ドラッカー経営を中小企業で実践する 第33回「経営者のスキル - コーチング力」
2026.04.02
お客様の支援
要約
1 コミュニケーション力は経営者のみならず人に不可欠のスキルで、人生に飛躍的成果をもたらしうる
2 コーチングの中核技法は、傾聴と質問であり、またコーチとしてのマインドセットが要る
3 コーチングは外部セミナーで習い、コミュニケーションの1パターンとしていつでも使えるようにする
プロローグ
コーチングとは、対話を通じて相手の能力や可能性を引き出し、目標達成を支援する人材育成の手法です。アメリカの経営学者カッツは、マネジメント・スキルとして技術的・人間的・概念的の3つを挙げましたが、人間的スキルの中核としてコーチングは位置づけられます。個人的経験でも最も有用な学びの一つでした。そこで皆さんにコーチングの内容、有用性、学び方を伝えたいと思います。
1 コーチングの内容
経営には仕事と人間の二つの側面があります。経営者・管理者は人間的な側面抜きではよき経営はできません。経営では、人間的な配慮、コミュニケーションの技術が不可欠となります。
コミュニケーションの根本は、相手をよく理解することです。そのためには特別の注意が必要です。コーチングでは、相手を支援するために効果的なコミュニケーション技術を学びます。コーチングは私(コーチ)と対話の相手(クライアント)の間で行なわれます。コーチングを用いるのは、主として部下の目標達成のサポートのための面談(1on1)でですが、広く様々なビジネスシーンで使えます。その内容は、ラポール(信頼関係)・傾聴・質問・承認・フィードバックの5つで構成されます。
ラポールとは自分と相手の間に信頼関係を築くことです。コーチはまず話しやすい雰囲気を創ることに努めます。
話が本題に入れば、まず傾聴します。傾聴とはすなおに誠実に相手の話を聴くことです。先入観や憶断抜きで聴くことが肝要です。傾聴には相手をよく観察することも含まれます。なぜならコミュニケーションに必要な情報の93%は言葉以外の語調・しぐさといった要素にあるからです。
傾聴で意識することは、最後まで話を聴くこと、あいづちやうなずきなど聴いていることを示すリアクションすること、話を促すことなどです。話を聴いてもらえれば人はうれしいものです。自尊感情が高まり、思考を促進します。コミュニケーションの達人は総じて聴き上手です。
話を聴いたら適確な質問を打っていきます。質問は問題解決の要で、コーチングにおいても同じです。質問では、相手の思考をさらに進めさせるために、自由に答えられる質問をしていきます。これをオープン・クエスチョンと言います。ビジネス・コーチングでは一般に、GROWモデルといって、ゴール→現実(リアリティ)→選択肢(オプション)→意思(ウィル)の順で話を進め、その段階ごとに質問をしていきます。よき質問はよき思考、よき答えを生み出します。深掘り、他にないか、まとめるとどういうことかなどは代表的な質問です。
コーチングでは、相手に話をしてもらうことで、相手の思考を促し、気づき、問題整理、行動の決意を導き出します。あくまでも相手本位のコミュニケーションです。そして傾聴と質問をサポートするものとして、承認とフィードバックがあります。承認とは、あなたを認めているというシグナルです。フィードバックとは、コーチの感じたことを伝えることです。特にフィードバックには強力な力があるので、伝え方には注意が必要です。
さてコーチングをする場合、コーチには、答えは相手に中にある、コーチはそれを引き出す、そのために100%相手の味方であるという心がまえ、マインドセットが必要になります。
2 コーチングの有用性
他者に話を聴いてもらうことは、人に心理的な満足と安心を与え、信頼関係を強めます。それゆえ、コーチング技術は、ビジネスを始め、広く人間関係をよくする、とても効果的なツールになります。
私がこの連載を通じて訴えてきたことは、経営の成功は顧客の問題を効果的に解決することにより、それは顧客に訊き、サービスの仮説を立て、試行錯誤の中でそれを検証しつづけていくことで収められるということです。そのためにはメンバーが自由闊達に意見を言えるような風土を築くことが不可欠であり、その根源は経営者・管理者が話をよく聴くことにあります。そしてそのための具体的なコミュニケーションのあり方がコーチング技法なのです。こうした組織を『学びつづける組織(Learning Organization)』といい、経営者がめざすべき風土です。
3 コーチングの学び方
コーチングはすぐれて体感的な技法ですから、セミナーに出て学ぶことが必要です。弊社(御堂筋税理士法人)でも定期的に開催していますので、興味があればご参加ください。
コーチングを学んだら、即座に会社でそれが習慣になるまで実践します。そのためにはメンバーにもそのことを伝え協力してもらうのがよいでしょう。また、組織全体でコーチングを学ぶことです。
まとめ
紹介したように、コーチングは社内外を問わずビジネスで非常な成果を発揮します。それゆえぜひコーチングのスキルを身につけてほしいと念願しています。
【コーチングの全体像】
