ドラッカー経営を中小企業で実践する 第37回 経営者のスキル - 帝王学
2026.05.02
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要約
1 組織は、トップ・リーダーの人格で決まる
2 それゆえトップ・リーダーは人格を高めなければならないが、その要諦は『帝王学』である
3 また人は、フォロワーシップも持たなければならない
1 ドラッカーの言葉
ドラッカーは『マネジメント』の中で、「組織が偉大たりうるのは、トップが偉大だからである。組織が腐るのはトップが腐るからである。『木は梢から枯れる』との言葉どおりである。従って、範とすることのできない者を高い地位につけてはならない。」 と明確に述べています。
そして、経営管理者(上級部長以上の人たちのこと)に求められるのは『真摯さ(Integrity)』だと述べています。真摯さには、その人が、①一貫性、 ②高い倫理基準、 ③信頼性、 ④統合性・全体性を持っているといったニュアンスが含まれます。
さらに、私が敬愛してやまないチェスター・I・バーナードは、リーダーシップの本質は、道徳的創造性であるとして、次のように述べています。「創造職能がリーダーシップの本質である。それは管理責任の最高のテストである。なぜなら、創造職能は、これを立派に達成するためには、リーダーの見地からみて個人準則と組織準則とが一致しているという「確信」の要因を必要とするからである。」 つまりリーダーの価値観が、組織の価値観にそのまま映し変えられるのです。それはどのようなものでしょうか?
2 帝王学の意義
私は一時期、四書五経を始め、史記、三国志、十八史略など、中国の古典を多読した時期がありました。それは英雄たちの価値観、いわゆる『帝王学』とは具体的にどのような考え方や行動特性なのだろうか探求したくなったからです。以下に掲げる項目は、その結果、私が『帝王学』の教えと特定したものです。
□ 1 師をもち、諫臣、外部ブレーンをもつ
□ 2 日々人格を高めるべく精進している
□ 3 理想があり構想がある -人を幸せにするねがい
□ 4 永続の基盤をつくる
□ 5 よく聴き裁いて、着実に事をなし、時に果断する
□ 6 手本を示す
□ 7 私欲がなく、質素倹約
□ 8 言動を慎む
□ 9 広く人材を登用し、信じて仕事を任せる
□ 10 礼をもって部下に接し、好悪・怒気を顕わさず、和顔愛語に努める
□ 11 信賞必罰で、人を公正に処遇する
□ 12 平時にぬかりなく、窮地にも望みを失わない
□ 13 諦観をもつ
□ 14 人を育てるを本とする
□ 15 後継者を育てる
□ 16 晩節を汚さない
いかがでしょうか?ご自分で上のような思考、行動ができているかチェックしてみてください。
帝王学を学ぶ良書は、伊藤肇の『現代の帝王学』でしょう。これは唐の最盛時、玄宗の時代(貞観の治と呼ばれた)の政治のあり方を書いた『貞観政要』を元に、明君のあり方、条件を述べたものです。
その要諦は次の3つです。
1 師を持つ
2 諫言を辞さない部下を持つ
3 社外のブレーンを持つ
さて、本記事をお読みのリーダーであるあなたにはこの3つが備わっているでしょうか。最大のポイントは、あなたを諫める部下がいるかどうかです。人はいくら優秀でも、しょせん全知全能ではありません。あやまりもいっぱいしでかします。そんなとき、軽挙妄動に走らないように、諫めてくれる部下が必要なのです。もしいないとすれば、それはふだんのあなたの態度や姿勢が、それを許さないからです。
そのためにこそ、自らの人格、考え方の変容が必要で、そうであるがゆえに修養が必要なのです。そのためには、人は必ず『師』が必要になります。
不肖、私も生来、感情的になりやすい性格で、これではいけないと自分なりに努めてきたつもりです。おかげさまで上記の3つの条件を満たすことができ、なんとか経営の任を務めてくることができたと思っています。
3 部下たるものの要諦
一方、部下たる者の要諦もだいじです。なぜなら人のキャリアは、必ず部下から始まりますし、またトップ以外の管理者は上司でもあり、部下でもあるからですし、トップはよけいに部下たる立場の修行が必要だからです。下記は、私が同時期に同定した、部下たる立場のあり方です。参考にしてください。
□ 君への忠と輔
□ 民の安定と教化-内政に対するマネジメント力
□ 外交での礼儀と戦略
□ 人材を惹きつけ、広く登用する
□ 人に対する公正な見方と処遇
□ 同僚とのコーオペレーション
□ 情勢・時期・ものごとの理・人の心理(天・地・人)に対する深い洞察力
□ トップへの提言
□ トップへの諫言を辞さない
□ 徳の修養
□ 私生活の質素さ
□ 義に篤い
□ 出処進退を潔くす(トップが輔するに値しないと思ったら辞する)
〈参考〉帝王学を学ぶ良書の紹介
| 本のタイトル | 著者 | 内容 |
| 大學・孝経・中庸 | 孔子 | リーダーシップのエッセンス |
| 論語 | 孔子 | 聖人の箴言 |
| 孟子 | 孟子 | 王道政治 |
| 荀子 | 荀子 | 孔子の思想の現実論的承継 |
| 韓非子 | 韓非子 | 理想は理想、人間扱いは現実重視 |
| 淮南子 | - | 淮南王劉安編纂の道家中心の百科全書 |
| 史記 | 司馬遷 | 前漢までの中国史の英雄列伝 |
| 貞観政要 | 呉競 | 帝王学の肝要 |
| 説苑 | 劉向 | 漢代に編集された前賢先哲の逸話を記録 |
| 三国志 | 陳寿 | おなじみ、曹操・劉備玄徳・孫権の物語 |
| 武教全書 | 山鹿素行 | 儒学に基づいた武士のあり方 |
| 読史余論 | 新井白石 | 長期政権の本は人事の処遇 |
| 言志四緑 | 佐藤一斎 | 西郷隆盛公が座右の書とした陽明学的人生訓 |
| 日本外史 | 頼山陽 | 同上 |
| キュロスの教育 | クセノポン | ドラッカー推奨のリーダーシップの教科書 |
| アレキサンドロス東征記 | アッリアノス | 男意気と友情そして勇敢さ |
| ローマ人の物語(8,9,10,11) | 塩野七生 | カエサルの物語。感動的で勇気がわく |
| 『君主論』『政略論』 | マキャベッリ | きれいごとはなし、徹底的に現実を見据える |