御堂筋税理士法人創業者ブログ

とある信用調査会社での連載記事のおすそ分けです。

「ドラッカー経営を中小企業で実践する
第3回 中小企業経営のポイントその2 ― 経営を数字で見える化する」

要約
1 中小企業のマネジメントで二つ目に大事なことは経営を数字で見える化することである
2 数字の見える化は、まず管理会計方式で月次決算をすることから始める
3 しかし、経営に必要な情報は月次決算の数字ではなく、経営の活動と成果の関係の見える化にある

1 プロローグ
 皆さんこんにちは。御堂筋税理士法人の小笠原です。第1回でお話ししたように、中小企業の経営では、① ニッチNo1戦略、② 数字による経営の見える化、③ 経営者・幹部がマネジメントの仕事をする、という3つがポイントでした。今回はポイントの二つ目、『数字による経営の見える化』についてお話をしたいと思います。私は、自分が会計人であることもあってか、ドラッカーのような偉大な経営思想家が、経営における情報の重要性、ことに数値情報の重要性をかくも強調しているところに、非常な尊敬の念をもっているのです。

2 経営の数字による見える化の前提は、管理会計による月次決算実施
 ドラッカーは、「小企業が必要とする数字は、経理から得られるものではない」と述べています。それはどういう意味なのでしょうか?おいおいお話をしていきましょう。
とは言うものの、「経理から得られる数字」、すなわち月次決算の利益、つまり損益計算書を経営の役に立つようにしておくことは、数字の見える化の前提となります。損益計算書は、一般には次のような構成で表わされています。

【損益計算書の構成(制度会計)】
売上高   XXXX
製造原価  XXXX
売上総利益 XXXX
販管費   XXXX
営業利益  XXXX

 この表示法は会計基準のルールに従っていて、決算書はこの形式で作ることが義務づけられています。ところがこの損益計算書、実は経営の資料としては役に立たないのです。そのために私はお客様には次のような構成のものを使うようにお勧めしています。

【管理会計による損益計算書の構成】
売上高  XXXX
変動費  XXXX
限界利益 XXXX
固定費  XXXX
利 益  XXXX
 
 両者はどこに違いがあるのでしょうか?それは費用の分類の方法にあります。その違いは製造業の場合に顕著です(流通業ではどちらでも答えは同じになります)。
 制度会計では、費用は作るための費用と売るための費用に分かれています。一方管理会計では、それらは売上の水準に比例して変わる費用と、変わらない費用とに分かれています。
 管理会計の算出方法は、利益=売上高×限界利益率―固定費という簡単な方程式で表されます。私はこれを利益方程式と呼んでいます。これがポイントなのです。なぜなら、利益方程式を理解しておくと、売上高、限界利益率、固定費の条件の変化により利益がどう変わるかたちどころにシミュレーションすることができるようになるからです。これが数字に強くなる原点なのです。

3 「経理の数字では経営できない」の意味
 ということで損益計算書では、利益=限界利益-固定費と表わすことができます。ところでビジネスというものを簡単な図式で表わすと次のようになります。私はこれをビジネス・モデルと呼んでいます。

【簡単なビジネス・モデル】
インプット → プロセス → アウトプット
   ↑  ←  ←  ←  ←  ↓

 ここでインプットとは人・もの・金の経営資源を言います。アウトプットとは売上や限界利益をいいます。アウトプットを限界利益つまりわが社は新たに創り出した付加価値と考えますと、インプットは固定費となります。そうすると損益計算書が表わしているものは、アウトプット-インプット=利益なのです。それはそれでいいのですが、一つ大きな問題があります。それはこういう表わし方では、肝心のプロセスの効率がわからないということです。つまりプロセスがブラックボックスなわけです。ここで“肝心の”と言っていますのは、これこそが生産性の秘訣だからです。
 それゆえ、ドラッカーが経営に必要な情報は、経理の情報ではないと言っているのです。では必要な情報とは何なのでしょうか?まずはプロセスの変換効率です。例えば営業の場合だと営業活動の量と質、生産の場合だと生産活動における稼働・品質・原価の状況などです。一言でいえば生産性です。
 生産性は、損益計算書のようにアウトプット-インプットの引き算ではなく、アウトプット÷インプットという割り算になるのです。それはインプット→アウトプットの変換効率を表します。その典型的な指標は、限界利益÷社員数、つまり1人当り限界利益となります。私はすべての経営指標の中で、この一人当り限界利益がもっとも重要な指標だと考えています。これは皆さんにもぜひ腑に落としていただきたいところです。
 次に皆さんの会社が生きている市場での皆さんの地位、例えばシェア、顧客の動向などです。これが皆さんにとってのヒントになるはずです。ドラッカーが機会を追求せよと言われているゆえんです。さらに、わが社の、それも優秀な人材がどのような仕事に割り当てられているかです。しかし、これは少し特殊な調査によるのかもしれませんね。
 ドラッカーのサジェスチョンを踏まえて、私はこの活動と成果の関係を見える化する資料として『経営のコックピット』なるものを使っています。コックピットとその作り方は、ドラッカー経営の私の解釈の中でも、とても重要なところですが、長くなりますので今回はこれくらいにして、次月じっくりとその中身を説明したいと思います。どうぞ楽しみにしておいてください。

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