ドラッカー経営を中小企業で実践する 第38回 経営者のスキル - リーダーシップを高める 経営人格の向上法
2026.05.02
コンサルティング
要約
1 リーダーは自己のリーダーシップの有効性を評価しなければならない
2 リーダーシップを阻害の阻害要因を特定し、日々ふりかえりと修養により人格をたわめていくこと
3 修養の中心課題は、怒りの制御である
1 あなたのリーダーシップを阻害している要因は何か?
あなたはリーダーとしての現状をどう評価しますか? 評価はあなたの『ふりかえり力』によります。ふりかえり力とは、「日々の仕事や生活での自分の言動がどれだけ効果的であったかを自省し、より効果的になっていくために言動を修正していく能力」をいいます。
ふりかえり力のあるなし、強い弱いは、その人の思考特性によります。問題があった場合に、原因が自分にあるという人と相手にあるという人がいます。後者の人は思考特性上、ふりかえりができません。常に相手が悪いわけだからです。
だから、ドラッカーは真摯さについて「最初から持っていなければならない」と言っています。『EQ(感情的能力)』の著者、ダニエル・ゴールマンは、それは修正できると述べています。私自身はドラッカーの言う方が現実的だと感じています。
あなたにふりかえり力があるとして、ではあなたのリーダーシップを阻害している要因はなにですか? 決断力、公正さ、傾聴力など様々な要素がありますが、長年生きていれば、大方それは何か自覚しているのではないでしょうか? はっきりしなければ、家族や社員に訊いてみることです。360°フィードバックという方法がありますので活用ください。
しかし、私が思う根本的な克服課題は、怒りの感情のコントロールです。なぜなら、これが、社員が話しやすい組織の心理的安全性を作っているからです。
2 具体的な修養の方法
どうすればリーダーシップの課題を克服できるでしょうか? その方法として『修養』があります。修養とは、精神を錬磨し、優れた人格を形成するように努めることです(広辞苑)。「己れを修めれば、人は治まる(『大學』)」わけです。
修養は、実際にはどのようにするのか? 古来、東洋では、読書にいそしみ、師に学び、師友(師を共にする人)と交わり、実際に人格に触れて認識を深めていくとされています。また禅では座ります。
自分にあった方法で行なえばいいのですが、そもそも自分自身の悪を許しがたいと感じることが出発点です。そうであるならば、日々ふりかえり、反省をし、失敗への対処法をイメージし再発防止を誓います。
その上で『祈りと誓い』をします。自分のことを披歴するのは恥ずかしい限りですが、私は毎朝、メディテーション(瞑想)の形式で観想をなし、言葉を唱えます。それらが潜在意識に打ち込まれ、日々具体的な言動となって現われてくればよいのです。
私の場合には、自律訓練法のエクササイズの取り入れながら、身体各部の点検と感謝、『中庸』(中国の古典で精神を穏やかに保つ方法)の教え、『五省』(江田島兵学校の日々の反省項目の教え)、『発菩提心』(自分の悪の特定と仏さまへの誓い)、個人的に決めた四つの祈りと誓いを心の中で唱えていきます。
時間は30分程度掛かりますが、習慣になると欠かせないものとなります。初学者があれこれ話をするのは僭越ですが、ポイントはやはりどれだけ強く想うかです。崇敬する道元師や親鸞聖人の本拝読んでも、自らを悪人と規定する凄まじさには圧倒されます。
祈りと誓いの内容が守られたかは、日々記録します。アメリカ建国の立役者、ベンジャミン・フランクリンは『自伝』の中で、13の徳目を選び週替わりでそれらを守る修養を重ね、また違反回数をカウントしていたと述べています。このようにして、少しでもなりたい自分、メンバーや家族からなってほしいあなたに近づくように精進していくのです。
今読んでいる、20世紀を代表する神学者のラインホールト・ニーバー師の『人間の本性』に、人間は理性と動物的魂の合成物であり、神に近づく可能性と、限りない悪を犯す危さとが兼ね備わっていると書かれています。
リーダーは、組織の命運を握る存在です。人格の陶冶をし続けることが肝要ではないでしょうか。私も30名の経営者の方々に集まっていただき、読書課題と意見交換を通じ、この問題に取り組んでいるところです。
【本テーマに関連した役に立つ書籍の紹介】
| 本のタイトル | 著 者 | 内容 |
| なぜ人と組織は変れないのか | ロバート・キーガン | 自己変革の実践テキスト |
| EQリーダーシップ | ダニエル・ゴールマン | 感情のコントロールを身につける方法 |
| サーバントリーダーシップ | ロバート・K・グリーンリーフ | 最高のリーダーシップの教科書の一冊 |
| リーダーになる | ウォレン・ベニス | リーダーシップ論を、リーダーとは何かからリーダーになる道筋に変えた名著 |
| 失敗の科学 | マシュー・サイド | 学習できない組織のメカニズム |
| 多様性の科学 | マシュー・サイド | 多様性を認める組織が高い成果を挙げる |
| 意思決定5つの誘惑 | パトリック・レンシオーニ | 経営者の陥る思考障害 |
| なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか | ロバート・ギーガン | 内省とフィードバックだけが自己変革を可能にし、リーダーを成長させ、高業績に導く |
| 修身教授録。 | 森信三 | 道徳教育はこれ一冊でよいと言わしめた名著 |
| 「原因」と「結果」の法則 | ジェームズ・アレン | 自分が変われば運命が変わる |
| フランクリン自伝 | ベンジャミン・フランクリン | アメリカ人の修養の告白自伝 |
| 怒りについて | セネカ | 怒りのコントロール法 |
| 大学 | 宇野哲人訳注 | 己を修めれば人は治まる |