御堂筋税理士法人創業者ブログ

さて、源氏物語を読み終えて

ほっとしている反面、

意気揚々としていて・・・

 

それで

いきおいで万葉集を手に取った。

 

元来、詩ごころなど

さっぱり解せない私だが

日本の古典文学を

一応はなめようという思いには

万葉集はどうしても

挑まなければならない

高い峰である。

 

なんか、BSで

百名山をひたすら

走りながら登り続ける

田中何某君の姿が

自分がかぶる。

 

古来、詩というものは

人のおのが心情を表し、

読む人に感奮相生じしめるもの。

 

儒教でも、

ポエム集の詩経は

書経、礼記、春秋、易経とならんで

五経のひとつとされている。

 

さて、万葉集、

講談社文庫では、

訳注つきで全4冊の分量である。

北アルプス並みの高峰だ。

 

 

いきなり登ると

酸欠のぶっ倒れそうなので

ウォーニングアップに

解説書を一冊読んだ。

 

「小生らは、歌の上に常に

万葉集を宗としている。

 

それは、万葉人の歌い方が、

常に真実な心の集中からなされ、

現れるところは緊張の声調、

高古の風格となって、

われわれをして、常に頭をその前に

垂れしめるからである。

 

…万葉集の歌の命とするところは、

自己の真実に徹している

という点にある。」

なるほどなるほど・・・

 

さて、万葉集は、

仁徳天皇から、天武、持統、

文武、元明、淳仁天皇期までの

飛鳥、藤原、奈良京の時代にわたる

4,500もの歌を集めたものだという。

 

代表的歌人は

柿本人麻呂、山部赤人、

山上憶良、大伴家持などだが、

防人や少女たちの心の叫びも

多く収録される。

 

その面目は、

見たもの、感じたことを

ストレートに詩に表わしていることにある。

 

「写生が形似の接近から

更に深入りして、

ついに一点単純な至境に澄み入る

というところにある。・・・

それは、全心の集中より来るものであり、

全心の集中は切実なる実感より来り、

切実なる実感は

具体的事象との接触より来る。」

 

国学者、賀茂真淵は、

万葉集を貫く特徴をを

「ますらをぶり」と言った。

 

素朴・率直・剛健な

おとこぶりだということだが

おのこも おなごも そうである。

 

わたしは、これが好きである。

なぜと言われても困るが、

そういう健全なのに

憧れるのである。

 

思い出したが

高校2年生のとき

古典の時間、田中先生から

万葉・古今・新古今の

ちがいについて批評を書け

という宿題が出て

 

当時、映画批評に

かぶれていた

劣等生の小生は

なにを思ったか

ペンをかじって

断固、万葉を支持して

原稿用紙5枚の

くだらない文章を書いて

ほめられたことがあった。

 

爾来、50年

変らぬ心情である。

 

さて、いよいよ

万葉集の世界の

ページを開き

中に入っていった。

 

もちろん

いちいちペダンチックに

精読していったら

一年やそこらかかるわけで

まったくの斜め読みで

ふと目についたところだけ

きちんと読むてな感じである。

 

――――――――――――

 

あかねさす紫野行き標野行き

   野守は見ずや君が袖振る

(20) 額田王

 

ええなあ、額田王は、

率直で、色気がある!

 

春過ぎて夏来るらし白栲の

 衣乾したり天の香具山

(28) 持統天皇

 

おおらか、

子供の頃をすごした奈良の夏

快晴、快適な空気感が

この上もなく伝わってくる。

 

われはもや安見児得たり皆人の

 得難にすといふ安見児得たり

(95) 藤原鎌足

 

音読

われはもや やすみこえたり みなひとの

えがてにすといふ やすみこえたり

 

これは、また異質のすなおさ、

率直さの吐露である。

 

天武天皇を補佐して

大化の改新をなしとげた

藤原家の始祖、

中臣鎌足が、

天皇に送り込む女性を

ゲットした喜びを表現したものだ。

のんきなものである。

ほんとに信頼できるかわいい腹心である。

藤原家の礎を築いたのも判る!

 

淡海の海夕波千鳥汝が泣けば

 情(こころ)もしのに古思ほゆ

(266) 柿本人麻呂

 

びわ湖を逍遥していて

千鳥の鳴き声に

近江朝をしのんだ感慨である。

ゆーなみちどりながなけば・・・

なによりも声調が抜群だ。

 

桜田に鶴鳴き渡る年魚千潟

 潮干にけらし鶴鳴き渡る

(271) 高市黒人

 

音読

さくらたに たづなきわたる あゆちかた

しおひにけらし たづなきわたる

 

そのまんま、写生が生きる。

 

田児の浦ゆうち出でて見れば真白にぞ

 不尽の高嶺に雪は降りける

(318) 山部赤人

 

あまりにも有名、

雄大な風景画を見るよう、

銭湯に行ったみたいだ。

 

あをによし寧楽の京師は咲く花の

 薫ふがごとく今盛りなり

(328) 少弐小野老朝臣

 

音読

あをによし ならのみやこは さくはなの

におふがごとく いまさかりなり

 

奈良の都の繁栄ぶりが

目に浮かぶ。

 

世間を何に譬へむ朝びらき

 漕ぎ去にし舟の跡なきがごと

(351) 沙弥満誓

 

音読

よのなかを なににたとへむ あさびらき

こぎいにしふねの あとなきがごと

 

すでに入ってきた仏教観から

詠んだもの。

そのとおりでこころがさみしくなる。

 

もののふの臣の荘士は大君の

 任のまにまに聞くといふものそ

(369)

 

音読

もののふの おものをとこは おおきみの

まけのまにまに きくというものそ

 

大意

天皇に仕える男たるものは

大君のお言いつけのままに

うけたまわるというものですよ

 

すばらしいフォロワーシップの

表現である。

みんなで大声で唱和したのだろう。

今も昔も同じである。

ええなあ~

 

君待つとわが恋ひをればわが屋戸の

 すだれ動かし秋の風吹く

(488) 額田王

 

ふたたび、額田王、

やや技巧的でできすぎに感じるが

(中国のまねらしい)

風のいたづらに感応する情感がいいなあ。

好きである。

 

大和へに君が立つ日の近づけば

 野に立つ鹿も響(とよ)みてそ鳴く

(570) 麻田連陽春

 

意味

愛しい人の都へ帰還する日が近づいた

それに呼応するように

鹿が哀しく鳴きます。

 

愛しとわが思ふこころ速河の

 塞きに塞くともなほや崩たむ

(687) 大伴坂上郎女

 

うつくしと わがおもふこころ はやかはの

せきにせくとも なほやこぼたむ

 

塞きに塞くともなほや崩たむとは

なんともほとばしるような

女性の激情の表現ではないだろうか。

 

ひさかたの雨の降る日をただ独り

 山辺にをればいぶせかりけり

(769)  大伴家持

 

こんな日もあるよなあ、

6月のスケッチ風である。

 

銀も金も玉も何せむに

 勝れる宝子に及かめやも

(803) 山上憶良

 

中学校の教室の匂いを思い出した。

山上憶良はやや貧乏くさいが。

 

さて、万葉の長歌も

すてきなものが多い。

 

天皇の御世、御幸を

ことほぐ移動撮影のような

ものも多いが、

漢文調での記録、

レポート風のものも胸を打つ。

 

或る旅人が、

九州は松浦に遊んだときのものだ。

ちょっと長いがご紹介したい。

 

余暫(われたまたま)

松浦の県(あがた)に往きて逍遥し、

聊か(いささか)に

玉島の潭(ふち)に臨みて遊覧せしに、

忽ちに

魚を釣る女子(をとめ)らに値(あ)ひき。

 

花のごとき容(かほ)双(ならび)無く、

光(て)れる儀(すがた)匹(たぐひ)無し。

柳の葉を眉の中に開き、

桃の花を頬の上に発(ひら)く。

 

意気(こころばへ)雲を凌ぎ、

風流(みやび)世に絶(すぐ)れたり。

 

僕(われ)問ひて曰はく

「誰が郷誰が家の児らそ。

若疑(けだし)神仙ならむか」といふ。

 

娘(おとめ)ら皆咲(え)みて

答へて曰わく

「児らは漁夫(あま)の舎(いへ)の児、

草庵の微(いや)しき者(ひと)にして、

郷も無く家も無し。

何そ称(な)を云ふに足らむ。

ただ性(さが)水を便とし、

復(また)、心に山を楽しぶのみなり。

或るは洛浦(らくほ)に臨みて

徒らに玉魚を羨み、

乍(ある)は巫狭に臥して

空しく烟霞(えんか)を望む。

 

今邂逅(たまさか)に

貴客(うまひと)に相遭ひ、

感応に勝(あ)へずして、

輙(すなはち)

欵曲(くわんぎょく)を陳(の)ぶ。

 

而今而(またいまより)後、

豈(あに)偕老にあらざるべけむ」

(※夫婦となって末永くなかよくする)

といふ。

 

下官対(こた)へて曰はく

「唯唯(をを)、敬(つつし)みて

芳命を奉る」といふ。

 

時に日山の西に落ち、

驪馬(りば)去なむとす。

遂に懐抱(かいほう)を述べ、

因りて詠歌を贈りて曰はく…

 

たまさかの出会いに

こころがさざ波を興しながら

以下に歌を詠っている。

 

松浦川川の瀬光り鮎釣ると

 立たせる妹が裳の裾濡れぬ

 

松浦川七瀬の淀はよどむとも

 われはよどまぬ君をし待たむ

 

漢文はまた格調が高くていいなあ。

 

そのほか、枚挙に暇がない。

こんな調子で今三合目

先を急がねば。

 

経営コンサルティングと

会計事務所の融合

 

組織デザイン研究所&

御堂筋税理士法人

 

小笠原でした。


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