戦争論に示されるリーダーに求められるもの
2015.11.12
読書と修養
クラウゼヴィッツの戦争論を
読みかけている。
20年来の課題である。
一応岩波文庫だから
世界の古典というべき位置づけになる。
19世紀のドイツ人の書いた本である。
なにしろ長い(。>0<。)
字が小さい岩波文庫で
3巻、1,000ページを超えるだろう。
出だしのとっつきにくさからくる
スローモーをようやく
脱しかけたところである。
スイッチが入ったのは
『軍事的天才』
という一節からだ。
こころに刺さる言葉が
あちこちに宝石のように
ちりばめられている。
少しご紹介しよう・
まあ戦争という
精神を極限までおいつめる
生命の危険を賭した
しかもなにが起こるか
わからない状況の中で
瞬時にすべてを見通した
判断ができるのは
やはりアート(天才)の技であろう。
「軍事的天才は神的諸力の
調和ある合一にほかならない」
「戦争は危険を本領とする、
従って何ものにも増して
軍人の第一の特性は勇気である。」
勇気には2種類ある。
危険に対して泰然としていることと
名誉心や祖国愛の感情をともなう勇気
である。
戦争には肉体的困苦と心労が伴うから
体力と心力が必要で
そのためには相当の知性が必要だ。
「極くありふれた、大した成功とは
言えないような場合についてみると、
そこには必ず知性の不足が
際立っているのである」
いきなりガーンである。
そうやなあ、われわれ凡人は
そうやなあ (ノ_・。)
予期しない不断の闘争に
堪えるためには2つの特性が欠かせない。
1.精神的瞥見(クゥ・ドウィユ)
はなはだしく不分明な
事態のなかにあっても、
真実を照破するだけの光を
保有しているような知性
2.果断
このともしい光に頼って
行動するところに勇気
1は、
「尋常一般の精神的眼光をもってしては
とうてい見ることのできない真実、
或は長時の考察と熟考の末に
初めて見ることのできるような真実を
迅速的確に把捉することに
ほかならない」
まさに天才のゆえんですね。
2は
「動因が十分でない場合に、
疑惑に基づく苦悩や躊躇による
危険を除去することを本務とするような
心的特性のことである。」
「戦争を包む雰囲気を構成するものに
4つの要素がある、すなわち―
危険、肉体的困苦、不確実
および偶然である。…
戦争という重苦しい雰囲気のなかで、
確実な行動によって
成果を収めるためには、
上位と知性の並々ならぬ力を
必要とすることが判る。…
遂行力、頑強、堅忍、情意
および性格の強さ・・・である。」
「軍の士気が良好で
将兵が気安く戦っているあいだは、
指揮官が戦闘の目的を達成するために
大なる意志力を発揮する機会は
めったに生じない。
しかし戦況が困難になるにつれて
もはや事が順調に運ばなくなり、
潤滑油の切れた機械さながらに、
機械そのものが抵抗し始める。
するとこの抵抗を除去するために
指揮官の大なる意志力が必要になる。
…抵抗とは、我が方の物理的および
精神的諸力が次第に衰退しつつ
あるという全般的印象のことであり、
また血なまぐさい戦闘に斃れる
我が方の犠牲者の
無残な光景のことである。
指揮官はかかる印象、
かかる光景にまず自分自身の
心のなかで堪え、
更にまたすべての部下の心をも
これに堪えしめねばならない。
…そのときこそ将帥の胸に燃える炎
彼の精神の光明は、
いったん消えるかに見えた決意の炎と
将兵の心に宿る希望のはつかな光明とを
再びあかあかと点さねばならないのである。
将帥がこのことを為し得る限り、
彼はなお将兵に命令し軍を指揮することが
できるのである。
…だから指揮官が
すぐれた功業を志す限り、
彼の勇気と心的諸力が
闘争において克服せねばならないのは、
まさにこれらの重圧である。
かかる重圧は、
軍が大となるにつれてますます増大する。
それだから指揮官が
常にこれらの責任の負担に
堪えようとするならば、
彼の心的諸力は指揮官としての地位が
高くなるに従って
ますます増大せざるを得ないのである。
…激しい闘争のさなかに
人間の心を占める高尚な感情のうちで、
名誉と功名を憧憬する念ほど
協力でかつ常住的なものはない…
この感情は、その起源を糺せば、
人間性に発する最も高尚な
感情に属するものであり、
また戦争においては、軍という
巨大な集団に魂を吹き込む
本来の息吹にほかならない。
ほかにも…例えば祖国愛、
理念に対する熱情、…
或は諸般の感激等がある。」
ほとんど説明のいらない明快で
詩情にも富んだ名文である。
これ以上は、本のページを繰って
味わってもらいたい。
ではまた…
経営コンサルティングと会計事務所の融合
税理士コンサルタント 小笠原 でした。