御堂筋税理士法人創業者ブログ

要約

1 POST経営は、経営計画を中心として、学び続ける組織を創り、高業績をめざす。その場合、何をなすかがMIPQであり、どう進めるかがSMILESである。
2 SMILESとは、高業績化の戦略仮説を、高速のPDCAサイクルで実現していくしくみである。
3 SMILESとは、戦略×数字×会議×思考×実行→成果のプロセスをいう。これは掛け算であり、どれか一つが低くとも業績はあがらない。
4 その中心に会議がある。会議を報告の場から仮説の検証と意思決定の場に変えることが要諦である。
5 会議の質は数字の解像度とメンバーの思考力で決まり、成果は日々の確実な実行によってのみもたらされる。

1 SMILESの意義 ― 戦略は実行されてはじめて成果になる

  わたし流のドラッカー経営思想、POST(計画・組織・風土・育成)の中身がMIPQ(マーケティング・イノベーション・生産性・品質)であり、進め方がSMILES(戦略・数値・会議・思考・実行・成果)である。
本連載は、回を重ね、経営計画中心の経営、戦略からMIPQまでを述べてきた。だが成果を挙げるための根本課題は、立てた戦略が実行され、実現されるかどうかにある。経営計画が絵に描いた餅に終わるのは、たいていPDCAを回すしくみがないからである。
そのしくみをSMILESと呼ぶ。戦略(Strategy)を数字(Metrics)・会議(Interaction)・思考(Logical thinking)・実行(Execution)の4つにより高速で回し、成果(Success)に至る道筋である。
肝に銘じてもらいたいのは、それらが足し算ではなく掛け算だということである。よい戦略があっても、数字がなければ検証できない。数字があっても、会議が報告の場のままなら意思決定は生まれない。決めても、実行されなければ何も変わらない。どれか一つが低ければ、他がいくら優れていても業績はあがらないのである。

2 SMILESの五つの要素

 S 戦略 ニッチでNo1に選ばれるための仮説を立てる。誰のどのような問題を解決するのか、提供するものの圧倒的優位性は何か、自社の制約資源をどう解放するのか。そして何より、実験と検証ができるところまで具体化されているかを問うこと。
 M 数字 数値制御されない経営は、決して成功しない。分析と洞察ができないからである。早く正確な月次決算、売上の先行管理、経営のコックピット(KPI)、製品群・顧客群別の限界利益などの分析資料を揃えること。
 I 会議。 会議はPDCAの効果性を決定する。利益を生み出す装置であり、報告の場ではなく意思決定の場である。同時に、次の経営者を育てる場でもある。
 L 思考 良質な意思決定は、参加メンバーの思考力による。財務知識と数字のセンス、問題解決の手順、論理思考、アイデア創出、ふりかえり力。そしてドラッカーのいう真摯さ、すなわち価値観が必要である。
 E 実行 実行を担保するものは、コミットメント、即行(クイック・レスポンス)、時間管理とPDCAの習慣である。

3 SMILESへの取り組み

さて経営のPDCAは会議に焦点を合わせわれるのだが、どこから手をつけるかというと、資料からだと言いたい。まず、決算予測型PL、販売と価値創造の活動と成果を数値化した経営のコックピット、そして戦略の実行を確認する目標管理シートを先立ってしっかりと作るのである。
数字も思考も実行も、すべては会議という場で交わる。効果的な会議には4つの要件が必要である。① 業績・比較・変化・異常点・原因が読み取れる解像度の高い資料、② メンバーの分析力とコミュニケーション・スキル、③ 効果的な進行、④ 心理的安全性である。自由闊達に意見の言えない会議は、どんな資料を揃えても意思決定の場にはならない。そこではトップマネジメント自身の感情制御力が問われる。
  さらに、外部者を会議に参画させることを勧めたい。身内だけの議論は、いつのまにか前提を疑わなくなるからである。そのうえで目標管理シートを使い、課題ごとに月次のPDCAを回してほしい。

4 SMILESで取り組むこと

 そこで実践取組みとして、次のことをしてもらいたい。
① 正確な月次決算を、早く出せるようにする
② 経営のコックピットを作り、売上の先行情報とKPIが取れるようにする
③ 毎月、経営計画を検証し、意思決定をする経営会議を行なう
④ 外部者に会議に参画してもらう
⑤ メンバーの目標管理についてのふりかえり力を高める
⑥ メンバーの数字を見る力、論理的に考える力を高める
⑦ メンバーの会議における報告・質問・応答・対話の力を高める
⑧ 会議を報告の場から意思決定の場へシフトさせる努力を続ける
⑨ 会議の心理的安全性を高めるため、トップの感情制御力を高める
⑩ メンバーの時間管理とPDCA力を訓練し、課題実行力を高める

ドラッカーは、マネジメントは実践であり、成果によってのみ検証されると述べた。記事も読んで終わりでは、何も変わらない。SMILESは難しい理論ではない。数字を揃え、会議を意思決定の場に変え、決めたことを実行する。この当たり前を、高速で回し続けるだけなのである。

  本連載は、今回が最終回となる。4年余、50回にもわたってお付き合いいただいた皆さまに、心より御礼を申し上げたい。私はドラッカーを経営の教えとし、さらに森信三先生を人間学の師として、経営の考え方を探求・推進してきた。50年にわたる、よき経営への憧憬は尽きず、私の興味は尽きることがない。なにわのドラッカーになりたい男の経営論はこれで終わるが、せっかくのことなので、10月からは下記案内の『ドラッカー経営実践講座』を開きたいと思っている。ご興味がおありの方はぜひご参加いただきたいものである。
最後になるが、読者の皆様の益々のご活躍、そして事業のご発展を、心より祈念して本連載の筆を置きたいと思う。長らくお付き合いいただき、大変ありがとうございました。

以上

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