御堂筋税理士法人創業者ブログ

 要約

1 人材育成の70%はOJTによる

2 OJTを行なうには、まずそのしくみを確立すること

3 そしてトレーナー(上司)を育てること

4 トレーナー教育では、ティーチングとコーチング(コミュニケーションスキル)が重要である

4 上司は人を育てることに情熱をもつことが必要である

プロローグ

 「人材の育成の70%はOJTによる」(ロミンガー)、「大人の学習は経験による」(デイヴィッド・コルブ)など著名人たちの言葉を借りなくとも、人が経験により育つことは自明です。しかし、せっかくの経験も上司の関わり方によって身につき方が格段ちがうのではないでしょうか。今回は人材育成の基本であるOJTのあり方を考えます。

1 OJTの概要

 OJTは“On the Job Training”の略です。それは仕事によって人を訓練し育てるということです。人は見よう見まねで学んでいきます。世の東西を問わす、いにしえより職業教育は、丁稚修行、アパレンティスシップによって来ました。「俺は教えん、知りたかったら盗め」といった昔の板前の世界はさすがに流行りませんが。

 OJTでは、人材育成のストーリーとプログラムがあり、それをトレーナー(先輩・上司)が濃密に関わりながらトレーニー(本人)を育てるのです。「してみせて、言って聞かせてさせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」と言われた山本五十六海軍総司令官のお言葉は端的にそのあり方を示す名言です。

 OJTでは、トレーナーの教える技術(ティーチング)と1on1(個人面談)でのコーチングの技術が求められます。

1 OJTのしくみを確立する

 OJTを進めるには、会社はそのしくみを確立させなければなりません。そのためには、1 職能要件書を定める、2 それに従って上司と本人が相談して習得目標を定める、3 月次サイクルでの1on1のコミュニケーションを制度化する、4 職能の教授、訓練、同行や見守りなどを実施することが必要です。

 職能要件書とは、仕事に必要なスキル、知識、態度などを明確にしたものです。その上で上司と部下が1年なり半年の習得目標そのための手段を定め、そしてそれにしたがって時間を取り、コミュニケートして行きます。下記は私が作ったわが社の職能要件書です。

 

 上司は部下育成に時間の20%程度は投下しなければなりません。また、上司自体がトレーナーとしての技術や心構えを身につける必要があります。これは外部に出て学ばなければならないでしょう。教育の前に、先生を育てる必要があるのは当然です。中小企業ではえてして上司が地のままで部下に接しますから、できのいい部下しか育たないのです。

2 教え方(ティーチング)

 ティーチングの概要は次の表に示すとおりです。

【ティーチングの概要】

 

 ティーチングには仕事を覚えることと仕事の進め方を覚えることの2つの目的があります。人は自己成長の存在であり、成長意欲があります。従って自主性を重んじ、意欲を活用することがだいじです。

 そして上司は、教える手順、内容、教材を用意し、説明する→させてみる→ふり返らせる→反復させて習得させていきます。教えるにあたっては、自分で体験するOutputの場面をできるだけ多くします。そして、日報、レポートなど自省とまとめの機会を作って、上司が本人の状況を確認できるようにします。

3 トレーナーの心がまえ

 かつてはパワハラまがいの育て方もあったわけですが、昨今では野球の花巻東高校の佐々木監督などのように、自主性を重んじ、ほめて長所を活かすということが効果的だと考えられています。もちろん私もそうだと思いますが、そこに次の二つのことを付け加えたいと思います。

  • 相手の魂を掻き抱き、相手の成長を願って取り組む。

これはわが師、森信三先生の名著『修身教授録』中の言葉です。アメリカの教育哲学者、ジョン・デューイは、教育とは明日の社会を創ることであると述べています。けだしそのとおりだと思います。

(2) 一流になるのは才能によるのではなく、練習による

マシュー・サイドの『才能の科学』によれば、どのような世界でも一流になるためには、年間1,000時間×10年の訓練が必要だそうです。ローマ時代のユダヤ人思想家、フラビウス・ヨセフスは「ローマの兵士にとっての軍事訓練は、流血なしの実戦であり、実戦は流血を伴う訓練である。ローマの兵士は、まるで武器を手に生まれてきたかのように訓練と演習に励む日々を送っている」と書いています。一人前になるためにはそれだけの精進が必要なのです(それを求めない人には無用の話ですが)。                    

 ドラッカーは、「人の成長は常に自己啓発による。その場合、自己啓発の最高の手本は、上司の取り組む姿である」と述べ、さらに「いかなる職業においても、そこで最高の業績をあげている人達は、自らが訓練し育てた人のことを、自らが残すことのできる最も誇るべき記念碑と見ている。」と述べています。こころしたいものですね。

 企業は人によってその業績、将来が決まります。枝葉を切り落としていうと、経営でもっとも大切なことの一つは人を育てることです。そしてそれは社員と会社に大きな果実をもたらすのです。躊躇せず人を育てることに粉骨砕身してください。

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