御堂筋税理士法人創業者ブログ

以前から聞いてはいた

『西洋の没落』(シュペングラー著)

という本を読んでみた。

(分厚い、7センチ

本が届いた瞬間に

目がまんまるになった!)

2巻1,200ページ、上下2段組である。
しかも、西欧の思想家にありがちな、

恐ろしいほどの博識を示す。

こうした本を通読するのは、

私のような、小学生程度の

持続力しか持ち合わさない読者には

まさに難行苦行である。

読書速度 平均25ページ/時間だから、

読書に要した時間は50時間

この本が出されたのは1918年、

うちの母親が生まれた次の年。
第一次世界大戦が終わった年である。
刺激的な題名もあって、

バカ売れしたそうである。

いわゆる歴史哲学の本であるが、

松岡正剛さんも書いているように
評価定まらぬ、問題の書である。

恐ろしい知識量、独自の見解に、

私も同様の感想を持った。

西洋が深刻に自らの来し方、

あり方を反省するのは、
ユダヤ人虐殺と原爆の投下を

またなければならないが、
当時の厭世気分は、

うなずけるものがある。

とりあえず、章立てを示しておこう

第1巻 形態と現実
緒論
1 数の意味について
2 世界史の問題
3 大宇宙
4 音楽と彫塑
5 魂の像と生命感情
6 ファウスト的自然認識と

  アポロン的自然認識

第2巻 世界史的展望
1 期限と土地
2 都市と民族
3 アラビア文化の諸問題
4 国家
5 経済生活の形式界

結局、この本、何を書いてあるのか?
まず、文化文明の

勃興、発展、成熟、衰退には
必然的メカニズムが働き、

どの文化文明も同様だというのである。
エジプト、インド、中国、

ギリシア・ローマ、アラビア、西洋と。

その、相似の比較と例示がすごい。
(膨大な人名の羅列に

あっけにとられる。
人間って短い一生で

そんなに本の知識を蓄積できるものか?
ちなみに訳本では、

その一人一人について
概歴を紹介しているのだから

立派な編集だ)

そして、それは、貴族と僧侶階級の確立、
農村→都市の勃興、土地からの遊離、

無産階級の台頭
こうした中での革命、価値観の変化。

やがて、都市の住民は不妊化し、

人口が減少して、内部から文明は崩壊する。

そして、そこに登場してくるのは

独裁者というわけである。

世界の成り立ちの流れを
「成る」と「成った」に分け
その変化点の以前が文化、

以後が文明だという。

成るのは創造的過程だが、

一旦成ったとなると

文明化し、それは力動を失う。

そうして、弁証法のように
進化?発展?堕落・衰退を繰り返す。
トインビーの『歴史の研究』を
思い出させるような内容である。

文化や文明は、建築、芸術、学問、

宗教、政治、経済など

社会と生活のあらゆる局面に

その特徴がにあらわれる。

少し考えてみると

それはその通りだろう。

これからは、人間の創ったあらゆるものを

そのような視点で見てみよう。
きっと、より深く理解できそうだ。

これはいただきである。

ところで、世には

西洋文明は、ギリシア・ローマの

直接の正当嫡子のように思いがちだが、

決してそうでないと指摘されるが

これも少し考えればそれはそうだ。

ギリシア・ローマは

キリスト教とゲルマン民族によって

徹底破壊されたのだからなあ。

ルネッサンスのあと再発見されたわけである。

では、主にゲルマンに発する?

西洋文明はどういう流れになっているのか?

それが、ゴシック文化からルネッサンス

そしてバロック文化へと

花開いていった系図である。

そして、バロックで文化は終わった!?

そういわれると、

絵画も音楽もそれ以降

私の感覚では

見るべきものはない。

あとは、なんか目に見えない

残滓との闘争のような気がする。

そして、また、世界観を
ギリシア・ローマの『アポロン的魂』
エジプトやアラビアなどの『マギ的魂』
西洋の『ファウスト的魂』
と名づけたのも

それはそれ、なるほどという感じ。

ちなみに、ファウスト的とは
超人的な力を授けられて、

ファウストが自己分裂していく感じを言っている。

その思想には、
ゲーテの自然主義的な

有機体の成長的見方、
ニーチェの永劫回帰、
などの考え方の影響が強い。

まあ、私など、

目と脳みそもうつろに
ほとんど字面を

追いかけただけである。

その中でも時折、

自分に興味のある分野では
多少、思考力が働いた。
その一例が、

最後の貨幣や経済の記述のところである。

「『複式簿記は、

ガリレオとニュートンの体系と

同じ精神から生まれた。

…それはこれらの体系と

同じ手段によって、
諸現象をひとつの

たくみな体系にまとめている。

それは機械的思考の原理の上の

最初の宇宙と称していい。
複式簿記は、

のちに大自然研究者が

星の世界の宇宙を解明したと

同一方法によって、
経済世界の宇宙を

われわれに解明する。

…複式簿記は、あらゆる現象を

ただ量としてのみ理解するという、
論理的に行われた

基本思想に基づいている。』」

(誰の引用なのだろう?)

「複式簿記は、

『会社』を始発点とする

座標系に関する価値空間の純粋解析である。

ギリシア・ローマ鋳貨の許したものは、
価値の多いさをもってする

算術的計算にすぎなかった。

ここでもまた

ピュタゴラスとデカルトが対立している。
企業の積分ということを口にしてもいい。

そしてグラフ曲線は、

経済においても科学においうても、
同じ視覚的補助手段である。

ギリシア・ローマの経済界は

デモクリトスの宇宙と同じように、
質料と形相にしたがって

組み立てられている。
鋳貨の形をとった質料は

経済運動をになっているもので、
同一経済量の需要の大いさを

その消費の場所に押していく。

われわれの経済界は

力と質料にしたがって組成されている。…」

こういう感じで、決算書分析をするべきやな

ふと、ヒントをもらったし、

後押しをしてもらった感があった。

ちなみにシュペングラーは

元々数学者である。

何をいうたはるのか?

ギリシア・ローマ時代な、

貨幣を貯めるだけの世界である。
一面的で、静態的な経済社会。

しかし西洋社会では
文明の発達にしたがって、
財の創造活動がなされ、

それは
儲けた銭の計算と、

ため込んだ銭の測定という
立体的、動態的、

力学的、継続的な視点から
経済と会社という小宇宙を

シンボル的に

数的に把握しているというのである。
積分というのは、

年々の儲けが速度なら

それを積分した

貯め込んだ銭のあり高が

面積ということなのだろう。

それは、ニュートンが

宇宙の動き、重力を

加速度で数式化したのと同じであり、

ピュタゴラスやユークリッドのような

静かな図形の思考法でなく

デカルトのような

座標と関数のような思考法

だというのである。

なんともはや、へーっつ!?と思うのだが、

でも説得力がある。

してみれば、私の理解できない、

音楽や絵画の記述も
人を納得されるようなものかもしれない。
まあ、恐れ入りました!という感じ。

経営コンサルティングと会計事務所の融合

組織デザイン研究所&御堂筋税理士法人

小笠原 でした。

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