーである、『人事屋が書いた経理の本』も強くお奨めします。この本には、主として管理会計をベースにした損益の理解と分析のしかたが書かれてあり、これは経営者が数字を読み解くスキルとしてぜひ身につけてもらいたいものです。
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6 経営者の条件(P・ドラッカー著、ダイヤモンド社刊) ☆☆☆☆

 ドラッカーさんの本は、あれもこれも読んでもらいたいと思うのですが、『マネジメント』以外にもう一冊となれば、この『経営者の条件』をお奨めします。この本は、経営者が身につけるべき5つの習慣について書かれています。それらは、➀時間管理、➁経営者の仕事の定義づけ、➂人間の強味を活かす、④優先度の高いことへの集中、⑤効果的な意思決定、です。どれもこれも重要であり、それらは私の経験では、自分の体験に照らしてしだいに腑に落ちてくるものであり、私の場合10年以上かかりました。しかし腑に落ちてみると、これらの5つが本当に大事であるとあらためて実感されるのです。それほどむずかしい文章ではないのでぜひ読んでみてください。
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7 修身教授録(森信三著、致知出版社刊)     ☆☆☆

 ドラッカーさんは「経営者が偉大なときだけ組織は偉大たりうる」と書いておられます。またバーナードは「リーダーには道徳的創造性が必要である」と述べています。それらは経営者が価値観を学ばなければならないゆえんです。その場合もっとも適切だと思う教科書がこの本です。それは、森信三先生が天王寺高等師範で修身科の授業をした2年間の講義録です。道徳を学ぶにはこれ一冊で十分であると言わしめた本です。森先生は、儒教特に宋学の教え『修己治人』に従い、感恩・謝恩→立志→読書→慎独→育成の流れで、小学校教師を目指す若者たちを暖かく導いていきます。先生の息遣いまでも伝わってくる名著です。わたしにとってはドラッカーさんのマネジメントとこの本が座右の書です。この本からわたしの思想、哲学の学びは広がっていきました。広く皆さんにお勧めするところです。
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8 原因と結果の法則(ジェームズ・アレン著、サンマーク出版刊) ☆

 修身教授録と並んで、思想修養のテキストとしているのがこの本です。ジェームズ・アレンは無名の作家ですが、本書はストア哲学から延々と続く、ヨーロッパ特に英国の不撓不屈の精神の一翼をになう、不変の『運命の法則』、「わたしが変われば世界が変わる」というものの見方をこれ以上ないというやさしさで、語りかけてくれます。わずか67ページの小著で作者が語っていることは、ただひとつ「良い心を持てば身の回りが良くなり、悪い心を持てば身の回りが悪くなる」ということです。それをあらゆる変奏曲でリフレインしてくれます。西洋哲学の伝統では、「ふりかえり(Reflexion)」ということが人格陶冶には不可欠だとされていますが、本書はそのもっともわかりやすい教科書です。
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9 アレクサンドロス大王東征記(アッリアノス著、岩波文庫刊)  ☆☆☆

 さて、経営者・リーダーに求められるリーダーシップの手本に触れるのには、偉大なリーダーの足跡に触れることが一番でしょう。そして、それは軍事の天才にもっとも端的に見ることができます。古来、世界的な軍事の天才といえば、ギリシャのアレキサンドロス大王が挙げられます。その生涯を記したものが、この本です。そこでは、アレクサンドロスが、自分の少年時代からの友人でもある腹心たちを従えて、遠くインドまでをも従えた大遠征の事跡を味わうことができます。彼の示す勇気は全兵士の手本となり、彼の演説は従う者たちの気持ちを見事なほどに奮い立たせます。読んでいて心が震えてくること請け合いです。もうひとりの軍事の天才はローマのカエサルです。彼は古今第一のラテン語の使い手で、その著書『ガリア戦記』もお薦めです。さらにドラッカーさんがリーダーシップを学ぶにはこれ一冊で十分だと言わしめた、クセノポンの『キュロスの教育』もすばらしく、これがいちばんかもしれません。
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10 怒りについて(セネカ、岩波文庫刊)   ☆☆☆

 最後の一冊は、経営者、リーダーの修養の眼目、怒りの制御(アンガー・コントロール)について語られた名著、『怒りについて』です。著者は、古代ローマ一世紀、かの暴君ネロに仕えた思想家、セネカです。彼はネロの師父でもありましたが、結局はネロに自殺を強いられました。この本でもっとも記憶に残っている忠告は、「怒りは延期せよ」という一言でした。この金言をもらうだけで、十二分にその読書の返報はあると思います。ドラッカーは管理者に不可欠な『誠実さ(Integrity)』は後からは身につけられないとし、EQリーダーシップのダニエル・ゴールマンは時間がかかるが身につけられるとしています。その是非はともかく、具体的なスキルはこの点にあるでしょう。
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番外 初めての経営計画100問100答(小笠原士郎、明日香出版社刊) ☆☆

 さて、最後の最後にもう一冊。ごめんなさい、自己宣伝になりますが。それは、小生が経営計画について書いた一冊です。この本は、戦略計画の立案→数字による経営の見える化→効果的な会議による仮説の検証→幹部の教育という、ドラッカーさんが小企業のマネジメントで教えてくれる、経営の要諦をいかに進めていくかについての小笠原の解釈と実践法をお話しするものです。それは(わたしとしては)、これ1冊があれば、経営者が自らのなすべきことの理解と実践を推進でき、自らの会社を高業績企業に導いていけると考えているものです。よろしければぜひ目を通してみてください。
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 いかがでしたでしょうか?これらの10冊以外にも、ぜひとも皆さんに読んでいただきたいなあという経営書はたくさんあります。特に、マーケティング、イノベーション、生産、哲学などについての分野での非常な良書も多くありますが、いかんせん専門的すぎたりで今回は挙げませんでした。また機会があれば続編でご紹介したいと思います。

 今年の始め、文豪サマセット・モームがセレクトした世界の10大小説を見て、今年はこれらを読破しようと思い、ちょうど先日、最後の一冊トルストイの『戦争と平和』を読み終えました。その爽快感は相当なものでした。皆さんもよろしければ、わたしが挙げた本のページを開いて、経営力に磨きをかけられたらいかがでしょうか。

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