御堂筋税理士法人創業者ブログ

 御堂筋税理士法人の小笠原です。最近、ふとしたことから様々な日本の『道(どう)』についての本を読み続けています。

 その中で、とても勉強になったのが『茶道』の本です。私は不作法で、茶の湯など経験がありません。ただ、幾冊か本を読んで、併せてYou Tubeの動画を見ているだけです。

 最近、幕末の大老、井伊直弼の『茶湯一会集』という本を読みました。井伊直弼というと、私などはあの桜田門外の変で水戸浪士に切り殺されたことぐらいしか知りませんが、実は諸芸に通じた学識豊かな人で、特に茶道の大家であったということです。

 この本は、茶の湯の進め方の極意を綴ったものです。おかげさまで「茶の湯ってそういう内容だったのかあ」ということがよくわかりました。この本、現代仮名遣いにアレンジしていてちょっと物足りませんが、それでも原文の趣きは十分に味わえます。井伊直弼の茶の湯のさまざまなプロセスや決まりについての考え方が書かれていて、そこに現れている哲学的な考察に深く共感できました。名著ですね。

 日本の、諸道はどれも仏道修行、そしてそれを体現する禅の影響の濃いものですが、特に茶道はその最たるもののように思います。

 書かれている中で、客をもてなすための亭主のゆるがせにしない準備、しつらえの綿密さ、招かれた客の心がまえ、お見送りの姿勢など、なるほどかくはあるべきものかと深く心に刻みつけられました。なぜなら、茶道ではその場での態度は草庵の外に出ても、行住坐臥すべからくその態度で生き、暮らしていくもので、こうしたことは我々のビジネスのシーンなどで、そのまま大切なこととされるべきものだと感じ入ったからです。

 では、私がなるほどと心打たれたところをいくつか抜粋してご紹介しておきましょう。

茶の湯の会の趣旨
「茶湯の交会は、一期一会といいて、たとえば幾度おなじ主客交会するとも、今日の会にふたたびかえらざる事を思えば、実に我一世一度の会なり。去るにより、主人は万事に心を配り、聊も麁末なきよう深切実意を尽し、客にもこの会にまた逢いがたき事を弁え、亭主の趣向、何壱つもおろかならぬを感心し、実意を以て交わるべきなり。これを一期一会という。必々主客とも等閑(なおざり)には一服をも催すまじき筈のこと、即ち、一会集の極意なり。」

茶の湯はブッダの追体験
「宗易云く、小座敷の茶の湯は、第一仏法を以て修行得道する事なり。家居の結構、食事の珍味を楽しみとするは俗世の事なり、家はもらぬほど、食事は飢えぬほどにてたる事なり、これ仏教茶時の本意なり、水を運び、薪をとり、湯をわかし、茶をたてて、仏にそなえ、人にもほどこし、吾ものむ、花をたて、香をたく、みなみな仏祖の行いのあとを学ぶなり。」

掃除の意義
「掃除は数寄者の常行にして、怠るべからず。…扨(さて)、茶の湯の約定あらば、なおさら、隅々まで心を配りて、はき清むべき事」

飾りもので大切にすべきこと
「懸物よく懸かりたると、かからざると有りて、功者の客はこれを見る事なれば、大切に心得べき事なり。」

手を清めることの哲学
「露地にて、亭主の初の所作に水をはこび、客も初の所作に手水をつかう。これ、露地草庵の大本なり、この路地に問い問わるる人、互に世塵のけがれをすすぐ為の手水鉢にて、寒中にも寒きをいとわず汲みはこび、暑気には清涼を催し、ともに皆奔走の一ツなれば、亭主自ら致すべきなり」(南坊録)
「手水の事は、亭主自ら水を改め、心を尽したれば、客も手水をつかうこと、麁略におもうべからず、心頭のあかをすすぎ清むべきなり。」

参加者の心得
「腰懸にて、後の知らせを待つうち、相客同士、種々の雑談、席の批判、道具の善悪等論ずべからず、心中に亭主のこころ遣いを感じ、図らず今日の一会に逢う事をよろこぶべし。…庵内、庵外に於て、世事の雑(ぞう)話、古来これを禁ず。」

独座観念
「主客とも余情残心を催し、退出の挨拶終れば、客も露地を出るに、高声に咄さず、静かにあと見かえり出で行けば、亭主はなおさらのこと、客の見えざるまでも見送るなり、扨(さて)、中潜り、猿戸、その外戸障子など、早々〆立てなどいたすは、不興千万、一日の饗応も無になることなれば、いかにて客の帰路見えずとも、取りかた付け急ぐべからず、いかにも心静かに茶席に立ちもどり、この時にじり上りより這入、炉前に独座して、今暫く御咄も有るべきに、もはや何(いず)方まで参られるべき哉、今日、一期一会済みて、ふたたびかえらざる事を観念し、或いは独服をもいたす事、この一会極意の習いなり、この時寂莫として、打語らうものとては、釜の一口(いっこう)のみにして、外に物なし、誠に自得せざればいたりがたき境界(きょうがい)なり。」

 いかがだったでしょうか?私はこのことを、私自身もそうですが、わが社のメンバー諸君、特に管理部門に皆さんにぜひとも共有していただき、お客様が気持ちよくお越しいただけるようにしていきたいと思っています。

会計事務所と経営コンサルティングの融合

御堂筋税理士法人&組織デザイン研究所

ファウンダー 小笠原 でした。

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