御堂筋税理士法人創業者ブログ

万葉集、古今和歌集と巡ってきた

私の古歌の鑑賞の旅は、

ようやく新古今和歌集にたどり着いた。

 

 

新古今和歌集は後鳥羽上皇の勅命で

編纂された歌集

全20巻、2,000首弱で構成される。

 

時代は、平安朝最末期から

鎌倉時代へさしかかる頃である。

 

平家滅亡から、承久の変、

後鳥羽上皇の隠岐への遠流

頼朝の決起など

歴史が泰山鳴動した時期だ。

 

活躍する歌人たちは

西行、慈円といった出家者、

式子内親王、紫式部など女流、

定家、家隆などの編者たち、

さらに上皇御自らである。

 

私は、元々の僻目もあるが、

歌集の歌風に対しては批判的である。

 

なんか、

どこか非現実の世界に

飛んで行ってしまっていて、

現実の生活や人情の切迫感が

ほとんど全く感じられないからである。

 

それはさておき

印象に残った歌を挙げてみて

ふりかえりをしておこうと思う。

 

第1巻は「春歌上」

巻頭第一歌は

 

「み吉野は山も霞みて白雪の

 ふりにし郷は春になりけり」

(摂政太政大臣)

 

3

「山深み春とも知らぬ松の戸に

 たえだえかかる雪の玉水」

(式子内親王)

 

56

「あさみどり花もひとつに霞みつつ

 おぼろに見ゆる春の夜の月」

(菅原孝標女)

 

67

「雨降れば小田のますらをいとまあれや

 苗代水を空にまかせて」

(勝命法師)

 

見る視点、切り取った景色がいい。

めずらしく写実的で。

 

82

「思うどちそことも知らず行き暮れぬ

 花の宿貸せ野辺の鶯」

(藤原家隆)

113

「このほどは知るも知らぬもたまぼこの

 ゆきかふ袖は花の香ぞする」

(藤原家隆)

 

116

「山里の春の夕暮れ来てみれば

 入相の鐘に花ぞ散りける」

(能因法師)

 

198

「ほととぎすまだうちとけぬ忍び音は

 来ぬ人を待つわれのみぞ聞く」

(白河院御歌)

 

229

「真薦刈る淀の沢水深けれど

 底まで月の影は澄みけり」

(前中納言匡房)

 

268

「夕立の雲もとまらぬ夏の日の

 かたぶく山にひぐらしの声」

(式子内親王)

 

287

「この寝ぬる夜のまに秋は来にけらし

 朝けの風のきのふにも似ぬ」

(藤原季通)

 

292

「明けぬるか衣手さむし菅原や

 伏見の里の秋の初風」

(藤原家隆)

 

なんちゅうこともないが

ちっちゃいころ

よう泊りに行った

おじいちゃんの家があった

あやめ池を読んだ歌なので。

 

338

「夕されば玉散る野辺のをみなえし

 枕定めぬ秋風ぞ吹く」

(左近中将良平)

 

361

「さびしさはその色としもなかりけり

 真木立つ山の秋の夕暮れ」

(寂蓮法師)

 

362

「心なき身にもあはれは知られけり

 鴫立つ沢の秋の夕暮れ」

(西行法師)

 

363

「見わたせば花も紅葉もなかりけり

 浦の苫屋の秋の夕暮れ」

(藤原定家)

 

「秋の夕暮れ」が打ち続く「秋歌上」

新古今を代表する名歌

否定否定で色彩をより際立たせる

技巧の極致

全歌中の嚆矢である。

 

397

「ながむればちぢにもの思ふ月にまた

 わが身ひとつの峰の松風」

(鴨長明)

 

413

「秋風にたなびく雲の絶え間より

 もれいづる月の影のさやけさ」

(右京大夫顕輔)

 

625

「津の国の難波の春は夢なれや

 蘆の枯葉に風渡るなり」

(西行法師)

 

692

「かへりては身にそふものと知りながら

 暮れ行く年を何慕ふらむ」

(上西門院兵衛)

 

694

「新しき年やわが身をとめ来らむ

 隙ゆく駒に道をまかせて」

(大納言隆季)

 

702

「数ふれば年の残りもなかりけり

 老いぬるばかりかなしきはなし」

(泉式部)

 

春夏秋冬巡って

もうぼちぼち

お後がよろしいようで

 

811

「逢ふことも今はなきねの夢ならで

 いつかは君をまたは見るべき」

(上東門院)

 

そうですねえ。

 

新古今の巻は、

その後たくさんの恋の歌を経て

雑歌、神祇歌、釈教歌と続くが

あまりに歌が溢れかえって

ほぼ感覚がまひしてしまって

マーカーの跡も絶え絶えであった。

これくらいにしておこう。

 

経営コンサルティングと

会計事務所の融合

 

組織デザイン研究所&

御堂筋税理士法人

 

小笠原でした。

 


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